連載小説「女装強要妄想ノート」(28) (Pixiv Fanbox)
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4月第2週「女児用入学スーツを着せられる」
(3)
最後にボレロの前ホックを留め、ブラウスの襟を出して整えれば――
「……………………」
女児用の、入学スーツ。それもピンクの千鳥格子柄ジャンパースカートに、グレーのボレロという可愛らしいアンサンブルを着た自分の姿を、真弓は声もなく見下ろしていた。
思い出すのは、帰りに見かけた、入学式帰りの新入生――特に間近でその服装を見て、言葉を交わした成香の姿。
(成香ちゃんが着てたスーツも可愛かったけど――オレのほうが、もっと可愛いスーツを着せられちゃってるんだ……ほんとは、男子高校生、それも2年生の、オレが――!)
羞恥とも喜悦ともつかぬ戦慄に身震いしながら、仕上げに取り掛かる。
成香が背負っていたのとは色こそ違うが、女子用の赤いランドセルを背負う。教科書の詰まったランドセルの重みが、ベルトを通じて肩に食い込んで、いっそう女の子らしいアクセントになっていた。
ふだんであれば、ここで満足して終わりにしてしまう真弓だったが、
(髪も綺麗にしよう……恥ずかしいけど、せっかくのスーツなんだし……)
さらに髪をほどいてブラシをかけ、「お姉ちゃん」にしてもらった時のように、リボンのついたヘアゴムを結ぶ。
(そういえば、自分で結ぶのは初めてかも……)
(今までは恥ずかしくて、ついつい髪は後ろで結んだだけのまま――亜弓に結んでもらっていたんだけど、自分からこうやって結ぶなんて――女児用スーツで、テンション上がっちゃってるのかな……)
(男子高校生のオレが、女児用スーツで高揚するなんて、変な話だけど……)
自分が自分でなくなってゆく感覚。最初に女児服を着せられた時から感じていた感覚が、どんどん強くなってゆく。そしてそれは外見だけではなく、彼の心にまで及んでいて――
「…………」
髪を結んで整えた真弓は、黄色い通学帽子をかぶると、鏡の前に向かい、自分の姿を正面から確認する。
そこには――女子小学生が、立っていた。
「あ……!」
やや背が高いものの、とても自分とは思えない少女。これならば本当に、新入生の女児たちに交じっても「大きい子がいるのね」で済まされてしまうだろう。少なくとも、高校で男子たちよりは、成香たち女子小学生に紛れたほうがずっと目立たないはずだ。
(成香ちゃんたちと一緒に、女子小学生に――)
考えるだけでもさらに先走りを漏らし、ついにショーツの中でむくむくと起き上がりそうになって――
「真弓ちゃん! お姉ちゃんがお手伝いに――」
突然ドアが開き、乱入してきた妹に、真弓はびっくりして振り返った。
「ちょ、ちょっと、亜弓――お姉ちゃん! 勝手に入って――来ないでよ!」
「おっ、かっわいー! ちゃんと自分で髪も結んでるし、言葉遣いも妹らしくなってるじゃん。くすっ、女児スーツを着て、すっかり女の子気分になっちゃった?」
「う……そ、それは、そうだけど……」
改めて口に出して言われると恥ずかしい。真弓がうつむいて赤くなっていると、亜弓はいっそう楽しげになって、
「うんうん。真弓ちゃんがちゃんと成長できてて、お姉ちゃん、嬉しいわ」
「むしろ退行だと思うんだけどなぁ……」
「妹」の抗議などどこ吹く風、亜弓はニヤニヤ笑っていたが、
「――それじゃあ、佐々木真弓ちゃん。これからお姉ちゃんが案内してあげるから、おててをつなぎましょうね」
「えっ……? それって、入学式の――」
唐突に始まったロールプレイに面食らいつつも、真弓はますます顔を赤くする。
「うん。入学式で在校生に案内してもらう、新一年生っぽいでしょ? さ、お姉ちゃんと一緒に来てちょうだい」
「う――うん……」
中等部のセーラー服を着た「お姉ちゃん」に手を引かれ、部屋を出て廊下へ――たったそれだけでも、どんどん「妹」感が増してゆく。
(つい数時間前に、在校生として、高校の入学式に出たばかりなのに――ぼくの方が1年生として、中等部の「お姉ちゃん」に手を引かれてる……)
「ふふっ、せっかくだしこのままお外に出て、近所の小学校で記念撮影させてもらう?」
「さ、さすがにそれは無理だって――! こんな格好で、外に出て、しかも小学校の前で撮影だなんて……!」
「大丈夫だって。みんな新1年生だとしか思わないから。ま、学校の先生に見つかったら、説明しなくちゃいけないだろうけど。本当は高校2年生の男子だけど、女子小学生になりたくて、新入生ごっこしに来ました――って」
「っ……!」
妹の言葉にその場面を想像してしまい、許容量以上の恥ずかしさに襲われて、激しく痛む陰嚢に、真弓は思わず前かがみになってスカートの前を押さえた。
しかしそのせいで――スカートにくっきりと雄の証が、浮かび上がってしまう。