女騎士と少年魔導師~憧れの女性(ひと)と旅に出たら~八話 (Pixiv Fanbox)
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「…………はあ」
船が出発すれば敵の襲撃に備えるのみ……狭い室内に備え付けられた丸い窓には、ゆったりとした波と晴れ渡る空の青が無限に続く。
快調そのものの船旅だったが、待ち構える邪騎士グイナトとの戦いを無事に乗りきれるのか、不安は溶けた鉛のようにベッドに横たわるソラフィスの腹部へと重たく伸し掛かった。
板張りの壁には樹精石による錬成を済ませた樹帝の杖が、城で見た古書には戦いの末に力を失ったグイナトを封印するために使われたと書かれていた。
しかし、高名な魔術師七人と数十人で組織された騎士団で生き残ったのは魔術師が一人と騎士が二人と犠牲は多く、自分たちだけでどうにかできるのかと不安はさらに膨れ上がり毛布を被ってしまう。
「入るぞ。どうした、船酔いか?」
三回目のノックと同時にノブが回り、視線を移した先にはニルリアが。
ソラフィスが身を起こす間に揺れをくぐり抜ける忙しない足音はベッドまで続き、微かになびいて縺れる銀色の髪を手櫛で梳りながらこちらを見下ろしていた。
「ニルリアさん…………はい、それもありますけど」
「そういうことなら、いい酔い止めがあるんだけどな」
「ありがとうございます」
とお礼が口をついた瞬間、ニルリアが革鎧を外し着衣をたくし上げ始めた。
水色に潜む滑らかな褐色が少しずつ露となるが、急激な乳房の上り坂を半分ほど進んだ辺りで指先は歩を止めた。
両目は顔を覗かせた桃色の円に向く、しばしの間を挟んで拳が固く握られると裾は一気に肩まで進み、反動で乳房がぷるんぷるんと重量感たっぷりに揺れ弾んだ。
「っふう、ソラフィスも早く脱げよ」
「えっ、でも……」
「あいつは外見張ってるから気付かないって」
ベッドに乗ったニルリアは鼻息も荒く上着、シャツ、ズボン、下着と順番に引き剥がしていく。
一糸纏わぬ姿が窓に映し出され床に落ちた毛布を拾い上げるがそれも奪われた。
「恥ずかしがっても仕方ないだろ……ん、むぅ」
「あ、ああぁ……ニル、リアさんっ」
ぬちゅり、と半勃ちの亀頭が生温かく柔らかな口内に包まれた。
次いで吸い寄せられた右手は汗香と熱を漂わせる乳房へとゆっくりめり込んだ。
明日へと迫る最後の戦いに高まり続けた緊張は、舌が先端と竿の境界線をずりゅっと這いずり回ることでベッドに沈む腕とともに薄れていく。
一方、亀頭上部は唾液塗れの上顎の粘膜に押し付けられ、側面は飴を舐め転がす要領で窄まるすべすべぷにぷにの内頬に練り揉まれて接触の度にぐぐっと竿が立ち上がる。
「……いいぞ、こっちも触れよ」
天井を向いた顎は彼女の声に引き下げられ、視界の中心には膝を半分立てて仰向けに寝転がる自分の股間にお尻を高く突き出して顔を埋めたニルリア……ふくらはぎには南国のたわわな果実を思わせる膨らみが重さに負けて釣鐘状に垂れ下がり、むにゅりと押し付けられていた。
顔が回転を含んだ前後左右を始めれば、熱っぽい唾液が滑りを加速させぬちゅるっ、ぴちゅるっと粘っこい音が弾けて濡れた桃色がカリ首を縛り付けた。
尖った舌先がエラを捲り上げる内に、ソラフィスは身を起こし熱気にたゆたう巨大な乳房目掛けて手を伸ばし、指の甲まで押し沈めた。
「っあ、ん……ふうっ、その気になったか?」
シルクのヴェールじみた水気を帯びた指通りのよい滑らかさ、加えて掌には仄かに痺れを感じるまでの重みが伸し掛かる。
薄い汗ばみを纏う乳房は各々の指が伸びては曲がり、反り返ってを繰り返す中で思いのままに波打ち続け、生クリームを思わせるふわふわの口内と相まって、全身に快感を巡らせた。
「は、はい…………」
「……リュミエールが見ててもか?」
笑みを作る上目遣い、ニルリアと”何か”をしてもリュミエールの機嫌を損ねたりはしないだろう……しかし、嘘に嘘を重ねる罪悪感故か真っすぐ届く赤瞳から顔を逸らした。
「それは、ああああっ!」
「あんまり声出すと聞こえちまうぞ」
二枚の唇が縮こまった環を作り段差にしがみつく、そのままニルリアの顔が持ち上がり先走りと口内に溜まった唾液越しにカリ首を引っ張りエラを捲りそよがせた。
こみ上げる軽い痛みと心地よさが、少しの粘り気を孕む汗雫をつつっとゆっくり伝わせた肉塊を揉み拉げさせ、指の間には丸い盛り上がりが左右合わせて八つ生まれる。
「っ、あ……やった、な…………んぐっ」
指腹が粒立った先端を掠める、ニルリアの頬に浅い皺が刻まれるとむわっと熱気を放つ掌が袋を優しく包み、中の玉を触れるか触れないかのところで緩やかに転がす。
「はあ、ぁ……あ、ああっ、んん」
鼻に抜ける喘ぎが半オクターブ音階を高めたが、リュミエールに聞こえたら……と唇を噛み、足指でシーツを皺くちゃに握り込む。
だが、声は我慢できても根元に始まり鈴口まで長く続く梯子を登るようにスローペースで昇り詰める快感には耐えられず、自発的に両脚に力を入れながら腰を上下させてしまった。
「ん、っ……はあ、挟んでやろうか?」
「……うぅ……こ、このまま口で、お願いしま……ああっ!」
震える唇が吐息混じりに希望を伝えた途端、舌の巻き付きと内頬の窄まりが倍加し鬩ぎ合うぬたつきの間で喉向かって吸い込まれるような動きが生じる。
気持ちよさに顔を顰めると同時に前後のストロークは間隔を一層大きくし、狭隘なぬめりを帯びた唇のリングが竿を三分の二まで飲み込み、泥濘めいた桃色の肉洞窟が蠢きの果てに屹立を舐り揉む。
「わかった、っ……ん、すぐにすっきりさせてやるからな……む、んっ」
返事代わりに桃色の小振りな円を刮げ撫でつつ搾り出した乳頂を摘み捻り上げて、指先を突き刺さんばかりに柔らかくボリューム過剰な二つの膨らみに掌を埋もれさせる。
身を乗り出し、脇腹から乳肉を掬い揉むソラフィス。
一方でニルリアは面輪を緩め鼻翼を呼気に小さく広げながら丸めた舌でカリ裏、裏筋と真っ直ぐに力強い線を引いては広がりも夥しい亀頭の裾野へ締め付けた唇と左右に揺れる頭に任せてぬちゃぬちゃと擦れる内頬により幾重にも快感を交差させる。
「ううっ、口の中に…………っ!」
「んふっ、しょーがねーな……いいぞ、全部飲んでやるよ」
身じろぎの反動で、揺れる首以上に大きく波打つ乳房が埋もれた十指を跳ね飛ばしてはぐにゅりと柔肉の奥へ導き寄せる。
指弄の熱心さに比例してニルリアは吸い付きを強め、じゅるっ、じゅぷっとあからさまな水音がソラフィスを射精の極致へと追い詰める。
「はあっ、あ、ああ……あ、ぁ……ああああああっ!」
リュミエールがいつ来てもおかしくない……しかし下腹部を渦巻く気持ちよさに理性は彼方へ追いやられ、ちくりと疼く刺を感じつつも擽ったく柔揉みされた袋にささやかな白い爆発を錯覚と感じ、やがてそれが背筋を通じて伸びる手足にまで万遍なく広がった。
「ん、んぐっ……すご、いな…………ん、んんっ」
意志とは無関係に前後する腰は後ろに回された両手に捕まり、走る痙攣と脈動もろとも白い迸りは口内へと啜り上げられた。
しばらくは喉を鳴らす音が聞こえたが、脱力感に肘をつくとニルリアは唇端に白糸を伝わせ頬を膨らませたまま身体を起こす。
「う、ぅ……っ、こんなに出しやがって。飲みきれないだろ」
彼女が口を開ければ、舌表のやや色の濃いピンクが隠れるほどに乗った白濁液が。
量が多すぎたのか太く粘っこい滴りをどろりとシーツの上にこぼす様はひどく淫らだったが、遠くに高い魔力を感じソラフィスは慌てて服を着る。
「…………ん、どうした?」
「敵が来ます、行きましょう」
返事を後ろに甲板へ急ぐ、青空の果てには次第に船へ近づく黒雲が……
※※※
「あれ……何?」
「わかりません。ですが、もしかしたら魔物かもしれません」
剣を抜くと同時に上空を漂う黒雲は一気に加速し、船を取り囲む。
その正体は瘴気を広げる翼竜の群れだった、ブーメランに近い形状を持つ茶色の翼で自在に空を飛ぶ魔物の黒く濁った瞳がリュミエールを見下ろし、獲物と認識したか鋸を思わせる歯も剥き出しに短い腕の先に付いたナイフ大の爪を突き出し飛びかかる。
「ちっ、なかなかの出迎えだな」
金属同士がぶつかるような甲高い音、飛び散る火花にも屈さず何度も剣を叩き下ろすがひゅんっと空を切るばかり。
やや遅れたニルリアも戦斧を相手の細い胴体目掛けて振り下ろすが、太く厚い刃先は充満する瘴気を霧散させるのがやっとだった。
二人が応戦する間、ソラフィスは増幅石に魔力を込めて砲撃の発射を繰り返しているのか、両耳には絶えず重く低い破裂音が届けられていた。
「こいつら、強いかも……」
羽ばたきを止めた相手は、一直線にリュミエールの首筋へ向かう。
生臭い息と大きく開かれた長い口、そして赤茶の中に垣間見えた鋸歯……剣を斜めに振り上げ噛みつかんと迫る歯を打ち払うがもう一匹の体当たりを背中に受け、鈍い痛みと船の揺れも相まってその場によろめいてしまう。
「リュミエール、しっかりしろ!」
一度は追い払った翼竜が急降下を助けに錆銀を立てたまま突撃し、さらに三匹四匹と身体を取り囲み逃げ道を封じる。
小さく揺れる尻尾と作り物じみた高低差の激しい絶叫、耳を塞ぎたくなる忌々しい雑音を消し飛ばさんとリュミエールは間合いを詰めた群れの一匹に狙いを定めて右足で踏み込むと、全体重を乗せた縦斬で相手の羽を切り落とした。
両手には痺れも痛みも残らない……当たれば勝てるはずと左足で甲板を叩き蹴り、積み上げられた樽近くで紫緑色の血溜まりで跳ね暴れる翼竜を踏み付けて囲いの切れ目を走り抜ける。
「っ…………これなら!」
目の前には黒混ざりの青と、高さを増した波だけ……前に出た左足を軸に身を翻らせ、リュミエールを追いかけてきた二匹目に紫緑で塗り潰された刃先を突き立てた。
胴体は薄く、刃先は骨も肉も容易にくぐり抜け翼竜の身体は呆気無く貫かれた。
次いで三匹目が奇声を飛ばしつつ宙返りを重ね爪を力任せに振り回すが、斜めの起動は不規則な高速移動に比してひどく単調であり、身体一つ分歩を後ろに戻し、力を入れた右足をバネに魔物が開いた胴体を正面に曝け出したところで真横に鋭く閃を描いた。
翼ごと二つに切り裂かれた相手は、恨みがましく濁った瞳を向けたままどさりと板上に崩れ落ちる。
「あと何匹!?」
「知るか、まだ来るぞ!」
ニルリアの周囲にも、無数の肉片と撒き散らされた血飛沫が。
そして船の真上には新たな翼竜の一団、単発的な攻撃では勝てないと悟ったか黒い塊は動きを乱すことなく真っ直ぐ甲板へと向かっている。
「……僕に任せてください」
小さく呟いたソラフィスは増幅石に両手を添えて詠唱を始めた。
黒が迫るにつれて彼の周囲に淡い光が立ち上り、腕を伝って熱と眩しさが人の頭ほどはあろう透明な石へ集められた。
「来るぞ!」
「間に合って…………」
際限なく背伸びを続ける高い波間を掠めながら前進を続ける魔物の群れ、しかし奴らが船に辿り着くよりも僅かに早く、太い光の束が剣よりも矢よりも早く無数の翼へ一直線に向かい、黒は眩白で掻き消された。
「………………」
空に光を添えるほどの輝きに、リュミエールは閉じた目を背ける。
瞼裏に薄い肌色と太ももを撫でる温かさを感じながら、再び視線を戻すと後に残るは濃い煙のみ。
「……すげーな、全部倒しやがった」
口を開けたままのニルリア、一方ソラフィスは肩を上げて大きく息を吸いながら、右手と左手それぞれを別の増幅石に宛てがい魔力を送り込み始めた。
「まさか、まだ……?」
「はい、一体ですがさっきよりもずっと」
青色の瞳がある一点を見据えた、次の瞬間召喚の紋様が空に描かれ重なる一つ一つの文字が大きな円と化して光の中から巨大な魔物が飛び出した。
深緑色の人の十倍はあろう大きな身体と同色の蝙蝠を思わせる羽、長い首と鰐のような頭には角が生え赤く大きな瞳が三人を見下ろした。
「――――――!!」
地底奥深い洞窟で財宝を守るドラゴンに似た相手は軽く首を上げ僅かに色の薄い下顎を見せると、開かれた口から赤白い炎が。
「避けてっ!」
ソラフィスの小さな身体を素早く抱き寄せ、ニルリア向かって叫ぶ。
右に走り樽の影に滑り込むとブーツの爪先が溶けんばかりの熱が露出した肌を舐め撫でる。
「ソラフィス君、大丈夫!?」
「はい…………あいつの弱点は長い首です、僕が魔法で羽を撃ちますから二人でとどめを」
焦げ臭さの中、ドラゴンは船の上に浮かび天を仰いだまま動きを止めていた。
次の炎が来る前に何とかしなければ……と立ち上がる、ニルリアも同じタイミングで戦斧を構えた。
背中には温かな心地よい風、それが止めば眼前には金色に透ける紋様。
炎を防ぐ防護の魔法と察し、増幅石へと走り出したソラフィスを守るために先んじてドラゴンの懐へ向かう。
しかし足裏の真下へと届く前に、相手の腹部が大きく膨らみ二度目の炎が吐き出された。
「今だっ!!」
紋様が描かれた透明のヴェールが少しずつ溶けながら熱を受け流す、太い腕も足も攻撃に転じている間は開き切っており鮮紅を隔てた先には守りの薄い胴体が。
「うおおおおおおっ!!」
同じく魔法による防御を施されたニルリアが戦斧を比較的柔らかそうない腹目掛けて真横に叩き込み、止まった炎に合わせてリュミエールが斬撃を首へ食い込ませる。
だが鱗と皮膚は鍛えられた鋼さながらに固く、押し付けた刃を力任せに引いても黒雫を滴らせるかすり傷一本が限界だった。
「そんな、剣が……!」
「ちっ、一発じゃだめみたいだな!!」
鱗の薄そうな腹にも傷はなく、幾度と無くぶつけられた斧刃は甲高い音とともに弾き返されていた。
二人して右から左から斬撃を繰り出し、傷を刻み付けるが迫る炎に吹き飛ばされ、マストへの直撃が鎧越しの背中に痛みを走らせる。
「発射します、伏せてください!」
ここで風の刃が二枚の翼に狙いを付け、耳鳴りを覚えるまでに異音を発しつつ増幅石から撃ち出された。
たった一度の瞬きだったが、天高く消えた刃の通り道には深く傷を負った両翼が……ドラゴンの体勢が崩れ、黒い太爪が板を掠める。
「……代わって、私がそっちを!」
痛みが封じる呼吸にむせながら立ち上がったリュミエール、切っ先を寝かせて腹へ突き刺し、手首を回転させて血を噴き出す傷口を抉り続けた。
金属めいた筋肉へ何度も黒に汚れた剣を埋もれさせた。
ニルリアも相手が炎を吐かんと顎を持ち上げた瞬間を狙い、捻った身体で反動を付けて熱され焦げた空気もろとも細い首に重撃をぶつける。
「――――――――!!!」
今までとは異なる苦痛に満ちた奇声、効果を確信し深さを増した傷を刃が全て肉の間に隠れるほどにぐちゃ、ぐちゃと撹拌し、ソラフィスの放った無数の火球も合わせて魔物を絶命へと追いやる。
「とどめだっ!!」
加えて、骨を断つ斧の一撃……滴る生臭さが足元を黒で埋め尽くす頃にはドラゴンは短い腕で腹部を押さえながらよろめき、後ずさり、やがて海へと落ちた。
「やった…………!」
言葉では喜びを表すものの、笑顔さえ作れない。
手下にようやく勝てる程度の腕でグイナトに勝てるのだろうか、人など容易に吹き飛ばすであろう守り手たる雷雨が近づく内に、リュミエールは不安に襲われ汗の滲む掌で柄を強く握り締めた。
※※※
嵐の規模は予想よりも大きく、抜けるまでさらに丸一日かかるとソラフィスから聞かされた。
部屋に戻り外を見れば、ガラスに付着する雨粒越しに灰色の空と荒波が顔を覗かせる。
孤島に辿り着くまでは外に出れないだろう……回数に比例して激しさを増す揺れに身を預けるようにリュミエールは小さなベッドへと倒れ込んだ。
「………………ソラフィス君?」
壁に立てかけた鎧と籠手が崩れ落ちる、直すべきだが戦いの疲れ故か痛みと疲れに満ちた手足はベッドに沈んだまま。
扉がノックされても低まった声で返事するのが精一杯だった。
「失礼します。もし、よかったら……」
部屋へと入ったソラフィスが、心配そうに眉を下げベッド脇に固定された椅子へと座る。
肩に触れる掌から光と眠気を誘う心地よさが送り注がれ傷の痛みを和らげる、そっと目を閉じると身体がふわりと浮かぶ錯覚に包まれた。
「ごめんね、ありがとう」
「気にしないでください、僕にできるのはこのくらいですから」
回復の魔法を唱え終えるとソラフィスが立ち上がる。
動かしても重みも痺れも感じなくなった右手で彼の腕をそっと掴んだ、「もう少しだけそばに居て」と呟きながら。
見上げた向こうには頬に赤を添えた柔らかな微笑み、リュミエールも合わせて小さく笑う。
子守唄さながらの揺れに軽く身じろぎを繰り返しつつも、ソラフィスから漂うニルリアの匂いが目を覚まさせる。
「さっき、ニルリアと何してたの?」
「え、そんな……僕は何も………………ごめんなさい」
言い逃れようと視線を逸らすが、リュミエールがじっと眉間の辺りを見続ければ上着の裾を掴みながら目を閉じて俯く。
腕を掴んだ右手を肘、手首へ滑らせ指と指を絡ませる。
「別に、あの子だったらいいんだけど……やっぱり、あの時も?」
「は、はい…………」
ぎこちなく握られた肉の薄い掌、ナバロゼ城にいたメイドの顔を思い出す。
さらに、お尻の大きな彼女がソラフィスにじろじろ見られていたのをいいことによくちょっかいを出していたという噂が流れていたことも。
「服、脱いで」
自分でも驚くほどに声が冷たく響いた、”怒っているわけじゃない”と顔中に熱を感じながらそっと首を振り白で揃えられた上着とスカートをゆっくりと脱ぎ始めた。
「………………」
小さな丸窓に映るは、掌に余る乳房と薄桃色の乳首、僅かに脂肪の乗るに留まった細い腹部、そして急激に幅広く張り出し、谷間同士むちむちと肉がひしめき合う大きなお尻……肌触りのよい毛布をはだけさせ、ソラフィスに背を向けると、ベッドにむにゅりと沈み楕円状の広がりが強調され視線が膨らみに集まった。
「…………いいよ、いっぱい触って」
リュミエールの言葉を皮切りに、一糸纏わぬソラフィスが右手を胸に、左手をお尻に宛てがいそのまま乳谷に顔を埋めた。
身体中に纏わり付く少女を思わせる細やかな皮膚の心地が、背筋を逸らさせ、唇を噛み締めさせる。
「もう、固くなってる……」
「っあ、ああ……ん、歯、立てないで」
愛撫の前から芯を帯びたささやかな乳頭と、引っ張られて盛り上がった桃色の円周。
そこに訪れた先端を押し潰す舌のざらつきと唾液の生温かいぬめりが、皮膚の奥に淡く痺れを残していく。
乳首をつついて形を歪ませる舌弄の隙間に前歯が桃に染まる皮膜を挟み付ける、痛みの中に疼き混じりの快感が生まれ震える声と身の捩れと化して天井と壁に吸い込まれる。
「ぁあ、あっ、はあああ、ぁ、んんっ!」
左手の中指が火照りと汗でしっとりと潤いを浮かばせた巨尻の谷間を上下になぞり抜けた、歩くとむにゅ、ぎゅっと擦れる過剰に肉の付いた内壁が指戯に応じて形を凹ませる。
乳山はすべすべの頬を包み、突起は被さる二枚の唇に啄まれて啜る音が立つ度にぴくっと肩が竦みむちむちの量感に富んだ太ももに爪を立ててしまう。
「ひうっ、やあ、ああぁ……あ、あああ」
視線を下げれば、両目を閉じて面輪を緩めたソラフィスが頬を軽く窄め、ちゅうちゅうと口に含んだ乳輪と乳首を舌先で転がしていた。
彼を自分だけの物にしたい……愛おしさのままに白い背中と小さな後頭部に片手をそれぞれ回し互いの密着を深めた。
そしてふんわりと空気を含んだ後ろ髪を掻き撫でつつ背中に下腹と掌を落とし、親指と人差し指で先走りの垂れた亀頭をぎゅっと摘み上げた。
「はうぅっ……んんっ、僕も、こっち……」
「うん、あ、ああっ、はあ、ぁん、わかっ……た」
くちゅっ、ちゅっ……ぬちゅ……唾液と汗と先走りが捏ね回され、狭い空間に粘っこい水音が響き渡り、布ずれに吐息と重なって高温多湿で密室を満たす。
その中でソラフィスは、無毛のスリットに指先を這わせ中央に窪みを作る花弁の重なりをゆっくり捲り開いた。
「あ……ふうぅ、ん、あ、ああっ!」
厚めの肉土手を忍び入る指が掠め、そのまま粘膜を刮げ撫でられる。
膣内は触れられていないにもかかわらず糸引き蜜が桃色の路にどっぷりと溢れかえっており、招いた客が曲がっては伸びるを積み重ねるだけでぐじゅりと蕩け崩れた秘肉が締め付けながら形を変え、膣口に泉蜜を湛えさせる。
「はあ、ああふう、っ、ひっ、んん……んうううっ!」
「もう、入りそう…………入れたい…………!」
「だめ……っん、もっと触って、っは、ああぁ」
唇を唾液に照り光らせ、顔を上げたソラフィス。
しばし切なげに目尻を下げていたが、やがて鬩ぎ合うとろみへのくじりを再開させた。
上半身が跳ね暴れるほどの激悦にリュミエールは大きなお尻を熱と湿っぽさに塗れたシーツから持ち上げ、二つの巨山が標高を取り戻し、肉を抱えた掌もより深く沈み込む。
「こっちの穴も……指、だけなら」
身を半転させて両肘両膝でお尻を高く上げる、彼も希望を察したか触れた先から埋もれさせる、頼りないまでに柔らかい曲線の下り坂を撫で上げながら膣口の下端に指を捩じ入れ、尻たぶを割りくつろげ窄まった皺穴をくぐり開いた。
「あああ、ああああああああっ!!」
一方で襞のあわいをぬぢゅりとそよぎ立てられ、他方で放射状の皺を中心から外側向かって掻き撫でる……肛門に触れられるのは、たとえソラフィスでも嫌だったはず。
しかし肉洞へ没入する指先が起伏の浅い襞を擦り撫でることで弓を作る背中がぞわりと震え肌が粟立つ、気持ちいいがどこか後ろめたく、汗の伝う顔を枕に押し付けて表情を隠した。
「すごい、締まる……指が、食べられてるみたい……」
前後の穴で繰り出されるタイミングの異なる抽送、互いの刺激が互いの穴へ収縮を促し、窄まりが広げられれば太ももをねっとりと伝う温蜜の量は増え、段差を作る肉の層を耕されれば直腸に続く縦襞がぐにゅりと蠢き異物を奥へ誘う。
快感を二本の指先から送り込まれる毎に、肌を舐める空気の流れにさえ稲妻めいた悦を見出したリュミエールは歯を食い縛り、内頬を噛み締めながら上下する顎に髪をなびかせた。
「ふああっ、っ……ああん、はあぅっ、あ、あああっ、気持ちいいっ、もっと、ああああっ!」
両手首が半分回転し、指腹が筒状に敷き並べられたぞよめき蟲を掻き回す。
真珠色のとろみを吐き出す起伏に指が引っ掛かると刺激が強まり、体奥で広がる蠢動はむず痒さと置き換わり、桃色に染まり汗塗れの大きなお尻を振りくねらせた。
リュミエールの愉悦を実感したか、ソラフィスはストロークのペースを落とす代わりに距離を伸ばし手付かずの縮こまりに愛液を拭いながら螺旋を描く。
かと思えば急に律動を激化させぐぢゅっ、じゅぷるっと肘にまで薄白い粘液をこぼしながら襞の入り組んだ膣奥を穿ち抜く。
「う、ううっ……あ、ああああ、ひい、っ、んん、ふ、あああううっ!」
緩急に満ちた愛撫は放射状の桃環が食い締める肛門にまで及び、強い刺激に不慣れな腸内粘膜は行き来を重ねる人差し指に撹拌されては追い縋り、膣口と同様ににじゅっ、くちゃっとはしたない水音を立てる。
「はあああっ、ああ、ぅっ! あ、あああん、ひゃああああっ!」
”お尻の穴を触られている”、この実感がリュミエールに憚りのない嬌声を上げさせ、挿入をせがむようにソラフィスの肘に自らの指を絡ませた。
入れられたらもっと気持ちよくなるはず……快楽に浸り続け絶頂が遠くに見え始めた身体が、別の指で露塗れの花弁を割り開かせた。
「い、入れて……ん、ぁあ……お願い」
※※※
「…………は、はい」
待ち望んだ瞬間、二穴から指を引き抜けばもっと太いものをと言いたげに捩れ花の合わさりは中央に垣間見える桃色の空間に粘液を迸らせ、近づけたペニスにじっとりと蒸し暑さを吹きかける。
「ん、あっ……当たってる、大きいのが、は、早く……ぅ」
後ろの穴でないのが残念だったが、挿入の瞬間様々な方向から絡み付きにゅるりと押し返しては吸い導くであろう狭隘な膣穴の感触を思い出し、結び目を作るようにくねるお尻を両手で掴んでリュミエールの腰を引き寄せた。
膣口との軽い接触を経て愛液のぬるまりと肉層の蠢動の気持ちよさが亀頭に軽い痺れを走らせる。
小刻みに腰を動かし桃色の扉にそって楕円になぞらせると濡れ壺の内側に満遍なく敷き詰められた淫ら蟲が目を覚まし、ぐちゅにちゅっと鈴口周囲を飲み込み始めた。
「わかりました、っうう……!」
温めてとろとろに崩れたゼリーを思わせる纏わり付きと、その柔らかさとは対照的な襞の収縮……二つが相まって粘膜越しにどろりと濃厚な心地よさを注ぎ入れ、体内へと巡らせる。
だらしなく開いた口元から発せられた小さな呻き声、鳥肌が立ちそうな濃悦は背中を這い上がり頭の中にまで染み広がり全身をぼんやりと脱力させる。
早くも訪れた射精感にソラフィスは下半身を引き締め、少しずつストロークを加速させ襞の合間をくじり回す。
「あ、あっ……ああ、ん、はあうっ、ふ、ああああぅっ!」
エラを花重なりの入口に捲らせ、反動を付けた後ぐねつく膣奥へ一気に突き上げる。
外気に晒された竿が熱湯さながらの愛液で満たされるに平行して縺れる襞が、ゼリーをこぼれる寸前までたっぷり塗った掌が握るような動きを露わに。
蜜溜まりの没入に従い、最も張り出した亀頭の裾野は膣底近くに潜む狭苦しい肉リングに圧し潰される。
加えてソラフィスがぷにぷにすべすべの巨尻を平らに潰すまで左右に腰をスライドさせながら突き上げを深めれば、襞が亀頭側面にもたれかかりエラの内側に生温かいぬめり肉のゼリーが入り込む。
「っ、ふ……ぅっ、はあ、あぁ…………もっと、奥まで」
「い、いいよ……すご、く……あ、ああんっ、気持ちいいから」
リュミエールの全てが欲しかった。
汗雫をゆっくり伝い落とし、粘っこく指を押し返す桃染まりの雪肌を探り回しては、突き出され肉が引っ張られてもなお掌が全て埋もれる柔らかさを残したお尻を揉みくちゃに。
欲求に流されるまま他の女性と関係を持った自分は、本当にリュミエールにとってふさわしい存在なのか……申し訳無さが、一度は蜜と淫ら蟲で隙間なく埋め尽くされた膣穴への律動を押し留めるが、纏わり付いて渦を描きながら突き潜りを促す肉の洞窟に腰は再び、さらに大きなストロークで動き始めた。
「あっ、ああぁ、ん、はあうっ、ひゃあああん」
船の揺れを感じさせないリュミエールの嬌声、ソラフィスも罪悪感を忘れて”もっと気持ちよくなってほしい”と亀頭を浅く深く交互に襞の巣へくぐらせ、にゅるりと絡み付くとろとろの柔らかな熱塊を掻き混ぜ続けた。
「リュミエールさん、僕……ずっと、リュミエールさんと…………あっ、こうしていたいです……んううっ!」
「わた……しも、はあっ、んんぅ……っ、あああああっ! ソラフィス君と、ああう」
気持ちよさそのものを詰め込んだ蠢きの穴、粘膜を通じて睾丸が回転するような擽ったさ混じりのもどかしさが総身へと広がる。
一回、一回の突き込みは手足の指先まで淡い痺れを広げ、ベッドに乗った自らの重みも少しずつ薄れていく。
後に残るは、一点に集約された快感のみ……前後運動が数を増す毎に、花弁の奥に続く蜜海を湛える起伏は締め付けを明かしつつも奥まで路が開き、さらに狭くごちゃごちゃに襞と粒立ちが集まった部分で亀頭を擦り撫でた。
「っあ、あああ……っ、ん……はあ、っ…………!」
狭隘な作りの筒が内側目掛けての搾り込みでペニスに追い打ちの快感を与える。
リュミエールも気持ちいいのか、皮膚と皮膚が勢い良くぶつかる高い音に合わせて首を上下させ、唇の端からは悦の篭った溜息を漏らす。
「ああっ、はうう……ん、ぅ……こ、この前みたいに……奥まで、んはあっ!」
その吐息も、膣底にたたずむやや固めの丸い行き止まりにペニスを軽くぶつけることで叫びへと変わる。
遠慮がちなノックとは裏腹に巨尻は四方八方に振り乱れてたぷたぷと肉は弾み、背中を広く覆う汗に濡れた金色の髪は毛先が舞い上がり微かに甘酸っぱい香りを狭い室内へ撒き散らしていった。
「あああああっ、あああ、ああっ!! んうう、はあう、はあああっ!」
壁一枚を隔てた隣にはおそらくニルリアが……リュミエールもそれを承知しているはず、にも関わらず彼女の喘ぎは止まず、水飴を指で掻き混ぜるような音も、体重でベッドを軋ませる音も、際限なく大きさを増す。
ソラフィスも後でからかわれても些末に過ぎないと言わんばかりに入口まで戻した亀頭を弾力ある盛り上がりへと叩き付け、触れた部分を凹ませる。
瞬間、反り返る背中とともに襞蚯蚓達が一斉に目を覚まし、ぐじゅる、ぴちゃりと裏の内側、裏筋、鈴口と噛み付き始めた。
歯のない口での咀嚼を彷彿とさせる膣内の収縮。
比例して官能も夥しいか、傷も引っかかりも存在しない足裏が空を切り始める。
さらに床に半分落ちた枕に顔を埋めて端を噛みながら両手も皺だらけのシーツを強く握りと全身で愉悦に耐えているようだった。
「ああ、ぁ……痛く、ないですか? んっはあ…………」
「んっ、だいじょう、ぶ……はあ、っ、んんんぅ、強く、しても……ああぁ!」
お互いの粘膜が愛液のみを挟んで限界まで密着を深めた故その構造までが瞼裏へ鮮明に浮かぶ。
何枚もの真珠色にぬめる薄肉が重層を作り捩れる入口は根元に覆い被さって蜜を塗し、中央は敷き詰められた襞蟲と小さな粒が裏筋を満遍なく舐り上げ、そして奥は狭隘な肉の筒で締め上げつつぷにぷにの最奥が亀頭を凹ませて……と、目まぐるしく変わる膣内の表情が悦を煽り、全身の感覚を受け止める部分が直に揉み擽られる錯覚に襲われた。
「あっう、んんっ、はあ、っ……いっちゃい、そう……そんなに、強くされると、すぐ、あ、はあああっ!」
照り光る尻肌は、オイルを滴るまでたっぷり塗ったように豊満な肉が手の中で滑り回り、掴み損ねた掌が全身をよろめかせ二人の皮膚を一層強くぶつけさせた。
意志とは無関係に子宮口を強く叩く亀頭、リュミエールの体動も激化しぷるんぷるんっとお尻が激しく揺れる。
「ひあ、ああああっ……ソラフィス君、キス……はあ、ああふっ、して……?」
汗蒸気を帯びたむちむちの身体が続く船の揺れに震えながら片肘を支えに背中を持ち上げて振り返る、同時に近づく顔と甘切ない吐息……唾液が塗られた瑞々しい桃色からはむせ返る芳香が。
触れた直後にリュミエールが舌を絡ませ、ソラフィスの背中に手を回す。
蜜蟲を掻き混ぜるストロークはそのままに巨尻へと覆い被されば自然と舌同士の距離も縮まり、ぬちゅっぐちゅっと嵐を掻き消すまでにはっきりと両耳に届けられた。
「はあっ、はあ、ああぁ……僕も、い、いく……っ」
「あっ、は、ああ、あああ!! いい……よ、中に、いっぱい出してっ!」
ぞわっ……ぞわっとリュミエールの火照った肌が小刻みに震え、膣内も内向きに引き絞りを明かす。
襞とペニスは境界線が曖昧になるまでに溶け合う一方でぐちゃ、ぐちゃと抽送に合わせて蠕動を繰り返す。
「っ……ううぅ、ああっ、あ、はああっ!」
滑るお尻に指を突き刺して強く握り揉みながら、襞間に亀頭をくぐらせ不規則に配置された起伏にこびり付く愛液を掻き出していく。
刺激に応じて蠢く膣壁は迫る絶頂にぬじゅぬじゅぐぢゅぐぢゅとぞよめきも著しく、舐め扱かれたペニスは筒内の震えを快感と受け止め、皮膚奥全体に微弱な電流を歩かせた。
”このまま中に”、リュミエールの言葉もあって活発な律動は限りなく加速し、張り出して襞をそよがせるエラは入口から膣底まで隙間なく粘膜を刮げ撫でる。
「っあ、あ、いく、あ、いくっ……あああ、ああああああああんっ!!」
「うううっ……く、うううううっ!」
二人の声が重なり、痙攣する桃色の肉路に白濁が迸った。
背中に回された指は爪を立てて軽い痛みを刻みつけるが、それさえも悦と化し射精の脱力感に促されるままソラフィスはリュミエール向かってよろめき倒れ込む。
「絶対……生きて帰ろうね」
頭上に響く言葉に微睡みに陥りかけたまま小さく頷く、全てを終わらせた後二人で……そう考えながら。
※※※
「…………昨日は随分とお盛んだったようで」
「べ、別にいいじゃない………………」
「はいはい、結構結構」
孤島、そして廃城タムグティエを守る嵐を船が抜けるまで結局一日半かかり、海岸に辿り着いた頃には夜が明けていた。
分厚い雲の切れ目に顔を覗かせる紫に煙る空が獣骨の埋まる砂浜に光を添え、すぐ先に見える鬱蒼と生い茂る黒森に道を照らす。
「あそこに、グイナトが……?」
「はい、森を抜けたすぐ先みたいですが……瘴気のせいでしょうか、先がよく……」
前に出した水晶球には、灰をかぶったような大木の幹と、闇を作る尖った葉の集まりがどこまでも広がり、葉と雲の隙間から僅かに漏れる朝の輝きが散らばる骨に影を与えていた。
松明に火球を近づけ、炎を灯す。
それを受け取ったニルリアが先んじて森の中に足を踏み入れた。
「真っ直ぐ進めば何とかなるだろ、行くぞ!」
リュミエールと二人で赤燈を帯びた銀色を追えば、湿り気を帯びた冷たさに方が軽く竦んだ。
掌よりやや大きい、澄み切った玉に映し出される少し向こうの光景を見ながら道が二手に分かれるとその都度正しい道を人差し指で示す。
「魔物は、いないのかな?」
「今のところ気配は感じませんが……隠しているだけかもしれません。あ…………次は左です」
「なあ、さっきからぐるぐる回ってるような気がすんだけど」
「……すみません、行き止まりが多くて」
一歩進む毎に魔物の気配とは異なる邪悪な風が額を、頬を舐める。
全身の毛穴が全て開くような熱気と冷気が同時に訪れ、歩調の感覚を無意識の内に狭めさせ、暗い土を踏み締める音も数を増す。
加えて全身を取り巻き、炎を揺らめかせる濃密な瘴気に顔も俯き始め杖を持つ掌には汗がじっとりと滲む。
それでも歩が続いたのは、隣で松明を翳すリュミエールのおかげだろう。
戦って、勝たなければもう彼女の傍にいることはできない。
一度は下がりかけた視線も再び上がる。
「少し開けてきたね」
「はい、これで半分くらいでしょうか。島の地図はないのではっきりとしたことは言えませんが」
森を抜けると次に待つのは荒れ果てた上り坂。
天に広がる灰色はいつしか空を全て覆い、風にも伸し掛かるような重みが感じられた。
進む道に三人の姿を隠す樹木は存在せず、こちらからも魔物からも互いの姿は丸見えだろう……左右、そして背後へと顔を向けながら、置かれた砂利を避けつつ歩く。
「…………気をつけてください、何か来ます……」
近くに立つ窓のない高い塔を目印に、水晶球で罠と魔物の姿を探りながら進むが、さらに強まる瘴気が突風を生み邪悪な塊を一点に集めると漆黒の中心に大きな剣と盾を持った錆鉄色の甲冑が二体、顔全体を覆うヘルムのスリットから黄色く光る目をこちらに向けていた。
「ちっ、やっぱり出やがったか!」
ニルリアが戦斧を、リュミエールが剣を抜き刃先をそれぞれ相手へと向けた。
分厚い鉄板で構成された相手の動きは見た目通りに重く、走る二人に数歩遅れて遅れてようやく大剣を突きつける。
「動きは大したことなさそう、でも……!」
しかし念押しでソラフィスは浮かぶ黒雲を頼りに魔力を天に向け、稲妻を相手の頭上へと叩き付けた。
錆は焦げと化し生臭さが遠くに漂う、甲冑二体は剣を籠手から滑り落とし膝をつくが両目の妖しさを漂わせた輝きはそのままに盾を構え、ほぼ同じタイミングで繰り出された斬撃を受け止める。
「多少は打たれ強いみたいだな…………ソラフィス!!」
「はいっ!」
ゆっくりと立ち上がる鎧の腕に狙いを定め、詠唱を経て腕と同じ太さの氷柱を何本も空気中に浮かばせる。
凍えんばかりの冷たさが髪を巻き上げ、上着の裾に寒さを送る……まだ体勢を戻さない相手、氷柱の数が十本を超えた辺りで一斉にそれらを飛ばす。
尾に冬じみた風を漂わせながら加速を付けた刃は、甲冑の隙間と籠手に突き刺さり今度は盾を手の届かない遠くへ吹き飛ばした。
「これで…………はあああああっ!」
突き立てられた剣の切っ先が兜のスリットを捉え、振り下ろされた斧刃が胴を庇う腕もろとも鉄板を真っ二つに。
甲冑はそれぞれ致命傷を受けたか、地面へ倒れ吹く風に砂塵へと姿を変えた。
「グイナトって奴もこのくらいならいいんだけどな」
「……そう、ですね」
しばし歩き続けた先には打ち棄てられた鉄の門扉、人の手を一切感じさせない荒れ放題の庭と澱んだ池、一方で入口へと続く道に並べられた黒い翼と長い角を持つ大きな邪神像だけは顔が映るまでに磨き抜かれていた。
「………………」
一面に棘の生えた蔦が巻き付き、荒廃と堅牢を両立させた城の佇まい……言葉も自然と失われるが、積み上げてきた様々な思いが爪先を底知れぬ暗闇の果てに近づけ、杖の柄を汗で滑らせながら城内への一歩をゆっくりと踏み出した。