短編「妹の花嫁になった日」(6) (Pixiv Fanbox)
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(6)
「ミライお姉ちゃん、カナミお姉ちゃん、いらっしゃいませ。真里お姉ちゃんのお部屋に、ご案内いたします」
三田村真佑がそう言って出迎えると、ふたりの少女は目を見開いて絶句した。
耳に痛いほどの沈黙が、三田村家の玄関に満ちる。
無理もない。週末に友達の家に遊びに来たら、その兄――男子高校生である真佑が、女児服を着て出迎えたのだから。しかもトップスはパステルブルーのガールズトレーナーから、下に重ねたブラウスの丸襟をのぞかせ、ボトムスはピンクのティアードスカート、足元すら水色にピンクのイチゴ柄のフリル付きハイソックスという、女子小学生ですら滅多にしないような可愛らしいファッションだ。髪形さえも、女の子らしく切りそろえている。
やがて背の高いショートカットの少女が、困惑気味に尋ねる。
「えっと……真里のお兄さん、だよな……? なんかの罰ゲームか?」
「そ、それは……2階で、真里お姉ちゃんに、説明してもらって……」
「ふふっ、よくお似合いですよ、真佑お兄さま」
もう一人――背の低いゴスロリ少女はしっとりと笑って、
「では、案内してくださいね」
「か、かしこまりました。どうぞ……」
真佑は赤くなりながら、ふたりを2階の「真里お姉ちゃん」の部屋に案内した。
その後、真佑は3人分の飲み物を用意して、再び真里の部屋のドアをノックする。
「真里お姉ちゃん、飲み物、持ってきました」
「はいはーい、どうぞ入って」
ドアを開けると、部屋の中央に置かれたテーブルを囲む3人の少女の視線が、ねっとりと絡みつく。先ほどのふたり――真里の友達ふたりも、今は驚きではなく好奇と揶揄の視線を向けていた。
3人の前に持ってきた飲み物を置くと、真里に「そこに座りなさい」と言われて、テーブルの下座を囲む形になる。
「ふたりにも、事情は説明したわ。マユちゃんが何をして、どういう罰を受けてるのか、ね」
「……うん」
「でもふたりとも、マユちゃんの口から直接聞きたいんだって。だからマユちゃん、自分の口で行ってごらんなさい。何をして、どうして女の子の格好をしてるのかを」
「う、うん、わかった……」
嬲られている。わかっていながらも、「真里お姉ちゃん」には逆らうことができない。
「み、三田村、真佑、です。み、3日前の夜に、妹の、下着で、オ――オナニーした、罰として、真里お姉ちゃんの、妹として、生活することになりました……このお洋服は、真里お姉ちゃんのおさがりを、真里お姉ちゃんに選んでもらって、着ています……」
「へぇー……」
右手のショートカット少女――ミライが、おかしそうに言う。
男であればさぞイケメンで言われたであろう凛々しい顔立ちに、獅子のように逆立った茶髪。身長は真佑とほとんど変わらず、筋肉がついている分、体重は彼よりもありそうだ。白と水色のボーダー柄ポロシャツに、七分丈パンツを穿いていた。
「まぁ、まぁ」
左手の黒髪少女――カナミも、口元を上品に押さえて笑う。
3人の中で一番小柄で、お人形さんのように可愛らしい少女だ。腰まで届く黒髪を切りそろえた古風な髪形がよく似合っている。こちらは純白のピンタックブラウスに、ワインレッドのハイウエストスカート、黒のカーディガンのセットを着ていた。
「でも、信じられませんわね。真佑お兄さまが、そんな変態でいらしたなんて」
「ふふーん、カナミは信じられない? だったら――マユちゃん」
「な、なぁに、真里お姉ちゃん」
「スカートをめくって、ふたりに見てもらいなさい。マユちゃんがどんなに変態なのか」
「っ……は、はい……」
真佑は泣きそうになりながらも、立ち上がって、自分の手でスカートをめくる。露わになった下着――真里のお気に入りだった、黄色いギンガムチェックとサクランボ柄のショーツと、そこに高々と張られたテントを見て、少女たちもようやく納得したようにうなずいた。
「ハハハッ、なんだよ真里。お前の兄ちゃん、真面目な優等生どころか、とんでもないド変態だなぁ!」
「ふふ、真里さんも、なかなかいい趣味をしてらっしゃいますね」
3人の少女たちの笑い声に、真佑はじっと唇を噛んで、たくし上げたスカートの裾を握りしめる。
(続く)