放浪の剣士フォーヴァル~魔女の刃と大地の宝珠~エピローグ (Pixiv Fanbox)
Content
旅の準備を終えた二人はジスドールと従者数人に見送られ、太陽も昇りきらぬ内に裏門から城を出た。
薄暗い森を包むは夜の名残を感じさせる冷たい空気……耳を撫で、板金鎧の下に着込んだ鎖帷子の隙間にまで忍び入るそれがこびり付く微睡みを振り払い、歩調も自ずと早まる。
「フォーヴァル様っ、待ってください……」
「ああ、わかってる」
返事と同時に顔を声の先へ、杖を脇に挟んだリリシュが寒そうに手を擦り合わせていた。
革製の手袋を渡すと、強張りかけた頬が持ち上がり笑みが生まれる。
「森を抜けて、山を三つ超えて、船に乗って、ナトダールからさらに南に進めばオルテスです…………長旅になりそうですね」
「嫌か?」
「違います。私だって、多分……同じこと考えてますから」
世界の行く末にさほど興味があるわけではない、富も、栄光も瑣末に過ぎない。
ただ、ヴェンスリードが生きていたなら…………奪われた宝珠を取り戻し、奴を打ち倒せと命じるだろう。
察して余りある無念さを思えば、見て見ぬふりはできなかった。
「…………夜明け、か」
雲の切れ間に見える朝の日差し。
急がねば、と落ち葉を、枯れ木を踏み締めフォーヴァルは遥か彼方に見える山を見上げ、そして歩き出した。