後輩寝取られ四話 (Pixiv Fanbox)
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昼休み、遮る物のない屋上は強い日差しに照らされており地面のコンクリートも座れるかどうかというところまで温められていた。
しかし吹く風が心地よく、日陰になっている入口の扉近くを背にすれば教室よりもずっと涼しかった。
全てが騒がしくなる時間帯だが、人のいないここだけは静まり返っていた。
動いているのは二人と、青空にまばらに散らばる小さな雲だけ、そんな錯覚さえ感じてしまう。
「先輩、これ……」
お昼を持って来ないでほしいと言われたときから何となくこうなることは察していた。
手渡されたのは二段重ねのお弁当箱、中を開くと卵焼きに唐揚げ、ウインナーと定番のおかずが取り揃えられている。
「あ、あの、作ってみました。おいしいと、いいんですけど」
「いや、すごくおいしそう……いただきます」
まずは卵焼きから、砂糖の味が少し強いがだしの風味も利いており、料理に手慣れた人の味だった。
次に胡麻を軽く振り、真ん中に梅干しを置いたご飯を口に運ぶ。
水加減にも気を使っているのか、ちょうどよい硬さだった。
「穂乃香さんって料理うまいんだね、いつも自分で作ってるの?」
「お母さん、仕事してるから……たまに」
「そうだったね、じゃあ弟の面倒も見ないといけないのか」
「たまに、忙しい時は私が保育園から連れて帰ったりします。でもひどいんですよ、私と一緒に帰ってる時だけスーパーとかコンビニに寄ってけって。それであれ買ってこれ買ってって……泣かれるとつい甘くなっちゃいます」
「優しいんだね、まあ、少しくらいならいいんじゃないのかな」
穂乃香の顔が赤らみ、箸を持っていた右手がもつれ始める。
頬を染める紅は目や口近くまで届こうとしていた。
「再来週からテストですよね、先輩はどうですか?」
褒められると嬉しいが気恥ずかしい、左手で顔を扇ぎながら話題を変えた。
「そうだな……毎日やってるし、ある程度は大丈夫だと思うけど」
「……いいなぁ、私数学とか全然だめだから」
風が止むと地面から立ち上る湿気を含んだ熱がむき出しの二の腕と膝近くを嬲る。
魁人も暑がっているようで、一つ外したボタンのところから頻繁に空気を送り込んでいる。
首筋から鎖骨にかけてのいかにも男性的な硬そうな作りについ目が行ってしまう。
「ちゃんと積み重ねたほうがいいよ、受験までそんなに余裕があるわけじゃないから」
「そ、そうですよね…………先輩はどのあたり狙ってるんですか?」
魁人が頭がいいというのは、よく勉強を教えてもらっているので知っていた。
しかし、どのくらいの成績なのか、どこを第一志望にしているのか、そういえば聞いたことはなかった。
「指定校推薦取ろうかなって思ってるんだ、まだはっきりと決めたわけじゃないけど……マスコミ関係の仕事ができたらなって、それでぴったりの学部があるみたいだから」
「…………」
箸を止めて聞き入っていた。
先を見据えている魁人を尊敬する反面、自分とは違うんだなとコンプレックスに近いものも感じてしまう。
せめてもう少しだけ勉強しよう、と決意を新たにする。
穂乃香が屋上に向かったと彼女のクラスの女子から聞いた、おそらく二人きりになりたかったのだろう。
どっちから誘ったか知らないが何かあっては困る、と勢い良く扉を開けた。
勢い余って日陰から足を踏み出すと上から照りつける熱と下から立ち込める熱が身体を包み込み、不快感を急上昇させた。
「直久君……」
「ここにいるって聞いたからさ。あっもしかして……お弁当、作ったの?」
「うん、たまには作ってみようかなって」
「すごいうまそうだな……うそうそ、食べたりしないって」
手を伸ばそうとすると弁当箱が遠ざかる、伸ばした右手を戻したところで、地面にお尻をつけてその外側に脚をくっつけて座っている穂乃香の隣に行き、腰をずらしてさらに距離を詰めた。
魁人が口を開くが、言いかけたところでその口が閉じる。
ここで追い出したら器の小さい男だと彼女に思われる、ためらった理由はこのあたりだろうか。
「どうしたの?」
「いや、穂乃香ちゃんにどうしても会いたくなったから……今日も練習、明日も練習……なかなか話す時間も取れなくて……あ、俺のことはお構いなく。そうそう、この前のバスケ部の特集見たよ、できればもうちょっと俺を写してほしかったかな」
「ごめんね、他にも書かないといけないニュースがあって」
何も言えない魁人を尻目に、リンスの香りに鼻をくすぐらせながらさりげなく肩辺りに触れようとする。
しかし、穂乃香は魁人の隣まで逃げていく。
瞬きをしながら魁人に肩を寄せる穂乃香。
以前なら触らせてくれたはず、魁人の物になってしまったことを思い知らされ、表面上は笑いかけながらも爪が食い込むほどに拳を握ってしまう。
「何だ、二人ともすっかり恋人同士になっちゃって」
わかっているならさっさと席を外せ、と言いたげに魁人が直久に目を向ける。
そらした視線の行先はたっぷりと丸みを帯びた穂乃香の乳房だった。
僅かな身じろぎであっても上下左右へのオーバーリアクションを忘れない……二の腕に押さえつけられながらも身体の動きに引っ張られて持ち上がり、落ちる瞬間にぷるりと弾む様子に自然と股間も熱くなる。
「……いやあ、嬉しいよ。穂乃香ちゃんっていう大事な友達がこうやって幸せそうにしてるんだから」
心にもない薄っぺらい発言、口にすることで内心の苛立ちが大きく膨らんだ。
本当ならそこにいるのは自分のはず、ポケットに忍ばせた煙草の箱を握りながら魁人を睨みつける。
三日前に青村から頼んでいた物が届いた、これでようやくすべての準備が整った、あとは一秒でも早く実行するだけ……自然と唇の端が持ち上がってしまう。
「………………」
「直久君、ありがとう」
何も知らない穂乃香の心からの笑顔、魁人も表情を解す。
罪悪感など微塵も感じなかった。
「俺はこれで、いちゃいちゃされるのは趣味じゃないんで」
確か、魁人のクラスは六時間目が体育のはず、チャンスはその時しかないだろう。
去り際に、姿勢を変えることで乱れたスカートから伸びる、やや太めの白脚のラインを舐め見る。
少し開いた太ももと布地の隙間が作り出す暗闇を眺めながら立ち上がり、その場を後にした。
「先輩っ、こっちははどうですか?」
「いいね、こっちもすごくおいしい」
扉をくぐっても親密な会話が背中越しに聞こえる、不愉快なことこの上なく、足取りも自然と乱暴になっていった。
だが、それも今日まで……穂乃香の雪白の豊かな裸体を頭に浮かべつつ、以前から暖め続けてきた彼女を犯す段取りをおさらいする。
「……せいぜい今のうちに楽しんどけよ」
放課後、帰り支度を終えて穂乃香が部室に向かおうとすると、魁人からメールが届く。
見ると生活指導に呼び出されたから今日の部活は中止にする、と書かれていた。
「どうしたのかな、先輩……」
そういう事なら仕方が無いと昇降口に向かう。
静まり返った夕方の昇降口に慣れていたので、人の騒がしさに少し戸惑ってしまう。
「穂乃香ちゃん、今日は部活じゃないの?」
「先輩、用があるみたいで中止だって」
早く帰ってテスト勉強でも……と下駄箱から靴を取り出そうとしたところで後ろにいる直久に気がつく。
「俺も休みだからさ、たまには一緒に帰ろうか?」
「いいよ、直久君ってお家どのあたりなの?」
「商店街の近くかな……だから、穂乃香ちゃんと途中まで同じ方向だよ」
太陽の位置は高いが、真昼に比べるとだいぶ涼しい。
スカートを翻させる風に、裾近くに手を置きながら直久の半歩後ろを歩く
「そろそろテストだよね。俺、結構やばいかも、そっちは?」
「平均くらいは大丈夫だと思うけど」
「赤点とか取ったらあいつに滅茶苦茶怒られるだろうな、ベンチにも入れないだろうし……いいよな、穂乃香ちゃんは。
あの人に教えてもらえばいいんだから」
あいつというのは、バスケ部の顧問の先生のことだろう。
前に何かネタがないか顔を出しに行った時、勉強はちゃんとやってるのか、と言われた覚えがある。
「先輩だって、自分の勉強があるからそんなに甘えられないよ。自分でやらないと」
「そうなんだけどさ、多分三日前くらいまで部活続くんだよな」
彼女が魁人と付き合い始めてからも何度か話す機会があった。
二人の会話を聞いている限り、自分とのほうが話は弾んでいるし、穂乃香の表情も心なしか楽しそうだ。
もっとも、スキンシップは取らせてくれなくなり、踏み込んだ話題は避けられてしまう。
今も、偶然を装って隣に立とうとすると。
警戒しているのか、無意識の内に魁人と自分を序列付けているのか、はっきりとはしないが気分のいいものではない。
「それだけ一生懸命練習してるんだったら、次の大会はいいところまで行くんじゃない?」
「勝ち残るのも大事だけど、それより早く試合に出たいな。ベンチには入れると思うけど……もし俺が活躍したらさ、特集組んでよ、次期エースってことで」
「うーん、先輩に話してみてから……かな」
「くれぐれもお願いしておくよ、俺も穂乃香ちゃんみたいな可愛い女の子にもてたいからさ」
「……っ、もう、何言ってるの……」
赤信号の前で立ち止まる。
目の前を走り抜ける自動車、砂埃が目に入ったような気がして瞬きを繰り返す。
目をこすっている間に、穂乃香はやや低い位置にある信号機の押しボタンに少し前屈みになって手を伸ばそうとしていた。
「………………」
スカートが持ち上がった瞬間。
風が吹いてプリーツが折り曲がり太ももがより露になる。
裏腿はまるでマシュマロのように真っ白だが、内側に進むにつれて目を凝らすことでうっすらと青く血管が透けているのがわかった。
皮膚は薄そうだが、肉づきは充実している。
見ているとさらにスカートが重力に逆らい、傘を思わせる開きを見せるが、下着が見えるか見えないかのところで穂乃香がスカートを押さえてしまった。
落胆するが、両目には確かに太股の付け根からの急激な盛り上がり、小さな下着には収まりきらないであろう、湿り気を帯びた指触りのよさそうな巨尻のなだらかな下輪郭が焼き付いていた。
身体が熱くなるのを感じる、口の中に溜まるばかりの生唾を飲み込みながら、幅広く両脚にのしかかる仄白い弧をもう一度思い出す。
スカートの中では足を上げてから地面を踏み込む反動で、豊満な尻肉が大きく上下に揺れ弾み、太ももとの間に深く線を刻むのだろう。
そして、左右への動きがコットン生地を中心に集め、内壁へと食い込ませ生尻を露にしていく……もしかしたら、直久が見ていないところでスカートの上から食い込みを直しているのかもしれない。
「…………」
「どうしたの?」
「いや、別に…………そうだ、ちょっと前に買ったCDなんだけど……」
急に視線を逸らした直久が唐突に話題を変える。
彼の真意もわからないまま横顔を見上げた。
ふっと制汗剤の匂いが鼻をくすぐった。
それに混じって届く汗臭さ……魁人にはない、体育会系特有の匂いだった。
「…………知ってる、あ、でもインディーズの頃の曲はまだ聞いてないかな」
今度は自分がぼんやりとしてしまう、直久に何か指摘される前に顔を正面に戻し、すれ違う人や見慣れた街並みを遠くから眺める。
「さすが、情報が早いね。確かメジャーデビューして初めてのアルバムだったかな……いい曲揃ってたよ、良かったらまた今度貸してあげるけど」
「ごめんね、いつもいつも、私お小遣い少ないから」
魁人とはこういう話もできないので、ついつい盛り上がってしまう。
恋人以外の男子と楽しそうに話すのはどうなんだろうという気持ちもあるが、やましい気持ちがあるわけではないのだから、と自分に言い聞かせる。
「あの人に買ってもらえばいいんじゃない?」
「……やっぱり、欲しいものは自分で買わないと」
「そういうもんかな、まああの人ケチ……じゃなかった、経済観念しっかりしてそうだしね」
ただ、時折直久が魁人に突っかかるような言葉を口にするのが気になっていた。
自分にしてくれるのと同じように魁人とも仲良くしてほしかった。
彼の目が妙にぎらついているのは強い日差しのせいなのだろうか、だが、魁人の話になるといつもこんな目をしているような覚えがあった。
「基本的に割り勘だから、やっぱりそうなのかな……」
割り勘という言葉を口にした途端、直久が顔を覗きこんできた。
近づいてくる整った目鼻立ちに思わず一方後ろに下がってしまった。
「俺ならバイトしてでも全部奢りにするけどな……穂乃香ちゃんと付き合えるんだったらそのくらいはしないと」
「……? 私なんかのどこがいいの? 直久君だったらもっと可愛い女の子と一緒になれると思うけど」
「ま、好みは人それぞれだからね」
急に暑くなってきた、ハンカチで汗ばみ始めた額と頬を拭う。
事あるごとに褒めてくるのは悪い気分ではないのだが、やはり恥ずかしさのほうが前に来る。
魁人がお世辞めいた言葉を並べ立てないタイプなので、彼の言葉は余計に身体の奥底まで染み渡り、心深くまで入り込もうとしていた。
「こっち涼しいよ、日陰だから」
「あ、ありがとう……」
ハンカチをポケットにしまおうとしたところで、直久に右手を引っ張られる。
熱が少し引いたので顔を上げると生い茂る緑葉が太陽光線と二人の間を隔てている。
彼の気遣いに感謝しながらも、触れたままの手が熱源となり肌を火照らせる。
絡みあい、もつれそうな指を一本ずつ解き、手をスカートの上に置いた。
その指からは緊張はいつまでも抜けないままだった。
自分でもわかっていた、いくら仲良くなっても正攻法では彼女を自分の物にはできないということを。
鞄の中に青村から譲り受けた睡眠薬と媚薬を忍ばせている。
あとはこれを使うところまで持ち込めばいい。
だが、自分の家に連れ込もうにも母親がいるため、万が一ということも考えられる。
そうすると穂乃香の家しかないのだが……露骨な言葉で警戒されても困ると、開きかけた口を慌ててつぐむ。
「用ってなんなんだろうね?」
「……先生に呼び出されたってメールには書いてあったけど……」
魁人を嵌めたのは穂乃香を一人にするためでもあるが、後々やりやすくするための策でもあった。
他にもまだ穂乃香を落とすためのアイデアはある。
あとは、いかにして最初の一歩を踏み出すかだった。
街路樹が途切れると日陰も途切れた。
肌を炙る日光が内に秘めた衝動をさらに加速させる。
先ほど触れた柔らかい手のひらが手の中に甦った。
「もしかして、心配?」
「ちょっと……先生に呼ばれるなんてあんまりないよね」
穂乃香の表情が曇る、直久が注目してしまうのはやはり大きくて柔らかそうな乳房だった。
魁人に触られる前に荒々しく揉みくちゃにしてやり、ペニスをとろけんばかりの肉弾に挟み込み、征服の証として白濁液をぶちまけてやりたかった……テントを張ろうとしたペニスの位置をずらし勃起を悟られないように少し背を屈めた。
「あ、あのさ……二人はどの辺まで行ったの?」
「どの辺? それってどういう意味?」
「いや、手つないだりとか、キスしたりとか……今後のために、どのくらい時間がかかったのか教えてよ」
「やだっ……! そんなの言えるわけないじゃない」
高ぶる獣欲を押さえ込むために、あえて軽口を叩く。
しかし、さすがの穂乃香もむっとしたようで下がり気味の目尻が僅かに上を向いていた。
アスファルトを叩く足音も勢いを増している。
「そうだよね、ごめんごめん。でもさ……そろそろ一ヶ月でしょ? キスくらいはしたんじゃない」
「………………友達にだって、教えてないんだから」
歩幅を大きくした穂乃香の後ろ姿を追う、今前に回り込めば乳房が重たげな振り子のように弾んでいるところが見えるのだろう。
「そうか、そういうことならますます教えてほしいな。俺も穂乃香ちゃんの初めての男になりたいな」
「で、でも……初めてって…………」
「……教えないと、家までついてくよ…………なんてね、冗談だよ」
あくまで冗談めかして、最後に一言付け加えながら向こうを安心させる。
表情から険が抜けると安堵の息をついた。
歩調も戻し、もう一度隣に立って、恥じらいを貼り付けた横顔を見下ろす。
郵便局が見えてきた、次の信号でお別れだが……確実に穂乃香の家まで行ける口実を閃いた。
出そうになった言葉を飲み込んで、細心の注意を払いつつ話題を切り替えるタイミングを待った。
「数学の宿題、明日までだっけ」
「え、何で……そっか、先生同じだもんね」
「俺全然やってないから、写させてくれない?」
穂乃香がこっちを向いた、残り香のように頬に残る恥じらいは戸惑いに上書きされようとしている。
「私も途中までしかやってないよ?」
「残りは自分でやるからさ……」
「わかった、いいよ。でもノート家に置いたままだから」
今ここでノートを渡されてコンビニでコピーしてきてと言われる可能性もあったが、ひとまず第一関門を突破した。
まあ、何を言われようと家まで乗り込むつもりだったが。
「……家まで行っていいかな? 誰かいると迷惑になるかもしれないけど」
「今日はみんな夜まで帰ってこないから平気。それに、写すだけなら十分くらいで終わるでしょ?」
第二関門も突破した、これで行為に及んでいる間、万に一つも見つかることはなくなった。
「それもそうだね、じゃあ穂乃香ちゃんの家まで案内よろしく」
穂乃香の部屋に入ると、ほんのりと甘い香りがした。
ベッドに学習机、テーブルにパソコン、クローゼットとシンプルなデザインの部屋は、カラーボックスにはぬいぐるみや小物などが飾られており、いかにも女の子らしく細かいところまで整理整頓がなされていた。
「綺麗にしてるんだね」
「う、うん……あんまりじろじろ見ないで」
クローゼットを注視していると穂乃香にたしなめられた。
あの中にパンツやブラが入っているのだろうと思うとさりげなく彼女を部屋から出て行かせて、その間に家探ししたい衝動に駆られる。
しかし、張り詰めた股間のテントが本来の目的を思い出させてくれた。
鞄を開けて睡眠薬と媚薬をいつでも取り出せる場所に寄せておく。
「俺さ……女の子の部屋入ったの初めてだから、ごめん」
息を大きく吸って、部屋に染み込んだ穂乃香の匂いで肺を満たしながら空白の多いノートを開く。
隣にある、丁寧な字で式が書かれた彼女のそれとはあまりに対照的だった。
「…………」
「………………」
直久が自分の部屋にいる。
単に宿題を写すだけなのだが、部屋に異性を招いたのはこれが初めてということもあり背筋が妙に突っ張ってしまう。
ノートを交互に見る直久の頭頂部を眺めているだけで、否応なく狭い部屋の中に二人きりということを意識させられてしまい、気まずさのあまり舌も唇も引きつり、言葉を発することができなかった。
「本当に助かるよ、ありがとう」
「……ううん、このくらいのことだったら」
直久が先に切り出してくれて助かった。
とはいえ、会話を続けて邪魔をしてはいけないと次の言葉をあえて封じ込める。
時計の針が動く音と、シャープペンシルが動く音……部屋を満たす音が一つ減った。
「何か飲む?」
「いいの? ごめんね」
「私も喉乾いちゃったから、アイスコーヒーでいい?」
「お願い、ミルク無しで。ガムシロあったら二つもらってもいいかな?」
リクエストを聞きながら部屋のドアを閉める。
吐いた息の深さがのしかかっていた緊張の程度を教えてくれた。
※※※
「お待たせ」
トレーに乗せたアイスコーヒーを直久の前に置く、もう一つは自分の目の前に。
ミルクを入れると黒と白が渦を描きながら混じり合い新たな色を作り出す。
「ありがとう」
「どの辺まで終わった?」
「もうちょっとかな……五分くらいで終わると思うよ」
再び部屋を沈黙が包み込む。
「そうだ、玄関の鍵って閉めた?」
「……どうしたの、急に」
「いや、気のせいかもしれないけど……俺が後から入って、そのままドア閉めただけで鍵開けっぱなしのような気がして」
「大丈夫だと思うけど、一応見てくるね」
穂乃香が再び部屋を出る、あまり時間はないだろう。
すぐに取り出せる位置に出しておいた媚薬と睡眠薬を穂乃香のコップに入れる。
粉薬なのでストローで何度か混ぜてしまえばすぐに溶けて見えなくなってしまう。
手を戻したところで足音がだんだんと大きくなり、直後にドアノブをひねる音がした。
「ちゃんと閉まってたよ」
「俺の思い違いだった、ごめん」
白いストローが茶色に染まる、コップに氷がぶつかり、乾いた甲高い音を響かせる。
彼女がアイスコーヒーを飲んだことを確信した……射精間近を思わせる興奮が全身を舐め回す。
「………………」
青村が言うには、飲んでから十分くらいすると効果が出るらしい。
比較的すぐ効くようだが、強い刺激を与えると目が覚めてしまうから気をつけろとも警告された。
わざとシャープペンシルを動かすペースをゆっくりにしながら様子を窺う。
五分ほどして、首が前後に揺れ始めた、さらに待つとテーブルの上に突っ伏して動かなくなった。
「…………」
「……穂乃香ちゃん?」
肩を揺さぶる、深く寝入っているようで規則正しい吐息の音が聞こえた。
「よし……大丈夫だな」
うなじあたりから香り立つ汗に混じった香水とリンスの匂いを楽しみながら彼女の身体を抱きかかえてベッドに寝かせる。
華奢な腰にむっちりと柔らかく骨を感じさせない太もも……触れているだけで精液が噴き上がりそうだった。
用意しておいたロープでベッドに彼女の身体をくくり付ける。
両手両足を伸ばしたまま大の字になった穂乃香、障壁となるものは何もない……震える手をブラウス越しに形を浮かばせる大きな胸を手のひらで包み込む。
「…………!」
手に余る肉弾は最初こそ半球形を保っていたが、直久の指に力がこもるうちに乳房は形をひしゃげさせ、指を飲み込む。
さほど力を入れて揉み潰しているわけではないのだが、軽く置いただけの指はどこまでも柔乳の中に沈み、指の隙間から肉がはみ出てしまう。
ブラウスとブラを隔ててこれなら……期待は天井知らずで高まり続ける。
「すげ……ケツより柔らかいんだな」
ボタンを一番上から一つずつ、毟るように外す。
白の先に潜む白、しかしその色合いは全く違う、汗でわずかに湿った乳肌は、熱に浮かされて薄く桃色をにじませていた。
ブラは水色の、レースの施されたカップの大きいもので、乳房の殆どを覆い隠しており、色気に乏しいデザインだった。
もっとも、押し込められることで作られた深い胸の谷間が淫猥な光景を作り出している。
「…………」
机に置いてあった鋏を左右のカップを繋ぐ部分に入れる。
拘束が外れ、布の内側で張り詰めていた山の傾斜がなだらかなものへと変わる。
裾野の広さに反して、先端は木の実を感じさせる小ささだった、色も薄桃色と清楚そのもので、乳暈も五百円玉程度と小ぶりだった。
「んうっ……な、何……? ええっ! な、直久君……やだ、あっ!!」
生乳に手を伸ばそうとする、だが、眼鏡越しの大きな目はいつの間にか見開かれていて、蠢く指先を見た途端その瞳が恐怖に彩られ、涙のヴェールを身に纏う。
困惑に染まる目尻から涙が一滴、泡立てたメレンゲのようにふんわりとどこか頼りない柔らかさを持ちながらも、指先をみしりと圧迫する充実した重さを両立させた極上の膨らみに申し訳なさなどすぐに消し飛んでしまう。
「やめて、どうしてこんな……! ああっ」
「そうはいかないな、こんなでかいおっぱいぶら下げて。今までどんな気持ちで見てきたと思ってんの?」
円を描くように豊かな膨らみを探り回す、裾野から頂点まで指先を登らせ、そしてまた下らせる……生まれて初めて触れた胸の触り心地に夢中になり、直久が口の端から涎を垂らすまで締まりのない笑みを浮かべる一方で、穂乃香は不快感からか目をつむりながら肩をしゃくらせ、涙をこぼすばかりだった。
自分が置かれている状況をまだ受け止めきれずにいた穂乃香だった。
急に眠くなったかと思えば、両手両足を縛られて身体をベッドに固定され、覆いかぶさった直久が胸をはだけさせ、乳房をまさぐっている。
上げさせられた手を戻そうとしても、食い込んだロープが苦痛をもたらすだけだった。
そしてこの痛みが穂乃香を現実に引き戻す。
「あっ、ううっ……痛い、や、ぁ……直久君、お願い」
手首足首の窮屈さに比べると、乳房を触る手は驚くほど優しい。
だが、胸と顔を交互に見つめる彼の目は油を刷いたようにぎらついており、心に植え付けられた恐怖が膨らんでしまう。
「いいだろ? どうせあいつにも散々やらせてるんだ。俺にも分けてくれよ」
ブラウスのボタンが全て外され、頂点に桃色を置いた山脈と胴体に乗っかった下乳から鳩尾付近への急激な落ち込み、若干肉のついた腹部の中心にある小さな臍まで、全てを直久の眼前に晒されてしまう。
羞恥が肌の奥をめまぐるしく駆け巡った。
隠そうにも手は動かない、肌にこびり付く視線、歩く指先がもたらすむず痒さ……不快感から顔を背け、唇を噛み締める。
「むちむちだな……歩くときもデカ乳たぷんたぷんさせて、触らせてもくれないのに誘いやがって……」
歯をむき出しにして笑う彼は獣にしか見えなかった。
睨みつけても意に介する様子はない、ただ欲望を満たすためだけに鎖骨から続く傾斜の低い曲線に手のひらを滑らせ、頂点にある突起を起点として外向きに円周を大きくする。
話で聞いただけでオナニーの経験など一度もなかったため、実り豊かな大きな乳房からは信じられないほどに性感帯は未成熟で、丹念な指使いであっても気持ち悪さしか感じない。
「はあうっ……! そ、そんなぁ……私、そんなつもりじゃ、直久君、だめ、んんぅ」
それでも、触られ続けることで乳暈に、乳肌に汗が浮かび、差し込む日差しに粘っこく照り光ろうとしていた。
指の動きも合わせて激しさを増す。
表面を掻き撫でるだけだったそれは、指腹で肉を弾ませながら柔らかく形を変える球体の奥へと入り込もうとしてくる。
「んっ、や、っ……ふ、うっ…………くっ!」
「痛っ……キスくらいいいだろ、減るもんじゃないんだ」
完全に不意打ちだった、胸に気を取られていると直久の顔が近づいてきた。
避ける間もなく唇に熱くぬめりのある何かを感じた。
上唇を啄もうとする彼の唇に反射的に噛み付いていた。
痛みに口を離す、どうやら血は出ていないようだった。
温かいグミと錯覚しそうな、かすかに甘酸っぱい唇の余韻を口の中で楽しみながらこちらを睨みつける穂乃香を見下ろす。
彼女の目に溜まった涙が下瞼から頬にかけていくつも濡れ筋を作っていた。
「ひどいよ、初めて、だったのに……っ」
涙ながらの言葉も、直久の嗜虐欲をそそらせるだけだった。
一度顔を遠ざけてから、乳房へと指を這わせ、円運動を再開させる。
熱で解れてこなれてきた胸は表面に汗の玉を浮かばせ、指を粘っこく押し返す。
ローションじみたそれが擦れ合う互いの皮膚の潤滑油となり、巨乳に埋もれた両手の指の動きをより荒々しくさせた。
「はあ、うっ、だめ、や、だぁ……直久君、ああぁ」
「それはよかった、あんな奴に穂乃香ちゃんの唇なんてもったいないからな……」
「い、やあっ……こんな、こんな人だったなんて、最低……っ!」
握り拳を作り右手を上げる、そして勢いよく丸みのある頬めがけて振り下ろすが寸前で止めて、涙と汗に濡れた頬を撫でながら耳裏と額に貼り付いた髪を整える。
そのまま人差し指と中指に首筋を歩かせ、身じろぎに波打つ双山へと戻らせた。
「ひっ!」
「……知ってる? グーで殴るとなかなか傷が治らないんだって。あいつの前に痣作ったまま出れる? それに、素直になったほうがいいと思うけど……このままで親や弟には会いたくないでしょ?」
この程度の脅しで屈するはずもなく、声こそ出さないもののロープを千切らんばかりに必死にもがいていた。
しかし、手を首から上に置くたびに殴られると勘違いしたのだろうか、次第に動きが鈍くなる。
「本当にすごいな、ちょっと触っただけでぷるんぷるん揺れる」
「ああぁっ、直久君、お願い、あああん……」
指をいっぱいに広げても、小さな身体に取ってつけたような巨大な肉弾を手のひらで完全に包むことはできなかった。
下り坂半ばから肌に引っ掛けた指を戻し、肉の海を泳がせる。
上気しそうな湿り気を着込んだきめの細かい肌が指に吸い付く、さらに熱を持ち汗ばんだことで穂乃香の巨乳は纏わり付くような柔らかさを表層に滲ませようとしていた。
存分に揉み絞り、どこまでも続く新雪を思わせる粘り気に富んだ白い膨らみを指紋まみれにし、支配の痕跡のその場に残してやりたかった。
しかし後々のことを考え、押し沈めた指を一定の間隔で動かし、手に余る膨らみを揉みほぐすにとどめた。
その甲斐あってか、両手のひらの中心にわずかだが芯を感じることができた。
汗でルビーピンクに潤み光り、しこりを持つそれをそっと摘み上げる。
ぬるりとした桃色の尖りを捕まえようと力を入れると、喘ぎを押し殺す穂乃香の腰が右に動き、背中が反り返った。
「ちょっと硬くなってきてるな」
「ふあっ、や、っ……離して、ああう」
先端から広がる電流が抵抗を削ぐ、指の動きは穏やかなものだったが、半球を保っていた乳房が円錐へと形状を変えようとするうちに、痺れが強さを増した。
だが、それ以上に気持ち悪かった……蛞蝓や蝸牛が這うように進む直久の指が。
これが魁人だったら、恥ずかしいかもしれないが受け入れていただろう。
直久と目が合う、歪みを全面に出した笑顔は人のそれとは思えなかった。
「やだぁ……やだぁ……先輩、助けて……ぇ」
「……あいつが来るわけないだろ」
穂乃香が並べた拒絶の言葉を蹴散らしながら、直久は胸を揉み続ける。
下から持ち上げた胸を手の中で弾ませ、親指は小さな突端を柔肉の内側に押し込む。
遠慮のない手に思考は揺さぶられ続け、嫌悪と困惑、羞恥だけが膨らみ続ける、さながら空気を入れた風船だった。
「あ、あっ、はあ、ぁ、あふ、う……っ」
吐息が絡みあう密室の中に、にちゅり、くちゅり……と粘着質な音が加えられる。
肌と肌の間を満たす汗がかき混ぜられる音だった。
摩擦が弱まることで直久の広がった手指が乳房を押しつぶし、指の隙間が作る肉の盛り上がりを大きくしていく。
「こっちは……お、ちょっと湿ってる」
「ひあぅっ、だ、だめ」
唐突にスカートをまくられ、下着の奥に潜む割れ扉を右手の指でなぞられる。
下腹部に染み渡る疼痛に、太ももに力を入れて身体を上に逃がそうとした。
しかし、体温で生温かくなったシーツが擦れる音が立つだけで、縛られた身体は動いてくれなかった。
「こいつは汗じゃない、な……嫌がってる割には感じてたんだ」
熱源と化した陰部を隠す最後の一枚に指がかかる、同時に左手はせわしなく、だがどこか遠慮のある手つきで乳首を摘み引っ張っていた。
なまじ苦痛を感じない分だけ、触れられ、暴かれる恥ずかしさばかりが心の中に募り続ける。
指は下着を縦筋に巻き込み、脆さすら感じさせる柔肉の上で往復を繰り返す。
神経の集まったその部分がダイレクトに刺激されることで、汗まみれの乳房を揉み立てられた時よりも大きく粘り気のある音が跳ねる。
上下運動が増えるごとに、にちゃにちゃと音に深みが増し、開いた肉扉が内側の湿り切った世界へと指を引きこもうとしていた。
「はあ、ぁ、離し、てっ! こんなの、ひどすぎるよぉ」
「みんな夜まで帰ってこないんでしょ? だったら、楽しんだほうが得だと思うけど」
あくまで嫌がり続ける穂乃香に、頭の中で魁人がちらつく。
あの男とならどんな稚拙な愛撫でも気持ちよくなるのだろう……嫉妬に駆られ、ブラとお揃いの水色の下着を一気にずり下ろす。
引っ掛けた指に手触りの良さを感じつつ、肉づきのいい白い太ももから視線を上へやった。
人形めいた白い肌と、ささやかな黒い茂みのコントラスト、奥に隠れた口を割り開くと、ぴったりと閉じて捩れ合った赤桃色の粘膜が目を射抜いた。
ペニスを受け入れられるとは思えないほどの小さなたたずまい、両手の親指で膣口を割り広げるとくちゅりと音が響き、半乾きの接着剤でくっついたような折り重なった肉が剥がれる。
まだ濡れてはいないようだが、潤いをうっすらと浮かばせており、触れた指が蛍光灯の光に反射し、きらめきを直久の目にちらつかせる。
「ああっ……は、うっ、あああっ」
穂乃香の脚に緊張が走る、内股になろうとする太ももを押さえつけながら顔を近づけ、綻ぼうとしているスリットに指を置いた。
とろりとした水気を含んだ薄肉を撫でれば脚の筋肉が硬くなる、絵筆が紙に色を与えるような穏やかでさりげない指の動き……それが功を奏したか、穂乃香は頭を振り続けているものの、口をだらしなく開き表情を崩し始める。
妖しさを孕んだ喘ぎは蒸し暑さの中に溶け込もうとしていた。
「早速濡れ始めたな、穂乃香ちゃん……気持ちよさそうな顔してる」
人差し指を目の前に突き付ける。
親指を擦り合わせることで先端が浴びた蜜が何本も糸を引いた。
あどけない顔が怒りに染まり、普段はやや垂れ気味の目尻も吊り上がる。
しかし、指を第一関節辺りまでぬるみ肉の間に潜り込ませるだけで、拒絶も嫌悪も霧散していくように、表情から力が奪われていく。
ようやく媚薬の効き目を実感することができた。
「ん、ぅっ……違う、くすぐったい、だけだから」
指の往復が愛液を分泌する呼び水となり、柔らかい桃肉は蜜をたっぷりと湛え、溶け崩れんばかりにまとわりつき、ぬめりを増しながら指の周囲で息づきを繰り返す。
「はあ、いい匂い……甘酸っぱくて…………本当にくすぐったいだけ? それなら、こういうことしても大丈夫だよね」
「ぅ、ああぁ……っ、ふ、うう……」
穂乃香の瞳に見えるのは朧げな輝き、濡れた睫毛に、顎を伝う汗の滴……くすぐったいだけなど誰が信じるだろうか。
甘ったるく、少しすえた匂いが近づけた顔をくすぐる。
人差し指で円を描き、入り組んだ模様を刻む肉をなぞり上げるたびに匂いも、湿り気も強くなる一方だった。
合わせて導かれるままに指を深く差し込むと、にゅるりと敷き詰められた襞が愛液を吐き出しながらひしめき合いを繰り返す。
逃げることもできず、ただ秘めやかな箇所を触られるのみ。
肌も吐息も燃え上がらんばかりに熱を滴らせているが、心は深い水の底を思わせる冷え込みを見せていた。
指先による執拗な撹拌が奥から愛液を掻き出し、シーツに大きな染みを作るが、肉体が覚える悦びを実感するほどに自分が許せなくなり、恋人である魁人に対して申し訳ないという気持ちが湧き上がってきた。
「気持ちよく、なんて……はあう、っ……ならない」
言い聞かせた言葉が、ひどく虚しく響いた。
沈んだ心を盛り上がった身体が引っ張り続ける。
目で見ることはできなかったが、せめぎ合い、蠢く肉と肉が入り込んだ異物を強く意識させる。
四肢は拘束されているが、指がぬかるみと化したぬるついた狭間を行き来するうちに、腰はくねり、背筋はブリッジするように大きく反り上がってしまう。
頭の中で、くちゅりと悦を吐く音が聞こえた。
ここにいるのが魁人だったら……満たされた気持ちになるのだろうか。
目をつむって魁人を想像するほどに目の前にいるのが直久だという現実を突きつけられてしまい、逃げ出したい気持ちが膨らみ続ける。
「あは、うっ、はあ、はあぁ……だめ、直久、君……」
切れ切れになる言葉、上ずり、甲高くなる喘ぎ、汗玉で満たされた上気する一方の白肌、泳ぐ腰……必死に言い聞かせる、気持ちよくない、怖くて痛いだけだと。
だが、指がくの字に曲がり襞を擦り上げたところで、並べた言葉も全て吹き飛んだ。
後に残るのは水飴をこねるような音だけ、指先の抽送が深みを穿ち込むと膣肉が覆いかぶさって指を四方から締め付ける。
「きゅうきゅう締め付けて、本当は気持ちいいんだろ?」
直久の指は桃色の壁に囲まれた生きた洞窟のあわいに溜め込まれた蜜の中を泳ぐ。
滑りながら螺旋を描く指の動きが拒否感を増幅させる。
さらに、直久の言葉が屈辱めいた羞恥を噴き上がらせた。
嫌なはずなのに、本当は魁人がいいのに、別の異性に気持よくさせられている、認めがたい事実だった。
「もういいよな、我慢できなくなってきた」
唐突に指が引き抜かれ、両足のロープだけが外された。
安堵の息を漏らしたのも束の間、そそり立つ肉棒が愛撫で解された入り口に押し付けられる。
開いた穴を押し広げて狭輪をくぐらんとする亀頭に血の気が引きそうな恐怖を味あわされた。
自由になった両足で何度も馬乗りになろうとする身体を蹴飛ばすが、まるで効果はなかった。
「い、いやっ……やだ、やめて、先輩、助けて、やだあっ!」
頭に思い浮かべた魁人に助けを求めるが、いるのは自分のすべてを奪おうとする直久だけだった。
笑みが歪んで見えるのは、目頭を熱くする涙のせいなのだろう。
「だから、あいつは来ないって……いくよ、穂乃香ちゃん」
腰が沈む、ぐちゅっと小さく音が立つと激しい痛みが背筋を貫いた。
呼吸も、瞬きもすべてを忘れるほどの痛み……目の前が何度も点滅する、頭の中で何かが鳴り響く。
こんなに苦しいのに、直久は脚を掴んで穂乃香の頭のあたりまで持ち上げたまま、挿入を深くする。
何かを引き裂かれるような間隔に、ただひたすら魁人がここに来てくれるのを待ち望んだ。
「か……はあぁ、っ……あああああっ!!」
「ははっ、本当に処女だったのか、こんなエロい身体なのにさっさとハメないなんて……あいつも馬鹿だよな」
遠くで直久の勝ち誇ったような、語尾の強い言葉が聞こえる。
肉棒はまだ半分ほどしか入っていない、しかし下腹部に広がる圧迫感に早くも苦痛は限界点を通り越していた。
ロープの食い込む痛みも忘れて、穂乃香は身体を右に左に悶えさせる。
もっとも、もがくたびに挿入の角度が変わり、掻き広げられた膣壁を強く擦られてしまい、五感が全て麻痺する程の強い痛みに襲われてしまう。
「痛い、んぅっ……抜いて、よぉ」
亀頭から根元まで、薄めた水飴を含んだ真綿に含まれているような錯覚を感じた。
腰を小刻みに動かせば、律動に合わせて襞が小さくぞよめき、肉棒に巻き付いてぬちゅくちゅと粘り気を溢れさせたまま縋り付いて先端を奥へと引きこむ。
すぐにでも腰を乱暴に動かし、生温かい締め付けがもたらす快楽を貪りたかった。
しかし、今後のために穂乃香に極力痛みを与えるべきではないと、全身のこわばりが解けるまで、腰の動きを止めることにした。
「く、ふっ……はあ、う、んっ……やだ、抜いて」
「それは無理だよ、こんなに気持ちいいのに」
眉間によった皺が浅くなる、まだ待つべきなのだろうが、雑巾を絞る要領で収縮を繰り返す肉筒に我慢は限界に達する。
びっしりと内側を満たす襞蟲は、それぞれが独立した生き物に近い動きを見せ始める。
裏筋に食らいついたかと思えば、カリ首をねっとりとした愛涎にまみれさせ、不規則な間隔で配置された肉の環は表面に巻き付いて竿を満遍なく締め上げる。
そのたびにぬちゃっぴちゃっとぬめり肉が合わさった入り口から愛液と先走りの混合液がこぼれ、穂乃香のお尻まで汚す。
「痛い、やあぁっ、お願い、ああ、ふうっ……」
一筋一筋の波線が、最も敏感な肉兜のエラに絡み付く。
這い回る肉蚯蚓が噛み付くことで粘膜同士のふれあいがさらに強くなり、直久を射精へと追い込む。
先走りを垂れ流し最大限まで勃起した男根は、下腹部に甘い痺れめいた快感をもたらし、二人のつながりを起点に身体を蕩かそうとする。
甘蜜をまとった蚯蚓は、まるで動こうとしないペニスに業を煮やしたかのように巻き付き、滲ませた粘液を潤滑油代わりに竿を優しく締め付ける。
「……は、ああっ、ううぅ……せん、ぱい……」
「そろそろ、動いてもいいよね?」
穂乃香が首を大きく振った、しかし、その顔は何かを待ち望んでいるようにも見えた。
眉間は緩み、呼吸はゆっくりとしたものに変わる。
白い首筋は反り上がり、顎から喉にかけての柔らかそうなラインを露にしていた。
魁人の幻想を追いながら、ロープを引きちぎろうと縛られた両腕を振り回すが、ベッドが軋む音がするだけだった。
「や、ああっ、抜いて、離れてっ……!」
動きを見せないペニスに筒の内側は順応しつつあった、さっきまであんなに感じていた引き裂かれるような激痛が薄れようとしている……同時に痛みによって後ろに追いやられていた理性が置かれている現状を否応なく認識させる。
望まない相手とのセックスによる嫌悪感、全てを暴き立てられたことによる羞恥、そして男性器の律動がもたらす愉悦、全てが綯い交ぜになり、穂乃香の心をどこまでもかき乱す。
「もう大丈夫だって、あんまり痛くないでしょ?」
その内に……あと何ヶ月かすれば、魁人と一つになっていたのだろう。
何度もしているからキスは慣れたものだが、胸やお尻に触れる手は、きっと緊張に満ちたものなのだろう。
加減の利かない愛撫であっても、荒っぽい腰の動きであっても、彼ならすべてを受け入れることができる。
目を瞑り夢想に耽ることで、しばし恥ずかしさに満ちた世界を忘れることができた。
しかし、目を開ければ、ベッドに縛り付けられた身体を組み敷いて、腰を振っているのは直久だった。
苦しみに喘ぎつつ視線を下にやると、亀頭はすでに狭隘なぬめり穴に埋もれてしまっている。
「うっ、く……ん、ぅふ、ああっ、や、だ……動か、ないで」
直久の腰が反動をつけてストロークを大きくする、ずちゅっ、ぐちょっという突き捏ねる水音がより一層激しくなった。
産毛が総立ち、鳥肌が立つほどのおぞましさが頭のてっぺんから爪先まで一気に下る。
「だめだ、我慢できない……穂乃香ちゃんのマンコ、気持ちよすぎるんだよ」
穂乃香は、相変わらず抵抗を続けていた。
結局ほとんど効き目を見せなかった媚薬だったが、カリ首に入り込む蕩け肉の感触に、あれこれ考えることが煩わしくなってきた。
薄切りにして人肌に温めたゼリーを思わせる肉環が雑巾絞りの要領で、右から左からペニスに押し寄せる。
水気をたっぷりと含ませた練絹で縛り上げられているようだった。
「っ……動くよ」
「んう、うっ……だ、め…………ああはあっ!」
襞蟲が手前から奥へと引きこむ動きを強くし、繰り出した前後の抽送以上に竿がぬたつきの狭間に導かれる。
先へ進むほどに穴は狭くなっており、押し広げた媚肉と亀頭の圧着は激しくなるばかりだった。
棒が半分ほど膣穴に差し込まれる、小鼻を広げ、唇を真横に結ぶ穂乃香の表情に苦しみの芽生えが見て取れたので、再び腰の回転を穏やかなものに変える。
やはり、まだ痛いのだろう……だが、それだけではないはずだった。
表情こそ固く歪み、食いしばった真珠色の歯を露にしていたが、肉棒が深みを突き上げるにつれて、尽き果てることのない泉を掘り起こし、粘液をしとどに溢れさせていた。
へばりつく愛液は蠢動する襞との間の接着剤でもあり、潤滑剤でもあった。
内回りの螺旋を形作る肉ゼリーはにちゃにちゃと音をさせながら竿に取りすがり、ぞよめき立てる。
「ぐにゅぐにゅ締め付けてきてるよ、本当は気持ちいいんだろ?」
徐々に深くなる抽送に襞のうねくりはさらに激しくなった。
糸を引きそうなほどにぬめりの強い涎を垂らし、斜めに食らいついたかと思えば、根元付近から膣奥伝いのぬめりを伴った吸引と圧迫を同時に受けてしまい、下腹部に大きく震えが走る。
「あ、くっ……ん、ふぅっ……や、ぁあ」
ぽっかりと開かれた口から掠れ声がこぼれ落ちた。
手首はすでに痺れ切っており、痛みすら感じない。
このまますべての感覚がなくなればいいのに、と思うのだが、そそり立つペニスに貫かれた穴の内側だけは、疼きを潜ませた痛みを絶えず送り込んでくる。
突き込みは緩やかなままだったが、身体は少しずつ感度を増しているようで、背中が少しずつのけぞろうとしていた。
「穂乃香ちゃん、ほら……こうすれば痛くないだろ?」
直久が動きを止めた、これが一番嫌だった……痛みからの開放は、そこに恥辱を置き換えるにすぎない。
今自分が何をされているか、そこに意識が向かってしまう。
ベッドが軋む音が一段階大きくなった。
「そんなの、はあ、ぁ……痛くなくたって、っ……気持ち、んぅっ……悪い、だけ」
「……もっと俺に感謝したほうがいいよ、普通はもっと痛いからね。っ、あいつだったら……死ぬほど痛がって途中で終わりかな」
魁人の悪口を言われると、肌を舐め回す熱気が末端まで瞬時に広がった。
二つある桃色の突起をきつく抓られれば、そこに電流が上乗せされた。
これが気持ちいいということなのだろうか、そんな思いが脳裏をよぎった途端、熱気は炎と化し、電流は稲妻と化した。
「あ、あはあっ……あああんっ!」
「ねえ、いってもいいよね、もう我慢できない……」
膝と肩が触れ合う、太ももの裏に突っ張った痛みを感じた。
だがそれ以上に、直久の”いく”という言葉に自然と腰が上へ上へとずれていく。
膣口に広がる痙攣はおびただしい不快をもたらす、何度も直久の脇腹を蹴飛ばしていた。
「あ、あっ、んんあっ、だ、だめ、抜いて、やあぁ」
膣奥に狙いを定めたストロークからは逃げられない。
握り込むような圧着越しに伝わる脈動が射精への本能的な恐怖を増幅させ、腰の泳ぎを更に大きくさせた。
「出すよっ、穂乃香ちゃん!」
表面に粘蜜をかぶった肉蟲が潜む底なし沼に、肉棒はすでに限界を通り越し、睾丸は何度も蠢き、射精をせがんでいた。
こみ上げる射精衝動が切っ先付近までせり上がってきたところで肉棒を引き抜く。
先走りと愛液が混じり合った竿が二、三回震えて鈴口から精液を勢いよく吐き出し、穂乃香の首筋から開いた口、そして眼鏡へと白い礫がぶちまけられた。
「ううっ、ぅ…………」
脈動が一つ増えるたびに全身を脱力感が襲う、だがそれはこの上なく心地いいもので、礫が増えるごとに身体が蕩けてしまいそうな錯覚に襲われる。
ずっと前から目をつけていた穂乃香、恋人がいるにもかかわらず処女を奪うことができた……達成感と征服感が吐精の余韻とごちゃまぜになり、眩暈すら覚え、ふらついたままベッドに腰を下ろした。
「あ、あぁ……や、だぁ、こんな、先輩……い、いやああああああっ!」
切りつけるような穂乃香の悲鳴が耳に叩き付けられた。
両腕の動きはロープを千切らんばかりに激しくなり、へばりつくどろどろの精液を振り落とそうとしているのか、振り乱れて解れた濡羽色の髪と、弾む乳房にも構わず腰を振り上げ始めた。
白肌にどろりとこびりついた精液は、よほど粘度が高いのだろう、どれだけ身体を暴れさせてももスライムのように弾力を保ったままで、肌を滑り落ちようとはしなかった。
「………………ひどい、こんなの……警察に…………!!」
荒くなる語気は、シャッターの音で中断させることができた。
最初こそ目を見開いて呆気にとられた顔をしている穂乃香だったが、少し遅れて紅潮したままの顔を背ける。
携帯の画面には開脚したままで結合部から半濁の液体を垂れ流し、苦痛に険を浮かばせながらも、どこか恍惚と頬を染めた彼女がいた。
「わかってるよね、どういう意味か」
「…………」
「こんなのがネットに流れたら、新聞部だってただじゃすまないだろうね。”先輩”だって最初は同情してくれるかもしれないよ、でも……」
向こうの言いたいことはわかる、もし今日されたことが明るみに出たら、廃部になる可能性もある、そうなれば魁人の推薦の話も流れてしまうかもしれない。
黙っているしかないのだろうか……フル回転してしまった頭が次々と悪い想像を脳の表に引っ張りだしてくる。
「心配しなくても大丈夫だよ。今日みたいなレイプなんて絶対にしないから、さ」
信じられるはずもなかった、だが……信じるしかなかった。
魁人の顔が浮かぶ、自分の勝手な行動で彼の夢を壊してしまうわけにはいかない、視界も歪む絶望の中、今の穂乃香には魁人だけが支えであり救いだった。
「……うっ、ん……んっ……ぐすっ……」
馬乗りになった直久がロープを解く、白い手首には赤い痣が巻き付き、擦り傷もわずかだができていた。
瞼に溜め込まれた涙が一筋こぼれる、滴が顎から手の甲へと落ちた。
「……ひっく、んうっ……ひどい、ひどいよ…………」
入口のドアが閉まる音、増える滴玉に合わせて、すすり泣く声も大きくなっていった。