「思い出のワンピース」(15) (Pixiv Fanbox)
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「思い出のワンピース」
4.小学校に行こう!
「久しぶりね、2人とも。もう5年以上になるのかしら」
「はい。あの頃はお世話になりました」
「は、はい。その、お久しぶりになります、三河先生」
校門からぐるっと校庭を迂回して校舎に続く道を歩きながら、博希と愛那は女性教諭――かつて担任だった三河教諭と、久闊を叙していた。
三河教諭は20代後半、ショートカットに黒縁眼鏡の女性教師である。
すでに校門前での記念撮影――博希と愛那のツーショット撮影を済ませ、さらに三河教諭の特別の計らいで、校内への立ち入りを許されたのだった。
「その、大丈夫なんですか? ぼくたちを入れても……」
「大丈夫よ、『忘れ物をした妹と、付き添いのお姉ちゃん』ってことにすれば、誰も何も言わないわ。まして今のヒロくんは、いかにも女子小学生って格好なんだし」
「は、はい。ありがとうございます」
お礼を言いながらも、博希は顔を赤くする。
「でも、驚いたわ。校門前に女子生徒がいるみたいだから様子を見に来たら、まさかヒロくんだったなんてね。似合ってるけど、何かの罰ゲーム?」
「い、いえ、その……最近こういう服が、好きになって……」
「あらあら。真面目一辺倒だったヒロくんが、ねぇ。うん、でもいいじゃない。似合ってるわよ、とっても」
「あ、ありがとうございます」
嬉しさと恥ずかしさに、博希の顔がさらにかぁっと熱くなった。
話す間にも、3人は校舎の中へ。廊下を歩きながら、博希はますます現実感が希薄になる。
(ぼく、小学校の中を歩いてるんだ――こんな、女子小学生の格好で……)
近況報告と思い出話に花を咲かせ、ときおり愛那に撮影されつつ、校舎内を一回りする。各学年の教室に、工作室、理科室、音楽室、家庭科室、書道教室に図書室――はるか記憶の中に埋もれていた教室の数々と、着ている「制服」のせいで、博希はまるで女子小学生になってしまったかのような感覚に襲われた。
そのことを口にすると、三河教諭はくすくす笑って、
「だったら、2学期から女子として通いなおす? ちょうど先生は5年生の担任だから、そこに『転校』してきたらピッタリね」
「くすっ、『都立高校から転校してきました』なんて言ったら、5年生のみんなはびっくりするんじゃないかしら。まして、本当は男子だって知られたら」
「も、もう、ふたりとも……」
からかわれて真っ赤になる博希だったが、想像するとドキドキしてくる。
(女子小学生として、女の子の格好をして、赤いランドセルを背負って、毎日小学校に――)
ゾクッ、と腰の奥に電流が走る。
そこから尿道を通り抜ける、液体の快感。昂奮の先走りが、緊張で勃起もしないままのペニスからあふれ出して、コットンのインゴムショーツを濡らしたのだ。
(うぅっ……女の子の格好をして昂奮してるなんて、先生にはバレないように気を付けないと……)
博希が気を引き締めている間に、一行はついに4階の端まで廊下を進み切っていた。ちょうど目の前は、空き教室の前だ。
「ふふ、これで一通り、案内し終わったわね。小学生気分、味わってもらえたかしら?」
「は、はい、とても」
女子小学生の格好をして、実際に小学校の中を歩くなんて、めったにできる経験ではない。おそらく今後も、思い出したり、愛那が撮影した写真を見たりするたびに昂奮することだろう。
けれどこれで、恥ずかしい女子小学生ごっこも終わり。あとは名残を惜しみながら帰るだけ――そう思っていた、博希だったのだが。
「それはよかった。じゃあ――もうちょっとだけ、続けましょっか」
三河教諭はそう言って、すぐ近くの空き教室の扉に近づくと、鍵を差し込んで開けた。職員室に立ち寄った時に持ち出したものだ。
「え……い、いいんですか?」
「ええ。廊下を歩いただけじゃ、物足りないでしょ? 先生はちょっとお仕事があるから、ずっとはついていられないけど、ふたりで授業ごっこをしてて構わないわ。用事が済んだら、職員室に声をかけてちょうだい」
愛那に鍵を渡すと、三河教諭は「じゃあね」と手を振って立ち去った。
思わぬ展開に、博希と愛那は顔を見合わせるが、
「――じゃ、お言葉に甘えさせてもらいましょっか。せっかく教科書やリコーダーも持ってきたんだし、ね」
(続く)