連載小説「女装強要妄想ノート」(37) (Pixiv Fanbox)
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4月第4週「女児女装で駅前に連れ出される」
(2)
気づいた時には、もう遅かった。
たくさんの女児シューズの前で立ち尽くす真弓に、
「さ、真弓。可愛い靴を選びましょうね」
母親が、罠にかかった獲物を見る目で微笑みかけた。
「今までは亜弓ちゃんのおさがりで済ませてきたけど、これからお外に出ることが多くなるんだから、いつまでも亜弓のおさがりってわけにはいかないでしょ? 新しいのを買ってあげるから、好きなのを選びなさい」
「う、ううっ……!」
「小学校の女子制服に合わせるフォーマルなシューズと、ふだんの女児服に合わせるカジュアルなスニーカー、とりあえず2足もあれば充分かしら。それとも、あっちのサンダルとかも気になる?」
母親が話しかけてくるが、周囲にちらほらと見えるお客や店員の視線が気になって、まともに頭に入って来ない。彼らの顔には一様に、「あの男子高校生の子、女の子用の靴を買うの?」「小学校の女子制服とか、女児服とか着てるのかしら」と書いてある。
(ハメられた……! これなら最初から女児服の方がマシなくらいじゃないか……!)
完全に女の子のふりをするのも恥ずかしくはあるが、ここまで注目はされないだろう。真弓にあえて男子高校生の格好をしたまま、女児用シューズや女児服を選ばせる――それこそが、今回の「お出かけ」の主眼だったのである。
「さぁ、まずはシューズね。こっちの棚にあるから、いらっしゃい」
「う、うん……」
真弓はフォーマルシューズ売り場へと近づいて、そこに並ぶ女児シューズを見下ろす。
つま先やストラップにリボンがついたもの、バックルがハートや花の形になっているもの、履き口に白いラインが入っているもの。色は黒が中心だが、白やピンクのものもいくつか置かれている。
(これを、オレが――!)
制服や女児スーツを着せられた時も、女児用シューズを履いてはいる。しかし用意されたものを履くのと、改めて女児シューズ売り場まで来て、自分で選んで購入するのは、恥ずかしさのレベルが段違いだ。
なによりも、
(シューズを買ってもらうってことは、オレ、このシューズを履いて――つまりはこのシューズに合わせた女児服を着て、外を歩くことになるわけで……!)
今すぐこの場から逃げ出したくなるほどの恥ずかしさに襲われる真弓。
しかし同時に、女児女装外出の予兆に、男子制服のズボンの内側で彼の劣情が蠢き始める。
(うっ……考えてたら、チンコがむずむずしてきた……!)
勃起こそしていないものの、真弓の理性は徐々に「女の子の服を着て気持ちよくなる」ことに蝕まれて、視線は目の前のシューズに吸い寄せられてゆく。
どれもこれも可愛らしい、女児用シューズ。
これを履いて、女児服を着て、髪形も女の子らしくして外出したら――いったいどれほど恥ずかしく、気持ちいいだろう。
「ふふっ……」
母親は、息子の心の変化を見透かして笑う。
どれもこれも可愛らしいシューズで目移りしてしまう。まず目につくのはピンクのシューズだったが、
(セーラー服と合わせることを考えると、あんまり明るい色は合わないかな……白もピンクも可愛いけど、今回はスタンダードな黒にしよう)
(あとは飾りのついたものだけど――リボンに、バックルに、うう、悩む……)
(シンプルなほうがいいかな……それとも、ちょっと恥ずかしいけど、一目でパッと女の子用のだってわかるようなデザインに……)
花の形に、キラキラ輝くストーンが並んだバックルのシューズ。セーラー服と合わせても違和感がなく、それでいて一目でわかる少女らしさがある。
(こ、これは……さすがにちょっと、恥ずかしいかも……!)
真弓が履いている自分の姿を想像して硬直していると、母親はその視線の先をすぐに察して、
「ふぅん、それがいいのね?」
「えっ……ち、ちがっ、見てただけで、欲しいわけじゃ……!」
「恥ずかしがらなくてもいいわよ。すみません、試着をお願いしたいんですけど」
近くにいて様子をうかがっていた店員を呼ぶ母親に、真弓は大慌てに慌てるが、
「試着ですね、かしこまりました」
すでに事情を察し、出番を待ち構えていた店員はすぐにやって来てうなずく。彼女が内心で舌なめずりしているのが、目に見えるようだった。
「お召しになるのは、息子様ですか?」
「ええ、まずはこちらのフォーマルシューズと、それからスニーカーも欲しいんです」
「かしこまりました。それではお履き物を脱いで、ご試着ください。女の子用なので、表示より少し大きめのサイズを――」
(ううっ、男子制服を着てるせいで、逆に恥ずかしい思いをするなんて……!)
あれやこれやと話し始める母親と店員の勢いに押され、真弓はあれやこれやと女児用シューズやスニーカーを試し履きさせられ――さらにしばらくして妹の亜弓も参戦したのだった。
(続く)