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「あねママ」(4) (Pixiv Fanbox)

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  (4)  すぐに両腕と顔が出てほっとしたのもつかの間、見下ろせば胸元魔でベビー服を着せられた自分の体。丸首の襟周りには白いレース、肩はふんわりと膨らんだパフスリーブに包まれていて、女の子らしいデザインと、肩口に当たる独特の着心地に顔が熱くなってくる。 「もう、腕を下ろしても大丈夫よ。ふふっ、可愛いでしょ?」 「う、うん。自分が着せられるんでなければ……」  再び座りこんだアカリに、お腹までロンパースを下ろされると、そこには白いハートと「I♥MOMMY」の文字。いかにも赤ちゃんらしいフレーズに、 (このママって、今はつまり、姉ちゃんのことだよな――ううっ、恥ずかしすぎる……!) 「さ、ヒカリちゃん。お股のボタンも留めてあげるから、タッチしてちょうだい。それとも赤ちゃんらしく、寝転がったほうがいいかな?」 「う……た、立つから……」  どちらにしても恥ずかしいのだが、「赤ちゃんらしく」と言われると抵抗したくなる。ヒカリが立ち上がると、 「うんうん、いい子いい子」  その前後に垂れている逆三角形の裾をアカリの手がつまんで、股間でスナップボタンを留めていった。  おかげでおむつのベビー柄は隠れたのだが――またスナップの並んだロンパースに包まれている恥ずかしさには変わりなく、さらにレースのついたお尻が、これはこれで赤ちゃんじみている。お尻に手をまわして触ると、チクチクふわふわとした独特の手触りに、 (あ、ああ……!)  見るまでもなく自分のお尻がどうなっているか理解できて、ヒカリは羞恥に身もだえた。  しかしアカリはご満悦で、 「わぁっ、可愛い! ほんとに女の子の赤ちゃんみたい――ってわけにはいかないけど、うん、おっきい赤ちゃんって感じで、最高に可愛いわよ!」 「うっ……こんなに嬉しくない褒め言葉は初めてだ……!」 「むー、素直に喜べば可愛いのに。そうだ、髪もちょっといじってあげるから、こっちにいらっしゃい」 「もう、好きにして……」  すっかり抵抗する気力もなく、ヒカリは姉が髪を弄るに任せる。ブラシをかけたあと、ところどころハサミを入れて、 「――これでよし、と。ほら、自分でも見てみたら?」 「えっ……いや、それは……!」  さすがに女児ベビー服を着た自分の姿を直視する勇気はない。断ろうとするヒカリだったが、しかし口を開きかけた時にはもう、彼の前に大きな姿見が置かれていた。 「あ、ああ……!」  淡いピンクのベビーロンパースに包まれた、自分の姿。スナップボタンの並んだ下半身はやや膨らんで、おむつに包まれていることを示している。  しかし中身は170センチの男。もともと細身で体毛も薄いため、見苦しくはないとはいえ、とうぜん違和感はぬぐえない。特に首から上は、化粧もしていない男子の顔そのままなのだ。ちょっと童顔で、女顔で、もともと長めだったサラサラの髪も、毛先をそろえてあるからと言って―― (って、髪形まで女の子っぽくされてるし……!) 「うーん、おむつのボリューム感がもうちょっとほしいわね。いっそもっとたくさん当ててモコモコに……」 「しなくっていいからね! も、もう、これで満足したでしょ? 着替えていい?」 「だめだめ、まだよ。はい、これ」  アカリがそう言ってパッケージから取り出し、弟の口元に突き付けたのは――大振りの、ピンクのおしゃぶり。 「赤ちゃんなんだから、おしゃぶりも咥えてもらわないと。ほーら、ヒカリちゃんのだいちゅきな、おしゃぶりでちゅよー。あーんしてちょうだーいねー」 「う、うううっ……あ、あーん……」 「はい、よくできまちたねー。いいこいいこー」  口の中に入ってくる、シリコンの乳首。意外なほどの大きさに、口内の異物感は意外なほど強く、唇の周りにも誤飲防止のプラスチックが当たる。 さらに赤ちゃん言葉で話しかけられ、よしよしと頭を撫でられたものだから―― 「ふふっ、ヒカリったら、顔を真っ赤にしちゃって。本当に赤ちゃんね」 「うっ、んうぅ……」  反論したくとも、口がふさがれているのでそれもできない。屈辱におしゃぶりを噛みしめ、さらなる屈辱に悶えていると、 「じゃあ、ママはちょっとミルクの用意をしてくるから、ヒカリはベッドに寝転がっててちょうだい。それとも、一緒にリビングに来る?」 「んんーっ!」  ヒカリは全力で首を横に振る。リビングに行ったらまず間違いなく母親に見られるし、廊下や階段の開いた窓から、ご近所さんに見られてもおかしくない。 「ふふっ、じゃあこの部屋でおとなしくしててちょうだいね」  姉はそう言って、部屋を出ていった。「赤ちゃん」のミルクを、用意するために。   (続く)

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