連載小説「女装強要妄想ノート」(23) (Pixiv Fanbox)
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4月第1週「?」
(3)
リビングに降りると、母親はすでに書類を広げ、ボールペンを用意して待っていた。
「ふふっ、いいじゃない。ちょっと背が高いけど、これなら問題なく女子小学生として通えそうね。じゃあさっそく、こっちの書類に書き込んじゃってちょうだい」
「うん……」
女子小学校に編入されるための書類を前にすると、先ほどまでは希薄だった実感が、じわじわと形になってくる。
(オレ、女子小学生になるんだ――)
ダイニングテーブルにつき、書類に記入する。
書類の形式としては「編入届」で、氏名、生年月日、住所といった基本的な情報のほかに、いま在籍している高等部のクラスや学籍番号と、編入先――つまり「学園附属女子小学校」を記入しなければならない。
「編入先は、附属、女子、小学校……」
すべての項目を記入し終え、真弓は大きくため息をつく。
小学校のセーラー服を着て、髪形も女の子のようにされた状態で、編入書類を書く。高等部に通えなくなる――つまりは高校の知り合いに会えなくなるのは残念だったが、それ以上に、女子小学生になることへの胸の高鳴りの方が大きかった。
「さて、真弓ちゃん」
母親は不意に改まった様子で、まっすぐに真弓を見つめる。
「今まではあいまいに済ませてきたけど、今年度から女子小学生になったんだから、これを機会にちゃんとしないとね」
「な、何のこと……?」
「呼び方よ。先週、男の子を『卒業』するって言ったのに、まだ自分のことを『オレ』って呼んでるし、ママと亜弓にも今まで通りじゃない。ここできちんとしないと、ね」
「あ……う、うん……」
いよいよ、誤魔化せなくなったか――真弓は硬い表情で覚悟を決める。が、
「一人称は……そうね。小学1年生なんだし、『真弓は』って、自分の名前で呼ぶのが自然かしら?」
「まっ――さ、さすがにそれは、ちょっと恥ずかしいんだけど……!」
まさかの名前呼びに、真っ赤になって首を振ると、ツインテールが大きく揺れた。
母親は残念そうに、
「そう? じゃあ、この前みたいに『あたし』呼びで、試しに――そうね、『あたしは、この春から女子小学生になる、佐々木真弓です。あたしは、ママの娘で、亜弓お姉ちゃんの妹です』って、言ってみてごらんなさい」
「う……うん……」
期待のまなざしを向ける母親と妹――「お姉ちゃん」の前で、真弓はその言葉を口にする。
「あ、あたし、は、この春から、女子、しょ、小学生になる、佐々木、真弓です。あ、あたしは、マ、ママの、娘で、亜弓――お姉ちゃんの、い、妹、です……」
「ふふっ、よく言えました」
「うんうん、ちゃんと言えてえらいわよ、真弓ちゃん」
隣の亜弓が手を伸ばして、「妹」の頭を撫でる。
自分のことを「あたし」と呼び、母親を「ママ」と呼び、妹を「お姉ちゃん」と呼び――「女子小学生です」と名乗ったことで、褒められ、よしよしされる。男子高校生として、兄として、あまりにも気恥ずかしかったが――それは決して悪い気分ではなかった。
しかし。
「じゃあ、女子小学生らしくなったところで、午後にでも書類を届けに小学校に行きましょうか。その後で、ご近所さんに改めてご挨拶をしましょう」
「も、もう……!? っていうか、ご近所さんに挨拶って、そこまでしなくても……!」
「だめよ、こういうのはちゃんとしないと。急にうちに女子小学生が増えたたら、ご近所さんも戸惑うでしょうし」
「それはそうだろうけど――でも……」
膝の上でこぶしを握ろうとして、スカートの裾をつかんでしまう。そんな細かなところにまで、女子小学生の制服を着ていることを思い知らされて、ショーツの中のものがますます猛ってしまい、いまにもスカートを押し上げそうなほどだった。
(は、早く2階に行って、オナニーしたい……!)
亜弓はくすくす笑って、
「ほかにもやらなくちゃいけないことはたくさんあるわね。あたしのおさがりのあれこれも、ちゃんと名前を書き替えたほうがいいんじゃない?」
「う、うん……じゃあ、2階に行って、学用品の名前、書き替えてくる」
渡りに船とばかり、真弓は妹の言葉に便乗して席を立つ。午後から学校に行って、ご近所にも挨拶に行かなければならないとなると――その前に抜いておかないと、勃起してしまったら大変だ。
(改めて考えると、女装で本格的に外出することに……)
階段をのぼり、部屋に戻ってベッドに腰掛ける。いつものオナニースタイルだが、女児制服を着てとなると汚さないように注意しなければ――後ろの裾をお尻の後ろに流し、前側を大きくめくりあげて、猛々しい勃起の輪郭が浮かび上がったショーツを、丸出しにした時だった。
「あっ、やっぱり真弓ちゃん、オナニーしようとしてる。学用品の名前、書き替えるんじゃなかったの?」
「あ、亜弓――お姉ちゃん……これは、その……」
当然のよううに入ってきた亜弓に見られて、真弓は慌ててスカートを下ろそうとするが、
「あっ、そのままでいいわよ。真弓ちゃんにちょっとしたお願いがあってきただけだから。お姉ちゃんのお願い、可愛い妹の真弓ちゃんなら聞いてくれるよね?」
「お願い――って、な、なに……?」
亜弓の態度に嫌な予感を覚えながらも、真弓が恐る恐る訊き返すと、
「真弓ちゃん。あたしの前で、オナニーを実演してちょうだい」
(続く)