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連載小説「女装強要妄想ノート」(32) (Pixiv Fanbox)

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4月第3週「パンツルックなら大丈夫だからと、外に連れ出される」   (2) 「ちょ、ちょっと待ってよ! 外出なんていきなり言われても、心の準備が――」 「あれ? 最初に説明しなかったっけ? このあと外出するから、間違っても勃起しないようにあらかじめオナニーしてねって」 「聞いてないよ! 女装で、外に出るなんて……!」 「大丈夫大丈夫。シンプルなシャツとパンツだし、女児用だってバレないって。髪も前みたいに後ろで結んであげるから」 「いや、どう考えてもばれるでしょ、これ……!」  パンツは細身のスキニーで、明るいイエロー。トップスはシンプルなTシャツとはいえ、ポップな色合いのロゴと細身のラインは女の子らしいし、まして知っている人には女児服ブランドだとばれてしまう。  けれど妹は兄の抗議を鼻で笑って、 「いいじゃん。あのノートにだってあったんだから、本当はお外にも出たい――ううん、連れ出されたいんでしょ?」 「うっ……!」  痛いところを突かれて、真弓は言葉に詰まる。  そもそも彼が女装している――いや、母親や妹の命令で「女装させられている」理由。  彼がオナニーのオカズとして、「こんな風に女装させられたい」という妄想を書き連ねた一冊のノートを、母親に見つかったためであり――そしてその「女装妄想ノート」の中には、今のシチュエーションに近似した妄想も書かれていた。 「パンツルックなら大丈夫だからと、女装で外に連れ出される」 「妹の友達のふりをして、女装外出させられる」  そう。女装で外に連れ出されるシチュエーションも、ちゃんと書かれていたのだった。 「本当はメイド服を着せた時や、小学校の制服をあげた時にも連れ出したかったんだけど、ママが止めたからあきらめたのよ。そう言うのはもっとゆっくりステップを踏もうねって。これでもちゃんと、真弓ちゃんに気を遣ってあげてるんだから」 「う……」  たしかに初めての女装外出が、ひらひらのコスプレメイド服や、女子小学生の制服というのは恥ずかしすぎる。  しかしパンツルックとはいえ、実際に女装させられて外に出るとなると物怖じしてしまう。勃起こそしていないものの、陰嚢がすくみ上って痛みを発していた。 「お姉ちゃんもついて行ってあげるから安心してちょうだい。というわけであたしの方も支度をしてくるから、真弓ちゃんは先に下に降りて、覚悟を決めておくようにね」 「うぅっ、はーい……」  もとはと言えば自分で蒔いた種である。育つとは思っていなかったからこそ好き放題にまいた種が、思わぬほど繁殖して大惨事になってしまった気分だ。ほとんどミントである。  おとなしく玄関に降りてしばらく待っていると、中学のセーラー服に着替えた亜弓が下りてきて、 「お待たせ。それじゃ、外に出る心の準備はできた?」 「う……ま、まだちょっと……っていうか、どこまでいくの?」 「そんなに緊張しなくていいのに。角の美容室まで行くだけなんだから、見られる心配もほとんどないんだし」 「角の――って、すぐそこの?」  佐々木家から100メートルほどのところにある、個人経営の美容室。家族でよくお世話になっているお店だ。確かにあそこならば、よほど間が悪くない限りご近所さんに見られることはないだろうが、 「うん。予約もしてあるから、他のお客さんに見られる心配もないわよ」 「それで時間がどうこう言ってたのか……でも、美容師さんに見られたら……」 「家族ぐるみのお付き合いなんだから、言いふらしたりしないって」 「で、でも新しいお客さんが来たら――」  次々に「でも」を口にする「妹」に、亜弓はついに業を煮やして、 「もう、真弓ちゃんったら心配性なんだから。案ずるより産むがやすし、虎穴に入らずんば虎子を得ずっていうでしょ?」 「危険なのかそうじゃないのか、どっちなんだよぉ!」  騒ぎを聞きつけた母親もリビングから顔を出して、 「あら、今日はついにお出かけなのね。うんうん、パンツルックなら、真弓ちゃんも恥ずかしくないでしょ?」 「い、いや、恥ずかしいから! どう見ても女の子の服だし……!」  なおも言い募る真弓に、母親は真面目な顔になって、 「いい? 真弓。人生って言うのはね、何事も経験と挑戦なの。どんなに大変で面倒に見えても、一つ一つこなしてゆくことで、あなたの肥やしになっていって、見える世界が広がっていくのよ」 「母さん……」  真弓は母親をじっと見つめ返して、 「それ、いま関係ある?」 「ええ。この経験を生かして、次はスカートで外出したり、公園で遊んだり――ほら、世界が広がるでしょ?」 「いってることは判るけど絶対何か違う気がする……!」  思わず頭を抱える真弓に、早くも靴を履き終えていた亜弓があきれたように、 「ほら、小難しいこと言ってないで、出かけるわよ」 「う、うん……」  こうなっては、もはや覚悟を決めるよりほかにない。真弓も用意されたスニーカー――妹のおさがりの、水色の女児用スニーカーを履いて、 「じゃ、じゃあ――行ってきます」   (続く)

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