「あねママ」(6) (Pixiv Fanbox)
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(6)
「うふふっ、念のために買っておいてよかったわ。ささ、ヒカリちゃん。ママがよだれかけを付けてあげまちゅから、そしたらミルクにちまちょうねー」
「う……うんっ……」
よだれかけを広げた姉の手が、首の左右から後ろに回り、マジックテープを止める。顔はまるでキスする直前のように近く、ヒカリは姉相手とは言えドギマギしてしまう。
しかし――
「これでよし、と。どう? これならよだれがこぼれても安心でしょ?」
「うっ……!」
姉の体が離れ、ギンガムチェックのよだれかけが自分の胸元に掛かっているのを見下ろしたとたん、そんな背徳的な気分はたちまち雲散霧消してしまった。
(高校生にもなって、よだれかけを付けるだなんて――しかもこんなに可愛い、女の子がつけるようなよだれかけを……!)
「さぁ、それじゃあ今度こそ、ミルクを飲ませてあげまちゅからねー。ほら、お姉ちゃんが背中を支えていてあげるから、ヒカリちゃんはまっすぐ前を向いていてちょうだいね」
「う……はぁい……」
まっすぐ前を見ると、そこにあるのは大きな姿見。ベビー服だけではなくよだれかけまでつけた自分の姿を正面から直視して固まっていると、その口元に哺乳瓶の吸い口が宛がわれた。
「はーい、ヒカリちゃんの大好きな、おっぱいの時間でちゅよ~。 ママが支えていてあげるから、お口をあーんしてちょうだいね~」
「んっ……!」
アカリはウッキウキでベビープレイを続けるが、ヒカリはもはや恥ずかしいなどという次元ではなく、全身が発火するかと思うほどに熱くなってくる。
それでも、姉を振り払ってプレイを中断させることはできず――
「あ、あーん……」
「くすっ……はーい、よくできました。ミルクをちゅっちゅってしてちょうだいね~」
開いた口に挿入される、哺乳瓶のとがった吸い口。シリコンの硬さは、先ほどまで口の中に入っていたおしゃぶりとそっくりで――口中の空隙へとするりと潜り込むと、奇妙な安心感のようなものさえ感じてしまい、
(ち、違う……! これは、姉ちゃんにお願いされたベビープレイの、一環なんだ……!)
「ん……! ちゅ、ちゅっ……」
みずからの心の動きをごまかすように、ヒカリは口の中にあるものを吸う。
とうぜんアカリは大喜びで、
「まぁ、そんなに一生懸命ちゅっちゅしてくれるなんて! うふふっ、ヒカリちゃんはおっぱいが大好きな赤ちゃんなのね。いいわよ、遠慮しないで、全部飲んでちょうだいね」
「ん……ちゅ、ちゅうっ、ちゅっ……!」
舌をあてがい、頬をすぼめて哺乳瓶からミルクを吸い上げながら、ヒカリはその作業の意外な難しさに驚いていた。
(けっこう口が疲れるし、息継ぎもしないと苦しいし、哺乳瓶の気圧が下がると吸いにくくなるしで、リズムやペースを考えないといけないから、大変……!)
ちゅっ、ちゅっ――哺乳瓶を吸う音の合間に、荒い息遣いが混じる。その音はまるでディープキスを交わしているかのように淫靡で、
「はぁ、はぁっ……ちゅ、ちゅっ……」
「うふっ、うふふっ……」
吸っているヒカリも、吸わせているアカリも、次第に頬が上気して、奇妙な熱気が室内に籠り始める。
しかもヒカリの正面にある鏡には、自分――無心に哺乳瓶をむさぼる大きな大きな女児ベビーになり果てたおのれの姿が映っていて、
「んっ……!」
ふいに、紙おむつに包まれている下半身の内側で、何かが蠢く気配がした。
(ま、まずい、これ――勃起、しそうになってる……!)
(なんで……!? 別に、エロいシチュエーションでも何でもない、姉ちゃんに赤ちゃん扱いされてる、恥ずかしいだけの状況のはずなのに……!)
(とにかく、このままじゃヤバい気がする……!)
ヒカリの脳が、危険信号を発する。彼は哺乳瓶から口を離し、
「ね、姉ちゃん、もう、いいでしょ……?」
「あら、もういいの? ふふっ、ヒカリちゃんったら、体は大きいのに意外と小食なのね」
揶揄うように言いながらも、アカリは意外なほど素直に哺乳瓶をどけてくれる。
「ありがとね、ヒカリ。赤ちゃんになってくれだなんて、お姉ちゃんの無茶なお願いにこたえてくれて」
「う、うん。どういたしまして」
「うふふっ、それじゃあ、これでおしまいにしましょうか」
姉の言葉に、ヒカリは赤面しつつ安堵していたが――
「でも――せっかくだし、最後にお礼をしてあげる」
その一言とともに――ヒカリの目の前に、ブラジャーに包まれてもいない姉の乳房が露わになっていた。
(続く)