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連載小説「通販カタログ」(12) (Pixiv Fanbox)

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  (12) 「へへっ、いい写真が撮れた~」  ぼくのベッドに腰掛けた一ノ瀬さんはご満悦で、デジカメの撮影履歴をチェックしていた。何だかハメ撮りされたような気分だ。  一ノ瀬さんの「手土産」――パステルカラーの女児ポロシャツとサロペットスカートを着せられたぼくは、さらに彼女にあれやこれやとポーズを指示され、その姿を写真に撮られてしまった。顔の左右でダブルピースしたり、女の子座りしながら飲み物を飲んだり、ベッドに寝転がったり――男子中学生としては恥ずかしさの限界だ。  しかも―― 「ほら、裕一。パンチラもばっちり撮れてるよ。ピンクのしましまパンツ」 「み、見せなくていいから……!」  目の前に突き付けられたデジカメの画面から、ぼくは慌てて顔を背ける。しかし一瞬、女児服を着てはにかみながらダブルピースする自分の、太ももの間から確かに見えたピンクの縞柄に、股間が疼き始める。  そしてそこを包んでいるのが、先ほど見たピンク縞柄の下着だと意識して―― 「う、うぅ……」 「あははっ、裕一、可愛いな! ほんとに女の子みたいで!」 「ふふっ、本当ね。さ、次は私からね」  今までのんびりとお茶を飲みながらぼくたちを見ていた二宮さんが、改めて自分の紙袋を取り出す。しかも二つ。いったい何が入っているんだろうとドキドキしていると、 「まずはこれ。お姉ちゃんのおさがりの、セーラー服」  一つ目の紙袋から出てきたのは、今日着せられたのと同じ、中学の女子制服だった。しかも冬服、合服、夏服、冬スカートに夏スカートと一式揃っていて、 「え……あ、あの、何で……?」 「だって裕一くん、女装に興味あるんでしょ?」  さらっと爆弾を投下されて、ぼくは一瞬フリーズする。  どうして? まさか本当に、女子小学生の制服を着ていることがバレて――念のため、外の洗濯物もないことを確認したのに。 「だって裕一くんのソックス、女子用だもの。外側に刺繍が入ってたし」 「あっ……!」  完全に盲点だった。「ソックスくらいならバレないだろう」と、体育のない日はこっそり女子用のソックスで通学していたんだけど、セーラー服を着た時に見られていたらしい。 「あー、そういえばそうだったな。あたしも気づかなかった」 「ふふっ、他の子たちは、凛が用意したものだとばっかり思ってたみたいだけど。良かったね、あの場で聞かれてたら、完全にバレてたよ」 「う、うぅ……いやその、これは母さんが買ってきたもので、女子用だとは知らなくて……」  冷や汗が止まらない。幸いなことに、二宮さんもこれ以上追及する気はないようで、 「ふーん。ま、そういうことにしておいてあげる。とにかくそれをあげるから、よかったら着てちょうだい。もちろん、学校に着て来てくれてもいいわよ。その時はサポートしてあげるから」 「い、いや、さすがにそれは恥ずかしいから!」 「あら、いらないとは言わないんだ。じゃあ家の中では着てくれるのね。ふふっ、よかった。お姉ちゃんも喜ぶわ」 「う、うぅ……その、うん、ありがとう……お姉さんにも、お礼を言っておいて」  正直に言えば、ちょっと嬉しい。素直にお礼を言うと、 「ふふっ、お姉ちゃんも喜ぶわ。それで、こっちがあたしからの『手土産』」  そう言ってもう一つの紙袋から取り出したのは―― 「す、スーツ……?」  白のブラウスに赤系ストライプのリボン、紺のジャケットとスカート。一見するとブレザータイプの制服っぽいけど、ひとつ違うのはスカートが2段フリルのティアードスカートになっている。 「これって、卒業式で着るようなスーツ?」 「うん。お姉ちゃんとあたしが、卒業式で着たスーツよ。もう着る予定もないし、とっておいても仕方ないから、それも裕一くんに着てもらおうかと思って」 「そ、そう言われても、これを着たら、まるで――」  卒業式に参加する女子小学生みたいじゃないか――そう言おうとして口ごもる。普段から女子小学生の制服一式を着て、何ならランドセルや帽子、名札まで装備したパーフェクト女子小学生スタイルで外を歩いたこともあるのだ。 「ふふっ、さぁ、さっきみたいに、これに着替えて見せてちょうだい。下着もちゃんと入っているから、それも着替えてね。ソックスは刺繍入りの紺のハイソックスで」 「うぅ、はい……」  再び二人には外に出て行ってもらって、ぼくは本日6回目の着替えに取り掛かった。まるでお色直しだ。女児服を脱ぎ、さらに下着も脱いでから、改めて中身を取り出して、 「し、下着――って、これ!?」  中から出てきたものに、目を疑う。何かの間違いでは――とも思うが、着替えないとなにを言われるかわからない。素直にその「下着」をつけ、スーツを着て、ソックスも自分の刺繍入りハイソにはきかえて、部屋の外に声をかける。 「き、着替え終わったよ」  入ってきた二人は女児用卒服姿のぼくを舐めるように見回して、 「どれどれ……おおー、こっちも可愛いじゃん! 清楚な感じで」 「ええ。ふふっ、とてもよく似合ってて、嬉しいわ」 「ど、どうも……っていうか、二宮さん! し、下着って、あれでよかったの? 一応はいたけど、間違ってない?」  ぼくの質問に二宮さんはにんまりと笑って、 「あら、何かおかしかったかしら。ちょっと見せてくれる?」 「み、見せてって、その、脱げってこと……?」 「ううん。穿いたまま見せる方法、あるでしょ?」 「う……」  つまり、あれをやれっていうのか。  恥ずかしさに手が震える。けど、他に方法は思いつかなくて―― 「こ、この、下着、なんだけど……!」  ぼくは自分の手でスカートの裾を握ると、ゆっくりと持ち上げていった。  その下から現れたぼくの下半身――そこを包んでいるのは、女子小学生用の卒業スーツにはおよそ似つかわしくない、紫色の、総レースTバックショーツだった。  それを見た二人はニヤニヤ、ニマニマといじわるそうに笑って、 「おおー、エッロいなぁー……」 「うふふっ、間違ってないわよ、裕一くん。とってもよく似合ってるわ」 「うぅ……せめて普通のにして欲しかった……」  恥ずかしさの極致。もうこれ以上ないほどの恥ずかしさに身もだえ、急いでスカートを下した時だった。 「そうだ。脱いだ服、しまっておいてやるよ」  ふいに一ノ瀬さんがそういうと、ついさっきぼくが脱いだパステル女児服を手に取って、クローゼットに近づいた。 「あっ、待って、それは……!」  慌てて声をかけたものの、時すでに遅し。  一ノ瀬さんの手は、ぼくの秘密を閉じ込めたパンドラの匣を大きく開け放っていた。   (続く)

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