SS「悪夢の入学式」(5) (Pixiv Fanbox)
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(5)
校門前での写真撮影の後、俺は在校生に花飾りをつけてもらい、校内へと案内された。
「ご入学、おめでとうございます!」
花をつけてくれたのは、おそらく5年生くらいだと思われる少女。サイズの小さい女児用スーツを無理やり着込んだパンツ丸出しの変態男としか思えない俺の姿に「うわぁ……」と言いたげな表情を浮かべていたが、それでも他の新1年生にするように花飾りをつけ、俺の手を引いて校内へと案内してくれた。少女たちの掲げる花輪の下をぎりぎりでくぐって校舎に入り、2階にある1年生の教室に通され、ここで待つように言われて――俺は教室の中央にある席に着いた。
1年生用の小さな椅子は、体重をかけたら壊れてしまうのではないかと思うほどだったが、何よりつらいのは周囲の視線だった。教室にいる40人ほどの新一年生たち。そして背後に居並ぶ保護者たちの、あからさまに場違いなものを見る目が容赦なく突き刺さってくる。今さらながら不思議なことに、クラスメイトは女児しかいなかったが、いまの「俺」は疑問を感じることもなかった。
こんな状況でも、俺のチンコはガチガチに勃起して、ついにローライズ気味だった女児用ショーツから、竿が大きく露出してしまう。ついさっき、校門前で射精したばかりだっていうのに。
たちまち隣の少女たちがそれを見つけ、
「お兄ちゃん、おちんちんでてるー!」
「おちんちん、おっきー!」
「ほんとだー! おちんちん、おっきくなってるー!」
他の子たちも立ち上がって身を乗り出しては、ショーツから飛び出したペニスを覗き込んだ。
どう考えても通報されるこの状況で、俺は――
「えへへ……可愛いスーツ着てたら、おちんちん、おっきくなっちゃった」
誤魔化すように笑うばかりで、逃げるどころか、勃起を隠そうともしない。
そこへ先生が入ってきて、騒ぎを聞きつける。
「はいみんな、初めまして――って、あら、どうしたの、みんな?」
「あのね! お兄ちゃんのおちんちんが、おっきくなっちゃってるのー!」
「あら、大変ね」
先生は何事もないように流してから、別のことを気にしはじめた。
「でも、塚原さんがその席だと、後ろの子が見えなくて困っちゃうわね。塚原さん、悪いけど前に出てきてちょうだい」
「はーい!」
俺は元気よく返事して、もはや玉袋に引っかかっているだけのショーツを直そうともせず、体を大きくくねらせ、竿を左右に振りながら前に歩いて行った。
せめて普通に歩けよ自分、という思いは俺の体には届かず、教室の前方、先生の横に立って話を聞く。とうぜんクラスメイトや保護者とは相対する位置になり、視線がよりいっそう俺の股間に集中して――勃起がますます、滾ってしまうのだった。
「それではみんな、改めて、入学おめでとう。これから入学式だけど、その前に流れについての説明と、新入生の代表を決めたいと思います」
そんな教室での説明ののち――
俺たちは、入学式の会場である体育館の入り口へと案内された。
すでに中には参加者が集まり、あとは新入生の入場を待つばかりの状態だ。
入り口の狭い空間に、40人近い新1年生の半数近くが入っている。当たり前だが、俺は他の新1年生の少女たちより頭二つ分近く抜き出ていて、腰の屹立はちょうど少女たちの首から胸元くらいの位置。先走りにべとべとに汚れたそれを、少女たちは面白そうに見つめていた。
「それではこれより、令和*年度入学式を始めます。まずは新入生入場。在校生の皆様、温かい拍手でお出迎え下さい」
司会進行の教諭の言葉とともに、体育館に割れんばかりの拍手が沸き起こり、担任の先生が俺たちに向かって告げる。
「さ、みんな、ついてらっしゃい」
「はーい」
いよいよだ。
いまだに何かの間違いとしか思えない、小学校の入学式。それも丈の合わない女児用スーツを着て、男根を露出しての参加に、背筋がぞっと冷たくなる。
しかし俺の体は止まることなく、笑顔を浮かべたまま少女たちとともに体育館に入ってゆき――
「っ!?」
今までとは比較にならない数の視線と、声にならないどよめきに、陰嚢が痛いほどに竦みあがった。
体育館にいるのは4年生以上の在校生と、教職員、来賓、保護者。合わせて300人以上にはなるだろう。その全員が入り口に向かい、拍手している。
入場の合図とともに、担任の女性教諭の先導で身長120センチ前後の少女たちが続々と入ってくる中で、身長170センチの男子高校生である俺が、冗談のようにピンクとグレーの女児用アンサンブルスーツを着込み、腰から突き出したペニスを上下左右に揺らしながら入ってきたのだ。可愛らしい子猫の中に、一匹だけクトゥルー神話の名状しがたい怪物が混じっているようなものだ。
会場がざわめき、視線が集中する中で、俺は新1年生たちと同じように中央の通路を進んで、前方の新入生席へと向かう。位置はちょうど、前列、中央通路のすぐ横だった。
「――新入生、着席。新入生への温かい拍手、ありがとうございます」
司会進行の声とともに拍手がやみ、俺たちは用意された椅子に座ろうとする、が――
「続きましては、本年度特別児童のご紹介です。塚原アキラくん、前へどうぞ」
(続く)