「姉ママ」(7) (Pixiv Fanbox)
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(7)
(ね、姉ちゃん――?)
眩しさをこらえ、確認しようと薄眼を開けてドアの方を見る。
そこにいたのは17年間、同じ家で育った姉・アカリの姿。まだ20歳にもなっていないとは思えない、落ち着いた物腰の女子大生だ。
着ているのは上品な立ち襟ブラウスにサーモンピンクのロングスカートと、淡い黄色のカーディガン。背中まで届く長い髪を、いまは緩やかな三つ編みにして、藤色のリボンで留めている。
いつもよりさらに上品な、姉らしい――否、まるで母親のような姿であった。
彼女は弟の姿を認めると、
「ふふっ、おはよう、ヒカリちゃん」
たまに寝坊したヒカリを起こしに来るときのような、いつも通りの声で呼びかける。
しかし――男子高校生の弟が女児ベビー服を着せられ、腰をたっぷりと当てたおむつで膨らませた姿でベビーベッドに寝転がり、赤ちゃんのように泣いている光景への反応としては、かえってあまりにも異常であった。
(姉ちゃん、なんで普通にしてるんだよ――オレがこんな女の子の赤ちゃんみたいな恰好で、赤ちゃんみたいに泣いてるのを見ても、なにも変に思わないのか――))
(もしかして姉ちゃんが、オレを赤ちゃんにしたんじゃ――?)
思わず疑問が口を突いて出そうになるが、また巻き戻されてはたまらない。いい加減、股間を冷たく濡らすおねしょおむつの感触にも耐えられなくなってきたところだった。
ヒカリは口をつぐみ、じっと姉を見つめる。
「まだ朝早いのに、エーンエーンって泣き始めちゃって……おなかすいたの? それとも、おむつかしら?」
「う……」
(やっぱり姉ちゃん、オレのことを赤ちゃん扱いしてる――)
無我夢中で呼んではみたものの、やはり改めて姉の視線に晒されると恥ずかしく、横を向く。
すると改めて、室内の様子が鮮明に見て取れる。天井は淡いピンク、壁面はやや濃いピンクと白のストライプで、白い部分にはバラが描かれている。クローゼットやキャビネットは純白。そして壁に掛かっているベビー服も、黄色に色とりどりの小花柄、水色の音符柄、ラベンダーのユニコーン柄に、ピンクに白と赤のハートプリント――丸襟、フリル、レースにリボン、ピンタックなどの女の子らしい装飾が施されたものばかり。もちろんそのどれもが、ヒカリが着られる170センチサイズであることは繰り返すまでもない。
そして今の自分の姿も、はっきりと見ることができる。
淡いピンクのギンガムチェックに、赤いイチゴがプリントされたロンパース。胸元に白い三日月型の襟がついているのが、まるでよだれかけのようだった。股スナップが並ぶロンパースのパンツ部分からは、つるつるに体毛を剃られた剥き出しの太ももが伸びていて、
(すね毛の生えた脚よりは見苦しくはないけど――逆に赤ちゃんみたいで、恥ずかしい……!)
さらにすでに外したミトンも、後頭部を覆ったままのベビーボンネットも、ロンパースと同じ柄の生地で、どちらもレースに縁取られていた。
(は、恥ずかしい――オレ、こんなベビー服を着て、寝かされてたのか……!)
(しかもそれを、姉ちゃんに見られて――!)
恥辱に顔をゆがませるヒカリ。
しかしアカリはそんな弟の表情を、別の理由によるものと理解する。
「あらあら、そんないやそうなお顔をしちゃって、よっぽどご機嫌斜めなのね。ミトンも外しちゃって、ヒカリちゃん、どうしたのかしら?」
言いながらすぐ近くまでやってくると、安心させるような笑顔でヒカリの顔を覗き込む。その優しい表情は、どんなに頑なな心の人でも思わず釣り込まれてしまいそうなほどの慈愛に満ちていたが――簡単にほだされるほど、生易しい状況ではない。
巻き戻しが怖いため迂闊なことを口にできないこともあり、ヒカリはせめてもの抵抗にと、きっと口を結んで、姉の言葉に答えまいとする。
だが、彼は一つ誤解をしていた。
姉はヒカリを赤ちゃんのように扱っている――つまり彼女の言葉は、そもそも返事を期待しているものではないのだと。
「んー、どっちかな? まずはおむつが濡れてないか、確認しないとね」
「っ!?」
姉の手が、おむつでまん丸に膨らんだヒカリの下半身に触れる。ロンパースと布おむつカバー、そしてたくさんのおむつという、十二単なみの分厚い布越しにもかかわらず、触れられた瞬間、腰が跳ねるかと思うほどの衝撃にビクッと全身が震える。
おむつ越しにとはいえ、姉に股間を触られる驚愕に、ヒカリは思わず声をあげてしまう。
「な、なっ――!」
「ふふっ、そんなにびっくりしないで、ヒカリちゃん。お姉ちゃんが、おむつを確認してあげてるだけなんだから」
安心させるように話しかけるアカリ。しかしそれも、別にヒカリに意味を理解させようとしているわけではなく、本当に安心させるための語りかけだ。まさにその行為は、「赤ちゃんをあやしている」だけでしかない。
つまり、おむつが濡れているかどうかをヒカリに問いかける気など一切なく――
「さ、ちょっとおむつを確かめさせてちょうだいね」
そう言ったアカリの手が、ヒカリの剥き出しの太ももに触れると、ロンパースの股間から布おむつカバー、そしておむつの隙間にするりと潜り込んで、ちょくせつ陰部に――ヒカリの男性器に、その指先を触れた。
(続く)