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連載小説「女装強要妄想ノート」(33) (Pixiv Fanbox)

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4月第3週「パンツルックなら大丈夫だからと、外に連れ出される」   (3)  妹が玄関のドアを開け、続けて真弓も外に出る。 (玄関までなら、女子制服を着せられた時にも出たことがあるけど) (でも、あの時とは違って、今日は家の外へ――ほんの目と鼻の先と言っても、家の敷地を出て、外を歩かなくちゃいけないんだ……!)  ドキドキしながらポーチに出ると、視界が一気に開ける。陽光が降り注ぎ、微風が肌を撫でて、ヘアゴムで留めたおさげを揺らして―― 「わ、わぁっ!?」  ツインテールのままだったことにようやく気付いた真弓は、慌ててヘアゴムを外して髪をほどく。 「ど、どうしよう……あ、亜弓、シンプルなヘアゴム、持ってない?」 「あたしが持ってるわけないでしょ。どうせ美容室でほどいてもらうんだし、このままいけばいいじゃない」 「で、でも、下ろしたままじゃ、女の子だって思われちゃうよ……!」 「今さら何を言ってるのよ。男子制服を着てたって、女の子と間違われてるくせに。今はそんな格好なんだから、完全に女の子のふりをした方がバレないんじゃない?」 「うっ……でも、ご近所さんに見られたらまずいし……」 「さ、とにかく予約の時間までもうすぐだし、出かけるわよ、真弓ちゃん」 「う、うん」  ポーチから続くステップを踏んで門扉へ、そしてとうとう家の敷地を出て外の道路に降り立った真弓は、まるで始めて外の景色を見る子供のような表情で、見慣れたはずの住宅街を見回した。 「ご近所さんは……いないみたいね。ちぇ、残念」 「残念とか言わないでよ……」  ぼやきつつ、亜弓とともに美容室へと歩き出した真弓だったが、やはり落ち着かない。まるで小動物のように周囲をうかがい、物陰や曲がり角を見ると、誰か出てくるのではないかと身構えてしまう。 「くすくすっ、真弓ちゃん、怯えすぎ。堂々としてたほうが、逆にバレないもんだよ?」 「そ、そうはいうけど、やっぱり恥ずかしいんだって……!」  ぴったりしたパンツは、歩くだけでも股間のものが圧迫されて、思わず変な声を出しそうになってしまうのだ。 (あらかじめ射精したから勃起することはないけど、敏感になっちゃってる……!) (うう、早くお店の中に入っちゃいたい……!)  ほんの100メートルほどの距離を、真弓はあまりにも遠く感じていた。   * 「いらっしゃいませー。あら、亜弓ちゃんと……真弓くん?」  創業25年。外観も内装も年季の入った美容室で二人を出迎えたのは、まだ若い――20代後半の女性美容師だった。  化粧気はないものの彫りの深い美人で、栗色の髪をヘアクリップでまとめ、すっきりとした開襟シャツとデニムパンツ、「美容室 サキ」の店名が入った黒のエプロンがよく似合っていた。 「咲さん、こんにちは」 「こ、こんにちは。カットをお願いしに来たんですけど」 「あら、あら」  咲は驚いたように目を丸くした後、にっこりと笑い――爆弾を、投下した。 「真弓ちゃん、やっと女の子に変身する気になったのね」 「なっ……!? 女の子……!? しかも『やっと』って……!?」  声を裏返す真弓に、咲は苦笑して、 「だってそれ、どう見ても女児服じゃない。『Angelic Baby』っていえば、駅ビルにも入ってる有名なブランドでしょ? パンツもスニーカーも女児用だし」 「ううっ……で、でも、『やっと』ってどういう意味ですか……!?」 「だって真弓くん、あたしがふざけてどんどん長くしていっても、嫌がるどころかまんざらでもなさそうな感じだったんだもの。ツインテールにしましょうかとか、リボンつけましょうかとか言って揶揄っても、そんなに怒らなかったし」 「う……」 「だから私、わかってたんだ。ああ、真弓くん本当は、女の子っぽくなりたがってるんだ――って」 「う、ううっ……!」 「それに――商売柄わかっちゃうんだけど、ツインテールを結んでた後、まだ残ってるよ? なに? うちではもう、ツインテールにしてるの?」 「あ、あ……!」  一から十まで種明かしされて、まるで出先でズボンの前チャックが開いているのを指摘されたような恥ずかしさに、真弓は真っ赤になるのだった。   (続く)

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