短編「妹の花嫁になった日」(7) (Pixiv Fanbox)
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(7)
ひとしきり笑ったところで、
「さてふたりとも、頼んでおいたもの、持ってきてくれた?」
「あ、ああ。でもこれ、なんにするんだ? いらない服で可愛いのがあったら持って来いっていうから、これにしたんだけど」
ミライは首をかしげながら、持ってきていたリュックを膝の上に載せ、中身を取り出す。
「まぁ、可愛らしいこと」
カナミが声を上げたのも、無理はない。
それは新妻が着るようなフリルエプロンが一体になった、サロペットスカートのような構造の女児服――いわゆるエプロンドレスだった。色は赤で、胸元にはうさぎの顔、大きなフリルのついた肩紐は、背中でクロスするデザインになっている。下は大きく広がるサーキュラースカートで、メイド服のような女児服のような、可愛らしさを兼ね備えていた。
サイズは140と、真佑が着られるぎりぎりのサイズ。
「ふふ、どうするかなんて、決まってるじゃありませんか。これからその服を、真佑お兄様に着せて差し上げるのですよ」
カナミが言い、真里が肯定するように笑うと、ミライは意表を突かれたように目を丸くしてから爆笑した。
「ハッハッハッ! そりゃいいな! あたしよりよっぽど似合いそうだ!」
「でしょ? ほら、マユちゃんも気に入ってくれたみたいよ」
誘導され、ふたりは真里が指さす先――いまだにスカートをめくりあげたままの、真佑のパンツを見る。高々と張られたテントの先端には、黒いシミが浮かびだしていた。
先走りを少女たちに笑われて、真佑はいっそう、泣きそうな顔になる。
(うぅ、なんでオレ、こんな状況でも勃起が止まらないんだよぉ……!)
妹の女児服を着ている姿を、妹との友達に見られ、その理由まで知られたあげく、自らの手でスカートをめくりあげて彼女たちに下着を見せ、さらには今から着せられる新しい女児服を見せられて――なのにショーツの下で、勃起が止まらない。
「ささ、真佑お兄様。あきらめて脱いでくださいませ。それともわたくしがお脱がせいたしましょうか?」
「っ……い、いえ、自分で、脱ぎます……」
脱ぐのも恥ずかしいが、脱がされるのはもっと恥ずかしい。
カナミの申し出を辞退して、真佑は自らの手で、女児服を脱ぎ始めた。
たくし上げていたスカートを下ろして、ガールズトレーナーを脱ぐ。下から現れたのは、胸元にブランドロゴが入った丸襟のブラウスだ。
「ちょうどいいから、ブラウスはそのまま着て、その上からエプロンドレスを着なさい」
「は、はい……」
妹の命令に、真佑は顔を引きつらせながら従う。ミライの手からエプロンドレスを受け取ると、腰の後ろのリボンをほどき、ファスナーを下ろして穿く。肩紐をかけてそのフリルを整え、腰のファスナーを上げなおしたら、最後に「真里お姉ちゃん」にお願いして、リボンを結びなおしてもらい――
「ふふ、とても可愛らしいですわ」
「だな! あたしなんかより、よっぽど似合ってるくらいだぜ! なぁ、真里の兄ちゃんって、ほんとに高校生なんだよな?」
「ククッ、いまはあたしの妹だけどね。でも、ちょっと短すぎたかな?」
しかしとうぜん丈が短く、太ももはほとんど丸出し。ただでさえ女の子っぽすぎるエプロンドレスが、いっそう恥ずかしいことになっている。
「そのようですわね。ですが、真佑お兄様はまんざらでもなさそうですわよ」
「アハハッ、だな!」
早くもエプロンドレスの前にできた膨らみが上下に揺れるのを見て、少女たちが笑いさざめいた。やがてカナミが、
「真里さんのブラウスと、ミライさんのジャンパースカート……わたくしだけ何もなしというのは、少し寂しいですわね。なら、こうしましょうか」
そう言って、穿いていたソックスを脱ぐ。立ち上がって白いレースのついたショートソックスを真佑に渡し、
「真佑お兄様。良ければわたくしの靴下、履いてくださいませ」
「う――うん。ありがとう、カナミお姉ちゃん……」
この状況で「お兄様」と言われることに、別種の羞恥を掻き立てられながらも、真佑は言うとおりにソックスを履き替える。確かにこのエプロンドレスには、白いソックスのほうが似合うだろう――などと、のんきなことを考えていると、
「ほら、マユちゃん。可愛いお洋服を着せてもらったんだから、ちゃんと二人に、お礼を言いなさい」
「は、はい……ミライお姉ちゃん、こんな可愛い服を、真佑に着せてくれて、ありがとうございました。カナミお姉ちゃんも、下着をくれて、ありがとうございます」
真佑が死にたいほどの恥ずかしさに震えながら答えると、少女たちはさらに楽しそうに笑うのだった。
(続く)