連載小説「女装強要妄想ノート」(3) (Pixiv Fanbox)
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(3)
「まずは、服を脱がないと――」
ひとまず女児服はベッドに置き、真弓はTシャツとチノパン、ソックスを脱いで、グレーのトランクス一枚になる。
脱いでも相変わらず、華奢な体である。余計な贅肉もついていない代わり、筋肉もほとんどなく、体毛も薄い。およそ高校生とは思えず、女子小学生と言われてもおかしくないくらいだ。
この体であれば、母親が用意した140サイズの女児服であっても、余裕をもって着ることができるだろう。問題は――
「うう、じっさいに着るとなると、やっぱり恥ずかしい……!」
毎日のように女児服を着せられることを――それこそいま置かれている状況よりはるかにハードなシチュエーションを考えて妄想に耽っていた真弓だったが、じっさいに目の前に用意されて着るとなると、恥ずかしさは想像以上であった。
柔らかな、オフホワイトのタートルネックカットソー。しっかりとした、赤色のジャンパースカート。レースがついた、白ピンクのボーダー柄ニーソックス。
ベッドに並べた女児服は、どれもこれも可愛くて、見ているだけでドキドキしてきて――そのせいで、部屋のドアの外に立つ気配には、気づかなかった。
「兄ちゃん、入るねー」
「わっ!? な、なんだよ、亜弓!?」
とつぜん入ってきた妹を、真弓はじろりと睨む。
「部屋に入るならノックをしてからにってしろって、いつも――」
「あははっ、パンツ一枚で女児服を見てる兄ちゃんに言われても、怖くもなんともないねー。それに、せっかくいいものを持ってきてあげたんだから、硬いこと言わないでよ」
「いいもの……?」
「うん。ほら、女の子の服を着るなら、これも必要でしょ?」
そう言って亜弓が投げてよこしたのは――
「し、下着!? しかもこれ、女の子用の……!」
「うん。あたしがむかし穿いてたやつ。ゴム入りとか、もう子供っぽすぎてあたしは穿かないから、兄ちゃんにあげる」
「自分が穿かないのを、人に押し付けるなよ……っていうか、下着までは――」
「ごまかしてもムダムダ。前にあたしがいらない下着を捨てるって言った時に、物欲しそうな目で見てたくせに」
「き、気づいてたのか……!」
「へへっ、実はあの時はよくわからなかったんだけどね。兄ちゃん、そういう子供っぽいのが好きなんでしょ?」
「うぅっ……そうだけど……!」
見透かされている。綿混のインゴムショーツとセットのキャミソールはそれぞれの前側についた小さなリボンと、キャミソールの紐部分が淡いピンクでいかにも女の子らしく、まさに真弓の好みであった。
亜弓はにんまりと笑って、
「あははっ、やっぱりねー! じゃ、優しい妹を持ったことに感謝しながら穿くといいわ」
「どこが優しいんだよ、どこが……」
「えー? 『あたしの下着をエッチな目で見るなんて兄ちゃんの変態! もう一生、口きいてあげない!』なんて言われるより、ずっとマシでしょ?」
「それは……そう、だけど……」
「んっふふー、じゃ、着替えたところを楽しみにしてるね」
兄が口ごもったところで、亜弓は勝負あったとばかりにニンマリ笑って、部屋を出ていった。
「はぁ……たしかに、嫌われるよりはマシだけどさ……逆にノリノリなのも、恥ずかしいんだって……」
真弓は溜息をつくと、しばしの逡巡ののちに観念して、
「……ええい、もう、どうにでもなれ――」
トランクスを脱いで、女児用の下着に着替える。
体をぴったりと包む、コットンの柔らかな肌触り。キャミソールの紐が、肩に当たる違和感。そしてショーツの、ゴムの締め付け。
どれもこれも、本来なら男子である真弓が味わうことのないもので――
(ううっ、男のオレが、恥ずかしいっ……! うう、早く、隠したい……!)
(でも隠すためには、これを着るしか――)
ベッドに並べられた女児服セットアップ。
真弓は覚悟を決めて、まずはタートルネックカットソーから身に着け始めた。
前後を確認して頭からかぶり、両手を出す。首元や袖口の折り返しについたピンクのリボンと、胸元にあしらわれたレースに、
(着心地自体は、タートルネックで変わらないはずなのに……リボンやレースがついてるだけで、すごくドキドキする……!)
(でも本命は、こっちのジャンパースカート……!)
背中のコンシールファスナーを下ろすと、肩の部分をもって広げて見せる。内側にはサテンの裏地がついていて、艶やかな光沢が、まるで真弓を誘っているかのようであった。
(続く)