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連載小説「通販カタログ」(7) (Pixiv Fanbox)

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  (7)  天気がいい休日ということもあって、駅前はにぎわっていた。平日の朝と違って、スーツ姿のサラリーマンや制服姿の学生は少ないけど、代わりに家族連れやカップル、高校生大学生のグループでごった返している。  その中で―― 「ははっ、こうして家族三人で出かけるのは、久しぶりだな」 「ほんと。ねぇ、裕ちゃん」 「う……うん……」  ぼくは父さんの母さんの間で縮こまるように歩きながら、たくさんの人の目にビビりまくっていた。  何しろ本当は男子高校生のぼくが、女子小学生の制服を着て歩いているのだ。そのことがばれたら、変態扱いされたり、警察に通報されたりするかもしれない。さらに最悪のケースとして、もしも学校の友達にあったらと考えるだけでも怖い。 「そんなに怯えなくても大丈夫だぞ、いまの裕一は可愛い女の子にしか見えないからな」 「そうよ、裕ちゃん。もっと胸を張って――でも歩幅は小さく歩いてね」 「わ、わかった……あと、あんまり話しかけないで……」  周りからの目だけで、ぼくのキャパシティは完全にオーバーしていた。「女の子にしか見えない」なんて、男だとバラすようなことは言わないでほしかった。  父さんはしょんぼりしていたけど、今のぼくにはフォローする余裕もない。  母さんはくすくす笑って、 「さて、まずは制服店で、学校用品をそろえましょうか。駅の近くに、色々取り揃えているお店があるみたいなのよ」  そう言って、駅とは反対のほうに歩き始めた。  駅前通りから街道に入り、横道を通って、見えてきたのは一見の店。看板には、「文月制服店」と書いてある。ガラス張りの店頭には、主に女子の制服が並んでいる。  紺のブレザーに、赤いリボンと、グレーチェックのプリーツスカート。  白地に紺の襟がついたセーラー服と、紺無地のプリーツスカート。  白い丸襟のブラウスにピンクのジャンパースカートと、水色のダブルボタンボレロは――サイズからして、幼稚園の制服だろうか。これも可愛くて、ちょっと気になるけどなによりも―― 「あったあった、裕ちゃんと同じ、小学生の制服よ」 「うん……!」  丸襟ブラウスに、紺の吊りスカート――おそらくは。というのも、上には紺のダブルボタンジャケットが着せられて、その下は見えないからだ。襟がない(イートンタイプというらしい)ジャケットは、いかにも小学生っぽい。 「通販サイトだとブラウスとスカートしかなかったけど、ここならジャケットも買えそうね。さ、入りましょう」 「うん」  ドキドキしながら、ぼくは母さん、父さんと続いて、制服店に足を踏み入れた。 「いらっしゃいませー」  店員さんは、若い女性だった。細身のシャツとパンツが、凛々しい顔立ちとポニーテールによく似合っている。  じっと見られて、男だとバレているんじゃないかとちょっとドキドキしたけど、 「小学生のお嬢様ですね。小学生向けの商品はこちらの棚になりますので、ご案内します」  ほっ。本当は男子だとバレたわけではなかったみたいだ。  案内された先には、店頭で見たイートンジャケットや丸襟ブラウス、吊りスカートが並んでいる。さらに通学帽子、名札、上履きなどの学童用品から、体操着、スクール水着の類まで。 「うんうん、これなら一通りそろえられそうね、裕ちゃん」 「う……うん……」  いまはただブラウスとスカート、ソックスを着ているだけだけど、帽子や名札、上履きなどもつければますます小学生っぽくなれそうだ。考えるだけでまたドキドキしてきた。 「じゃあ店員さん、このあたり、一通り頂けるかしら? 帽子と名札、上履きに――裕ちゃん、ブルマーは買ってたけど、水着は持ってなかったわよね? 一緒に買っちゃいましょう」 「うん」  ぎくっ。「ブルマーは買ってたけど」のあたりで、店員さんが変な目でこっちを見た気がする。ば、バレてないよね……? 「かしこまりました。ただいまお持ちしますね。スクール水着には、キャミ型、ラン型、スカート付き、スパッツタイプ、さらにラン型には水抜きのある旧式タイプと、いくつかのタイプがありますが、どれになさいますか?」  店員さんはそう言って、棚の上のスクール水着を一つずつ広げて見せる。  キャミソールタイプ。ランニングタイプ。腰にスカートがついているもの。セパレートで、下がスパッツになっているもの。そして――ワンピースタイプだけど、まるでランニングの下にパンツをはいているようなラインの、旧式スクール水着。  実際に女の子が着ているのは見たことがない、古いタイプだけど、ちょっとエッチな漫画やグラビアでよく見かけるから、気になっていたのだ。 「え、ええと……」 「ふふっ、やはりこちらがお好みでしょうか?」  ぼくの視線を追ったのか、店員さんが取り上げたのは旧式スクミズ。鋭い。もしかして、ブルマーが好みというあたりから察したんだろうか。ほ、ほんとに、ぼくが男だってバレてないよね……?  さらに店員さんは、続けてとんでもない提案を口にした。 「せっかくですし――こちらの水着、試着してみます?」   (続く)

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