「姉ママ」(3) (Pixiv Fanbox)
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(3)
最後に頭に、通学用の黄色い帽子――つばが丸くなった女子用の帽子をかぶせられて、顎の下にゴムをひっかけられ、
「これでよし、と。ほら、自分でも鏡で確認してごらんなさい。小学生でも、身だしなみはちゃんとする癖をつけておくのよ」
「う……は、はい……」
女子小学生の制服を着た自分の姿など、改めて見たくもない。しかもスカートは下半身に当てたおむつで膨らんでるため、みっともないことになっているのは見るまでもなくわかっているのだ。
それでもアカリに手を引かれて、ヒカリはベビールームの一角にある姿見の前まで連れていかれ――
「う……!」
そこに映っていたのは、女児制服を着こんだ、男子高校生の姿。
制服はかなりゆったり作られているらしく、変なシワなどはできていなかったが、それにしても異様である。しかも思ったとおり、プリーツスカートの上からでも一目でわかるほどにおむつが膨らんでいる。腰の細い少年の体格をカバーしているといえないこともないが、首から上は男であることが一目瞭然なのだから、当てているおむつの膨らみを想像させるばかりである。
「あ、あ……!」
「ほら、ぴったりでしょ?」
「ぴ、ぴったりだけど……オレ、この格好で、ほんとに、小学校に……?」
女子小学生の制服を着た男子高校生が小学校に近づくなど、普通に考えれば即通報モノだ。しかしアカリは何の疑問も持たないようで、
「ふふっ、小学生なんだから当たり前でしょ? ヒカリちゃんったら、変なことばっかり言うのね。えっと、あとはハンカチと、ティッシュをもって――」
手渡される、女児用のアニメ柄ハンカチと、ポケットティッシュ。
ヒカリが呆然としたままそれらをポケットにしまうと、続いてビニール製の、ピンクストライプの手提げポーチを差し出されて、
「はい、これも持っていくのよ。替えのおむつと、おむつカバーが入ってるからね」
「お、おむつ……」
男子でありながら女子制服を着て、たっぷりと布おむつを当て、替えてもらうためのおむつすら持たされて、学校に行く――リアル小学生のころでさえ経験したことのない幼児じみた行為に、ヒカリはますますいたたまれなくなる。
しかし逆らうことはできない。逆らったところで徒労に終わることを、昨日のうちにさんざん学んだからだ。
いや、それでも――彼は一縷の願いを込めて、声を震わせる。
「な、なぁ、姉ちゃん……オレ、もう17歳なんだけど……」
「ええ、もちろんわかってるわよ。ヒカリちゃんは17歳の男の子で、お姉ちゃんの可愛い可愛い、弟だって」
「17って言ったら、普通なら高校に通ってる年なんだぞ……! こんな部屋に住んで、おむつを当てて、こんなおむつカバーを付けて――おまけに小学生、それも女子として通学してるなんて、おかしいって思わないのかよ……!」
彼が訴えると、姉はいっしゅん「え?」という表情になる。
疑問と正気が、その瞳に戻りかけて――
しかしその瞬間、世界が暗転した。
再び目を開けると、そこは四方を柵に囲まれたベッドの上。
軽やかな音とともに頭上ではメリーサークルが回り、パステルカラーの壁には、たくさんの女児ベビー服が吊るされている。
吊るされているだけではない。彼自身の体にもまた、淡い黄色のロンパースが着せられている。襟ぐりにはフリルがついていて、どう見ても女児用だ。
そして下腹部からお尻にかけて、まんまるに膨らんでいるほど当てられている布おむつはぐっしょりと濡れて、肌にかすかにチクチクとする刺激が走り――
まただ。
昨日、何度も経験した巻き戻り現象に、ヒカリは唇を――いや、口に咥えさせられたおしゃぶりを噛みしめる。
ヒカリが反抗したり、あるいはアカリを説得しようとしたりと、強制的にその日の朝にロールバックされるのだ。あたかもバグを起こした世界を削除して、バックアップからやり直すかのように。ヒカリが辱めを覚えながらも、姉の言うとおりにベビープレイを続けていたのは、これが理由だった。
逆らっても無駄。説得しようとしても無駄。
(まるで、悪夢だ……だけど……)
(醒めない悪夢は、ただの悪い現実だ……!)
彼がぞっと、体を震わせた時だった。
「ヒカリちゃん、起きた? ミルクの時間よ。でも、その前におむつを替えてあげましょうね。今朝もおもらし、しちゃってるんでしょ? さ、お姉ちゃんにおむつを見せてちょうだいね」
つい1時間前に聞いたのとまったく同じ言葉とともに部屋に入ってきて、ベビーベッドの上から覗き込んだ姉に、ヒカリは無抵抗にうなずくのだった。
(続く)