好奇心旺盛な咲希ちゃんが悪い大人に追い詰められる話 (Pixiv Fanbox)
Content
※これはprskの2次創作小説です。
※オホ声、理不尽、尊厳破壊、バッドエンドを彷彿とさせる描写、淫語要素を含みます。
夕飯を終え、ベッドで転がる時間。満腹感に頬を緩ませながら咲希はスマートフォンの画面をスクロールしていた。最近流行のファッション、コスメ、カフェ…SNSに流れる情報は際限がない。
そんな中、見覚えのないアカウントの投稿が目についた。
【宮●生限定! 会員制ナイトクラブに招待可 抽選1名】
同い年ぐらいだろうか、宮女の制服を着た少女のアイコンだ。その投稿は数分前にも関わらずいいねが瞬く間に伸びていく。その数字が百に達した頃、ようやく咲希は文面の宮●が己の通う宮女であることを理解した。
『シブヤにて不定期開催するナイトクラブにご招待します!
会員制の為身バレの心配なし♪
今回は宮●生限定ですが抽選1名様まで参加可能です。
初めての子でも現場やDMでしっかり相談できるから安心♪
学生証を持った自撮り写真を送るだけで応募完了!』
そこには何やら好奇心をかき立てる言葉が並んでいた。オトナの世界を覗いてみたいという欲望はやがて彼女を支配し、応募だけなら……と判断を鈍らせる。急いで学生証を取り出し、前髪伸びたなぁなんて呟きながら自撮りを行う彼女を止める者はいない。
……咲希の予想より遥かにはやく返信は届いた。風呂上がりの髪を自室で優しくタオルドライしつつベッドに腰かけると、通知のポップアップが目に入る。例のアカウントからだと気づいた瞬間、咲希は濡れた髪が頬をうつのも気にせずスマートフォンに飛びついた。
『ご応募ありがとうございます!
厳正なる抽選の結果、 天馬 咲希 さんがご当選となりました♪
次回開催は来週日曜日20時~ シーブヤ・リマンホール 地下1F☆
当日は本人確認のため学生証持参、制服着用でご来場ください!(入場時にはこちらで用意した衣装に着替えていただきます)』
当選。その二文字を見つけた咲希の口角はあがった。
「これ、抽選1名に当たったってこと!? すっご~い!♪」
何度も飛び跳ねてはスマートフォンのDMを読み直し、また満面の笑みを繰り返す。ついにはベッドの上に飛び乗って寝転び、両手を天井に突き上げた。沸き上がる興奮を思いつく限りの行動で一通り表現し終えると、咲希は思い出したように慌ててドライヤーをつけた。ゴウゴウという音ともに髪を揺らし、それに負けないぐらい上機嫌な鼻歌を披露する。その音色は彼女が就寝するまで続いた。
……イベント当日、夕飯を終えた頃。玄関で家族に見送られ咲希は家を出た。家族が揃ったタイミングを見計らってクラスの子たちとのお泊り会に行きたいと告げた瞬間、咲希のうなじには一筋の汗が伝っていた。参加メンバーは「来れる人たちでやる。プリシとるから制服で行くね」、日程は「日曜夜から翌日のお昼頃。祝日だからお休みでしょ?」、食事については「夜食にみんなでピザ取るんだって。楽しみ~!」。内心家族たちに不安はあったものの、せっかく本人が楽しみにしているようだし無理のない範囲で楽しんで来いと首を縦に振った。
慣れた足取りでシブヤ駅近くまでやってきた咲希の視界にとあるビルがうつる。
『もうすぐ着きます! たぶん角を曲がったところです!』
そうDMを送信しスマートフォンをスクールバッグに滑り込ませた。歩くのに合わせ、唯一の荷物である財布とぶつかってコツコツとした感触がリズミカルに伝わる。大人のイベントに行くのだからきっとお金が必要だと咲希は考え、大事にとっていたお年玉から2万円を財布にしのばせてきた。なお、ナイトクラブと称されるような場は多くのライブハウスと同じようにワンドリンク制度を起用していることが多く、最悪そのドリンクチケット代があればいい。咲希が持ち出した現金は、大人の世界に行くという行為への決断を盛り上げるためのものである。この年頃の少女が味わいたい、小さな秘密だ。それを表すように、鏡を模したビルの壁面に彼女の綻んだ横顔がうつる。
クラブ、夜遊び、秘密……! 咲希はこれから自分を待っているすべてに瞳を輝かせる。イケナイことをしている罪悪感に息を弾ませながら、目の前の角を曲がった。
「どーも」
ビルの入り口前に立って手を振っているのは、長身の男だった。緩いシルエットのアウターを羽織った彼は甘く笑い、咲希を手招きする。戸惑い立ち止まる彼女の背に通行人がぶつかり、突き飛ばされた。先ほどまで軽やかに地面を蹴っていたローファーで姿勢を正そうとしたが、彼はそれよりもはやく彼女の身体を抱きとめ、近くのベンチに下ろした。
ベンチに腰かけた咲希を見下ろすその顔は、ひとことでいうならばイケメンだった。流行を取り入れた髪型だけの"雰囲気イケメン"ではない。薄くゆるやかな弧を描く眉、控えめに艶めく瞳を覆う二重のまぶた、形がよく筋の通った鼻、くすみながらも不快感のないピンク色を纏う薄い唇。持って生まれたパーツだけではない、きめ細やかな肌を見れば普段からしっかりケアされていることは一目瞭然だ。
そのあまりの完成度に、咲希はクラスメイトが渇望している『年上のイケメン彼氏』とはまさにこういう人物なのだと理解した。
「……咲希ちゃん?」
穏やかな声音で再度名を呼ばれ、咲希は彼を凝視していたことにようやく気付く。急いで視線をそらすも、自分の目の前に立つイケメンを忘れることなどできない。ちらちらと盗み見ながらなんとかお礼を伝える姿は明らかに目の前の人物を意識していた。もじもじと膝をすりあわせ、髪を指に巻き付ける。男の視線を独り占めしたい、でもかっこよすぎて照れちゃう……そんな仕草だ。
「あ、あの……アカウントのアイコンは、女の子だったと思うんですけど……」
「何人かでやってるアカウントだからね。若い子にもクラブの楽しさに触れてもらいたいって企画側の人間が集まって、たまにああやって募集かけてるんだ」
多少面喰ったものの、このイケメンを前にして帰るという選択肢は咲希にはなかった。ふと自分の横に置かれている紙袋へ顔を向ける。
「それが咲希ちゃん用の着替えだよ。入場時には着替えてもらうってDMで言ってたでしょ」
そのままビル内へ案内され、多目的トイレで着替えてくるよう指示される。咲希は紙袋の持ち手を握り直し、戸惑いながら多目的トイレの取っ手を引いた。想定よりも重いそれに息を詰め、逃げるように駆け込む。
「とにかく着替えた方がいい、よね……」
独り言ちながら紙袋を便器の蓋の上に置き、手を伸ばす。しかし、紙袋から出てきた衣服を見てぎょっとしてしまった。
それはクロスホルターネックのワンピースだった。まるで大胆なビキニのようなバスト部分を支えるのは、うなじで結ぶリボンとウエストから回り込むヒップへの布地だけ。やけに丈が短く見えるが、着用すれば足や腰回りの厚みによってなおさら短いシルエットになることは容易に予想できる。艶めいているイエローのサテン生地は妙に安っぽく、背中は丸出し。おしゃれな私服として欲しいとはお世辞にも思えなかった。
ふと扉の方へ視線を向ける。普通のトイレよりも大きな多目的トイレの扉にはラミネート加工されたA4サイズの紙が貼り付けられていた。やけにカラフルな枠組みの中には陽気なフォントで『みんなで使うトイレです。用が済んだらすぐ出ようね!』と文字が書かれている。なるほど、これから向かうナイトクラブへの参加者が簡易的な更衣室として使うのだろう。
咲希は意を決してセーラー服のスカーフをといた。どっちみちこの制服は証明書代わりに着てきたものであり、未成年立入禁止のクラブには入れない。スカートのプリーツに変な癖がつかないよう軽く畳み、手渡された紙袋へ入れる。脱ぎ終えた制服一式をしっかり寄せ、スクールバッグも詰め込んだ。
意外にもワンピースは裏地までしっかりと作られており、肌がチクチクするような感覚もない。肩回りが丸見えかつカップがついたデザインのため、迷ったがブラジャーも外すことにした。なんとか鏡を使ってクロスホルターネックのリボンを結べば、デコルテ部分の隙間から胸の谷間がわずかに見える。新聞紙で包まれていたゼブラ柄のパンプスに履き替えれば、この女が現役宮女生だとわかる者はいないだろう。
「……よ~し! 楽しむぞ!」
己を奮い立たせ、制服を入れた紙袋をひっつかみ多目的トイレを出る。彼の姿はすぐに見つかった。自販機横でスマートフォンをいじり、時折周りをうかがっている。
咲希と目が合うと彼は笑顔を浮かべながら駆け寄ってきた。そして自然な仕草で紙袋を受け取るも、なんとその中をまさぐり出したではないか。先ほど着替えたばかりの衣服に腕を突っ込む姿に咲希が固まっていると……
「咲希ちゃん、これ忘れてるよ」
彼が取り出したのはハートを模したサングラスだった。通常のレンズよりも薄い色合いのそれは視界を妨げず、しかし彼女の人相を隠すには適している。慣れた手つきで咲希の顔にサングラスをかけ、彼はまた手を差し出す。
不思議そうに見上げる彼女の耳へ唇を寄せ、彼は囁く。
「タイチ、って呼んで。一応オレの彼女ってことで連れていくから、カップルっぽくしてほしいんだ。フロア入るまででいいからさ」
イケメンとカップルのように腕を組む。こんなにも好都合な『義務』があるだろうか。咲希は何度も強く頷き、まったく躊躇いなくタイチの腕にしがみついた。その拍子にズリ下がったサングラスをタイチが直してやる。
今日会ったばかりの他人とは思えない距離感で二人はイベント会場へ向かった。ついにこの扉の先でイベントが行われているのだとわかるバックルームまでたどり着くと、タイチは咲希を扉の前に立たせる。
「咲希ちゃん、楽しんで!」
――彼の言葉が終わると同時に扉が開かれた。咲希を包むのはどんなテレビ番組でも行事でも味わったことのない音圧、思わず目を覆いたくなるほどの激しさで焚かれるライト、その中で大勢の男女が踊り、手を突き上げ、笑っている。まさに今この一瞬を楽しむための空間である。
SNSの写真で見たどんな写真よりも躍動的な光景に、咲希の足は踊るように飛び込んでいった。
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「タイチさぁん、見~っけ!❤❤❤」
「わっ……楽しんでるみたいで何より」
背中にとびかかってきた感触と能天気な声色にタイチが振り返る。利き手に持っていた紙袋を持ち直すと、けらけらと楽しそうに笑う少女をゆっくり降ろした。火照った頬を緩ませながら右に左に手を振る咲希は誰よりもこのフロアに馴染んでいる。男たちの視線をうまくかわし、投げキッスすら飛ばす余裕だ。
苦笑しながらタイチは咲希をカウンターチェアへ誘導した。カウンターの前に並ぶそれを見た彼女は、一番奥のものへ勢いをつけて尻から飛び込む。その勢いのまま回り、ワンピースの裾から伸びる脚は眩しい。
タイチが隣に腰かけるのと同時に、カウンター越しにバーテンダーが歩み寄る。
「ドリンク、どうします?」
「美味しいジュース、お願いしますっ❤」
「オレの連れ。美味しいの作ってやって」
タイチが未成年を連れ込む役割であることはスタッフ内でも知れ渡っている。必要以上のトラブルを避ける為、その連れにはアルコールは飲ませないのも共通認識だ。
しかし咲希はそんなことを知る由もない。黒服を着たバーテンダーがドリンクを作る様子に興味津々である。目を輝かせながらカウンターに顎を乗せる姿は可愛らしい。深緑色のビンから炭酸ジュースがなみなみと注がれ、気泡が弾ける音に合わせて咲希もまばたきをする。レモンを絞り、カットしたオレンジをグラスにさせば出来上がりだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます! えへへ、美味しそう~!」
咲希がグラスを眺めている間に、タイチもドリンクを受け取る。楽しそうに笑う彼女とグラスを鳴らせば、揺れるツインテールからシャンプーの香りが舞う。それは香水を纏う女性から香るものとは違った。
あっという間に咲希の喉がグラスの中身をすべて飲み干す。その飲みっぷりにタイチが笑いをこぼした。
「一仕事終えたサラリーマンみたい」
「えぇっ?」
「冗談」
「……も~うっ!❤」
怒ったような口ぶりをしながら、実際はにやけ面で咲希がタイチの肩へもたれかかる。自分から素足を絡めるほど上機嫌な彼女の頬を撫で、タイチは囁く。
「咲希ちゃん可愛いから、今晩は10万円でいいよ」
「……えっ?」
「聞こえなかった? じゅう、まん、えん、っていったの」
再度告げられたことで、ようやく咲希は己を見つめる真っ黒な瞳に気付く。背筋を走る寒気に唾を飲んだ。遠くで鳴るサウンドが床を伝い、カウンターチェアを揺らす。その震えは座面越しに尻へ伝った。彼の言葉はすぐに喧騒の中へとけていく。
一度は完全に硬直したものの、咲希はつい数分前のやり取りを思い出した。彼女の飲みっぷりを見て茶化し、笑う彼の顔を期待して空いたグラスを火照った頬にあてる。
「あははっ、何それ~っ❤ タイチさんの冗談、面白~いっ❤❤❤」
そんな言葉を受けたタイチは黙って咲希に向きなおり、彼女の顔より少し後ろに手を伸ばした。手に残っていた水滴が垂れ、首筋へ流れ落ちる。不意の刺激に咲希が声をあげるも、タイチは気にする素振りもない。冷たい指がとらえたのはうなじで結ばれているリボンだった。咲希がクラブに入る時に着替えたワンピースの首元……クロスホルターネックとして結ばれているサテン生地のリボンを指でつまみ、わずかに力を込める。
リボンがとかれれば胸が露わになることを理解しつつも、咲希は身体が動かなかった。かわいて張り付いた唇をなんとか開こうとする姿はまるで追い詰められた草食動物のようだ。
「10万円の内訳、聞きたい? クラブへの紹介料2万円、衣装代4万円、さっき飲んだドリンク2万円、あとさっきのドリンク、実はアルコール入ってたみたいでさー。でも宮女生がこ~んなとこでそ~んなもの飲んでたなんてバレたら困るよね? 停学? もしかしたら退学させられちゃうかな。でもそれを黙っててあげるってことで2万円。全部合わせて10万円」
笑ってはいるが、それは咲希を安心させるためのものではない。デタラメとしか言えない10万円の内訳にも口を挟ませず、再び指に力をこめる。
「やめ、やめ……」
咲希は奥歯をガチガチ鳴らしながらなんとか声を絞り出した。するりとリボンが結び目から抜けた感覚を察知し、目が見開かれた。
その瞬間弾かれるように彼女が手を振り上げる。
「やだっ!」
乾いた音がフロアの一角に響いた。反射的に目を細めたタイチの顔に、咲希はしまったと汗を一筋流す。彼は本気で10万円の借金をおしつけ、第三者とサウンドがひしめくこの場所で咲希を脱がせても構わないと思っているのだ。
目の前にいる男が、とても怖い。これまで様々なものや人が自分を守り、救い、愛してくれた。身体が弱かったことを加味しても十分な程の愛を受けて育っている彼女にとって、タイチの成すことすべてが恐怖だった。唇を戦慄かせながら慌てる彼女の目元からサングラスがずれ落ちる。咲希は誰かに助けてもらうべく視線を泳がせると、バーテンダーと目が合った。
「あ、あ、あの……」
助けを求めようとした瞬間、バーテンダーはカウンターの向こう側で何かを探し出すような素振りをする。しかしすぐに目的のものを見つけたのか、その手をカウンターの上に置いた。
――メモ帳とペンだ。罫線だけがあしらわれたシンプルなデザインのそれは分厚く、咲希はこれが10万円ならよかったのにと内心肩を落とす。対照的にタイチは鼻歌混じりでメモ帳とペンを手に取り、そのまま黙って見守っていた咲希の前へ置きなおす。事態の飲み込めない彼女がタイチの表情を窺うと、彼は何気ない口ぶりで語った。
「咲希ちゃんの身体を使ったオークションをするんだ。別に内臓なんかを売り飛ばすわけじゃない……君が自分で魅力的だと思うものをオレに売り込んでみてよ。"咲希ちゃん"をいくらで売るかこのメモ帳に書いて、その総額が借金の10万円を越えたらおうちに帰してあげる。まぁオークションっていったってオレしか参加者いないんだけど」
厚いメモ帳をぱたぱたとはためかせるタイチの表情は明るい。まるで楽しい遊びを提案する子のような顔つきだが、咲希の冷や汗は止まらなかった。
「あの…………ぱ、ぱんつ、見せます……」
「いくらで?」
「……え、えっと……」
タイチの質問を受け、咲希は言葉に詰まった。実際彼女が今身に着けているのはワンピースとサングラス、そしてサンダル。もともと身に着けていたショーツ以外はすべて目の前の男、タイチから与えられたものだ。最早彼女が商品として思いつくものは限られている。
ショーツを見せるという選択肢はタイチの想定内。純粋無垢……身もふたもなくいえば馬鹿な娘であるほど扱いやすい。お嬢様校として周知される宮女生限定とうった今回の募集も実際かなりの人数から応募があった。その中から一番外見がよい咲希を選んだところまでは順調だったものの、ここで待たされることにわずかな苛立ちを覚えたようだ。
痺れを切らしたタイチは、うなじ側のリボンを震える指で結びなおす咲希へ焚きつけるように声をかける。
「ちなみに借金は10万円だからねー」
「じゃ、じゃあ10万円ッ……!」
しかし返ってきた言葉は、まさかの借金の全額分。面白い冗談だと鼻で笑ったタイチは、唇を噛み締めながらタイチの機嫌をうかがうその仕草に彼女が本気で考えた結果なのだと察知した。自分をオークションにかけたことがないのは勿論、女子校生の着用済みパンツを金を払ってまで見たい者がこの世には数えられない程いることなど知りもしない純粋さ故だった。
その間抜けさと健気さの絶妙なバランスに、タイチは手でカウンターを叩きながら腹を抱え爆笑する。一方、これまで淡々と詰めてきた彼の変貌は咲希を呆然とさせた。イケメンであることを考慮しても、咲希からすれば彼の振る舞いはただの狂人であった。
「あはははっ! あ~おっかしい……いくら咲希ちゃんが可愛くても、流石にパンツ見せてもらうのに10万円は払えないって! お嬢様校に通ってるとそういう感覚も鈍っちゃうワケ?」
彼が笑い転げる理由が自分の発言に基づくものだと察し、咲希は赤面する。冷静でなかったのは確かだが、お前にそんな価値はないぞと言い聞かされるような感覚は自尊心を傷つけた。その傷自体は小さく浅いものでも、今の咲希にとって誤った方向への決断――値付けを促す。
「い、1万円! 1万円ですっ!!」
「ん~、見せるだけで1万……正直ちょっと高いけど希望小売価格から大幅値下げだからね。買うよ。じゃあ咲希ちゃん書いてくれる?」
タイチにペンとメモ帳を持たされ、咲希は震える文字を綴る。パンツ 1万円。今どきの女子校生らしい筆跡で記した紙面を示すと、彼は首を傾げた。
「何これ、パンツ 1万円……って。もっとちゃんと書いて? 色とかアピールポイントとか、何かあるでしょ?」
それを聞いた咲希の表情といったら、本当にひどかった。いつも楽しそうに笑い、時に衝撃に見開いては素直に感情を表す瞳からはぽろぽろと涙を流し、鼻先を赤く染めながら嗚咽をこぼしだした。八の字に歪んだ眉をまともな者が見ればその肩を抱きしめるだろう。しかし目の前の男に良心というものはない。咲希が大粒の涙をこぼしながら書き終えるまでずっと譲らなかった。
――白のフリル付きパンツ。お気に入りなのでよくはいてます。腰のところについてるリボンがすべすべでよくさわっちゃいます。この前おかあさんに「リボンのところ少しほつれてるけどどうしたの?」っていわれて恥ずかしかったです。 1万円
こぼれた涙によってよれた紙面を必死に伸ばしタイチへ差し出せば、彼はそれをひったくるように受け取った。そのまま咲希の顔を見つめる。自分でワンピースをまくるまで待っているようだ。
咲希は奥歯を噛み締めながらワンピースの裾に手をかける。ぴっちりと身体に張り付く寸法のそれは容易に持ち上げることができず、太ももにはりつく布地そのものをまくりあげる羽目になった。なるべくタイチ以外に見えないようカウンター側へ足を向ける。
裾を爪先で必死につかみ、ようやく白いフリルで縁取られた三角形が現れた。細くも柔らかそうな太ももの肉が少し食い込んだそれに、タイチは意外にも軽くOKを出した。
「はいじゃあ残り9万円。次は?」
早く終わってよかったという気持ちと、こんなものでいいのか?という気持ちに開いた口を急いで閉じ、スカートの裾を戻す。座るだけとは違い、無理に布を引っ張り上げたせいでうまく戻らないそれを撫でつけながら咲希はまた目を泳がせた。
「で、でも、あとはタイチさんから借りた物だし……」
「咲希ちゃんのものならここにあるけど。これでいい?」
タイチが蹴飛ばして寄越したのは紙袋だった。カウンターチェアの下にあるそれを拾い上げると、咲希の喉から息が漏れる。まさに自分が今日着てきた宮女の制服だった。浮かれてこのビルまでやってきた瞬間を思い出しまた涙がにじむ。年齢や学生であることを理由に制限されるものには、ちゃんとそういう理由があるのだ。誰にも相談せずに来てしまった自分を助けにきてくれる人間などいない。
この状況を打破してくれる何かがないかと願いを込めて紙袋の中を探る。当たり前だが、9万円と値付けされるようなものなど持ってきていない。そう思いつつも手は止めなかった。何か、何かないか……なんでもいい、はやく解放されたい……。
「宮女の制服、可愛いよねー」
唐突に耳元で囁かれ思わず身体が跳ねる。彼の言葉に気付かないフリをして探り続けるも、もう無意味だと心のどこかで勘づいていた。歯をガチガチと鳴らしながら必死にまさぐり続ける咲希の肩を抱き、タイチは再度口を開いた。
「オレ、宮女の制服で超ミニスカート見てみたいなー。咲希ちゃんが着てきたの一瞬見たけど超ミニってわけじゃなかったし」
突然並べ立てられる単語の数々に理解が追い付かず、狼狽える咲希の前に何かが置かれる。
それはカウンターの上部から降る照明を鋭く反射し、彼女の喉をひきつらせるのは十分な存在だった。
「このハサミで切ってよ、スカート」
目の前に転がるのは、一本の事務用ハサミだ。カウンターの向こうで、いつの間にかバーテンダーの横に立っていたスタッフが面倒そうに「はやく返してくださいねー」と声をかけてきた。
スカート丈を短くするだけならば、わざわざ布を裁つ必要はない。ウエスト部分を織り込めば済むし、何よりスカートそのものを切ってしまえば受験シーズンや学校行事に困るのだ。教師がいくら叱っても布が勝手に伸びることはない。友達に借りることができなければ、その一日のためだけに予備をおろすか、真新しいスカートを購入する必要がある。学校指定のスカートは決して安くはない。宮女は一般的に見ても裕福な家庭が多いとはいえ、汗水垂らして働く両親を思えば大抵の生徒は裁ちバサミを裁縫道具入れに戻すのだった。
しかし今の咲希に選択肢などない。面白がるようにニヤつくタイチと、興味のないバーテンダーと、急かすように腕時計を何度も確認するスタッフ。咲希の視界にうつる男は誰一人として彼女を救う素振りもなかった。
ついにはいつまで経っても動かない咲希にしびれを切らしたのか、スタッフが手のひらでカウンターを叩く。
「ひっ……」
「大丈夫だよ、咲希ちゃん」
萎縮した咲希の肩を抱き、タイチは優しく囁いた。まるであやすような仕草とは裏腹に彼女の手へハサミを握らせる。
「予備もあるでしょ? ないなら、夏服と冬服入れ替えたって誰も気づかない」
誰も気づかない、という言葉に咲希の体温が冷えていく。自分の楽観的な考えでたどり着いたこの状況を指摘されたような気がしたのだ。救いを求めて今日のことを誰かに伝えるのならば、未成年入場禁止のイベントへ自分から応募したという愚かな経緯も明かさなければいけない。幼馴染たちには軽蔑されるだろうか? 家族を泣かせるだろうか? 焦りに追い詰められた咲希は震える手でハサミを持ち直す。揺れる刃先が灰色の布地をくわえこんだ。
――じゃきんっ
「あっ」
耳に刺さるような音。金属質な冷たさが今更指の付け根から伝う。組み合わされた刃は、いとも簡単にプリーツスカートを裂いていった。
――じゃき、じゃき、じゃき
「う、うぅ……」
数秒前まで咲希に添えられていたタイチの手。それらはもう離れ、咲希の手は完全に自由になっていた。
己の行動を見ていられないとばかりに咲希が目を閉じるも、タイチは見逃さない。
「ダメだよ、咲希ちゃん。危ないじゃん」
耳元で囁くその声をかき消すように彼女は手を進めた。刃の切っ先はスカートをぐるりと一周し、彼女が着用していたものとは似ても似つかない丈に変わってしまった。膝上10cm……いや、股下1cmもないだろう。もう二度と学校に履いていくことができないそれを力なく膝に落とすが、タイチは無神経に咲希の太ももへ乗せなおし、「超ミニスカート、似合うね~」と鼻で笑った。
「これはオレのお願いだったし5万……といいたいところなんだけど、想像以上にバッサリいってくれたからサービスで6万円にしちゃおうか。パンツ見せるのと合わせたら残り3万円だよ。もうすぐだから頑張れ~」
サテン生地の滑らかさを借りてスカートが膝の間を滑り落ちていく。指にひっかけたままだったハサミはカウンター越しに腕を伸ばしたスタッフに回収された。咲希のうつろな目が数回まばたきを繰り返し、ただ黙って涙を流す。普通の感覚を持つ人間ならば憐れむだろう表情は、あいにくこの場では1円にもならない。タイチはにこにこしながらメモ帳とペンを彼女に差し出す。当然、精神的な消耗が大きすぎる今の彼女が受け取ることはなかった。恐ろしいことに彼はそんな反応も慣れっこなのか、咲希ちゃんが書かないならオレ書いちゃうからねー、と口笛を吹きながらペンを滑らせる。
――超ミニスカートにしちゃった☆ このぐらい短い方が絶対可愛いから学校にも履いていこ~っと! 道行くおっさんたちにパンツ見せて慰謝料ぶんどりま~す笑 JKパンツビジネスで稼ぐぞ❤ 制服アレンジ 6万円
「……よし、書けた! 咲希ちゃん見て見て~、って……そんな顔しないでよ? せっかくサービスしたのになぁ」
タイチが"代筆"したメモ帳を促されるまま咲希は読む。これまで生きてきた中で一度も思いついたことのないような下品さ。深く刻み込まれた傷を茶化されるという無慈悲さ。咲希の唇から漏れる掠れた声は当たり前のようにフロアのサウンドにかき消された。憔悴した表情だけが苦しみをタイチに訴えている。……もちろん、彼がそんなものに同情するわけもない。
「咲希ちゃーん、そんなんじゃ借金終わらないよ~。おうち帰りたいんだよね? 3万円どうすんのー」
彼女の隣にタイチが立つ。素肌の肩に腕を回し立てるかと問う姿はまるで酔いつぶれた恋人を介抱するかのようだ。切り裂いたスカートを放置したまま、彼は咲希をカウンター横の小さなソファへ移動した。
「な、何……するんですか……?」
「聞いてるのに何も答えないんだもん。あと3万円どうすんの? 大抵の子はセックスで済ますから、それにしとく?」
「せ、せっくす?」
脳裏によぎらなかったわけではない、しかし自分から言い出すことのできなかった行為。咲希が思っていたよりも軽く提案されたそれに彼女はまたもや汗を流す。一方、タイチは彼女の返答を待つだけ。
嫌だと喚きたい感情、セックスですべてが解決できるという一筋の希望。それを天秤にかけ、ついに咲希は喉から了承の言葉を絞り出した。強く脈打つ心音にこうするしかないのだと言い聞かせる顔色は真っ青だ。
「じゃ、決まりね。これで借金完済おめでとう~。咲希ちゃん、コンドームはどうする?」
力なく顔を上げた咲希の視線の先ではタイチがコンドームの箱を持って立っている。女子校に通ってはいるものの、咲希とて思春期の女の子だ。コンドームとは避妊具であり、一般的に子づくりを目的としないようなセックスをする時は避妊しなければいけないことは知っている。この場合のセックスは間違いなく娯楽や快感目的だろう。
つけてください。消えそうな声でそう返事をするも、タイチは何も言わずにコンドームの箱を再度示した。咲希は自分の声が届いていないのかと困惑し、何度か喉を鳴らす。
「つけてくださ……」
「1万円」
「……」
文字通りの絶句だった。存在しないはずの10万円を返済するためのオークションを終えた彼女に、さらなる理不尽が襲い掛かったのだ。勿論味方する者などいない。
咲希は、笑みを浮かべたまま手を伸ばしてくるタイチを見つめる。涙に潤む少女の瞳など意にも介さない。そんな態度だ。唇を噛む彼女を急かすように何度か手のひらを振るが、ふと何かに気付いたように声をあげた。
「あぁ、お金か。はいこれ、着替えと一緒に預かってた財布ね」
タイチは足元に置いていた紙袋を漁り、見覚えのあるものを投げ渡す。咲希が慌ててキャッチすると、それは彼女の財布だった。タイチは手に持ったまま黙っている様子を見守り、口パクで『いち、まん、えん』と繰り返す。
結局財布を開き一枚の紙幣をつまむ。これで避妊はしてもらえる、と自分に言い聞かせながら顔色をうかがう咲希にまたタイチが声をかけた。
「前戯はいいの?」
「ぜん、ぎ……って?」
「あはは、本当に初めてなんだ。っていうか、そういう話もお友達としないんだね。乾いてるまんこにちんぽ挿れると痛いから先にぬるぬるにしとく必要があるんだよ」
「痛いって……怪我とか血が出るってことですか……?」
「人によるかな。ローションとか使う人もいるよ」
そう答えながら、タイチはソファに座る咲希に視線を合わせた。小さく細い膝にそっと手を置き、ごく自然な動きでそこを割り開く。あまりのスムーズさに反応が一瞬遅れ、慌てて閉じようとするもその力は成人男性に到底敵わない。咲希の反応など意味もなく、ミニ丈のワンピースは簡単にまくれ上がった。
自分の意思で見せるのとは違う状況に咲希は思わず顔を俯ける。今の羞恥や屈辱にくわえ痛みまで与えられるという恐怖が迫れば、彼女に選択肢などなかった。
「ぜんぎ、お願いします……」
「はーい、じゃあちょっとお尻上げて」
震える膝へなんとか力を込め腰を浮かせば、咲希の不安とは裏腹にショーツがするすると下ろされる。足首まで下ろされたそれを確認し座面へ尻を落とした瞬間、太ももを叩かれた。決して痣が残るような痛みではなかったが、不意打ちの衝撃に咲希は呼吸を詰まらせる。
「座ったままだと手マンしづらいから腰は浮かせてガニ股にしてね。あと前戯するなら追加で1万円だから」
今日何度目かの涙をこぼしながら咲希が財布を拾い上げた。最後の紙幣を震える指でつかみ差し出せば、彼は視線も合わせずそれをポケットに突っ込む。
再び太ももを叩かれ、咲希は慌ててタイチの指示に従った。ショーツを足首から抜いてもらえないせいで膝だけを割り開くガニ股。ソファから尻を浮かし、仰け反った姿勢で肘掛けに体重をかけた。腰を突き出すポーズはまるでリンボーダンスに挑むようだ。
タイチの指が最初に触れたのは、柔らかな陰毛の奥に存在するクリトリスだった。湿った包皮をとんとんとノックし、これから気持ちよくしてやるからねと告げる。くすぐるような手つきと鼠径部に触れるタイチの吐息は、咲希の知らない何かを駆り立てていく。
「ふぅ~……っ❤ う゛ぅ……❤❤❤ タイチさん、タイチさん……ッ❤❤❤」
――へこっ……❤ へこっ……❤
抗いようのない快感に、咲希は突き出す腰を震わせ喉を晒した。彼女の熱っぽく潤んだ視線がタイチを捉える。
数分前までの威圧的な態度から一変、甘く喘ぐ目の前の女を労わる指つき。不規則に揺れるツインテールから汗が香る。タイチの指の腹が与える刺激は経験したことのない浮遊感を引き出していった。現実がどうでもよくなるような快感に咲希が浸っていると、何の断りもなくタイチの指がクリトリスを離れる。散々甘やかされたクリトリスが名残惜しそうに震えるが、まるで躾けるような手つきでピン!と弾かれた。その刺激に咲希の腰がガクンと揺れる。
「ぅお゛ッ!❤ ……ふ……ッ❤ ふ……ッ!!❤❤❤」
もしも彼女がセックスに慣れた女であれば、苦情の一つでも入れていただろう。しかし今タイチの指に翻弄されているのは性経験のない咲希であり、きっとこれは男にまんこを弄られる女が受ける通過儀礼だと受け入れてしまった。健気に耐える手は汗ばみ、今にもひじ掛けから滑り落ちてしまいそうだった。
「じゃ、咲希ちゃんのおまんこ穴に失礼しまーす」
――にゅるっ❤
「あっ?❤」
十分分泌された愛液をまとわせた指が無遠慮に侵入する。ひしめく肉ヒダをかき分けられ、咲希自身も知らない感覚にワンピースの下で乳首がびんと尖った。
「はっ❤ はっ❤ タイチさんっ中がなんか変ッ❤ お腹むずむずする……ッ❤❤❤」
「もしかして普段オナニーとかしないの? じゃあ初めてのアクメ、手マンで知っちゃうんだ。ほら、咲希ちゃん、おまんこほじほじ~❤」
「あ゛っ❤ あ゛っ!!❤ あ゛っ無理無理無理っ❤ 足震えてもう立てない……ッ❤❤ あ゛っだめそこもう押さないでっ❤❤ はぁッん゛ッん゛ッん゛ッ!!❤❤❤」
最早なりふり構わず咲希は真っ赤な顔を左右に振る。鼻の孔を膨らませながら必死に呼吸を繰り返し、歯を食いしばった。時折喘ぐような息継ぎがタイチの髪を撫でおろす。足首にひっかかったままのショーツのせいで姿勢を立て直すこともできず、限界まで開いた膝を伝って汗が垂れた。その間もタイチは前戯を止めない。制止を無視しているにも関わらず手つきそのものは優しく、快感を与え続ける。
「……あ゛ッッ!!❤❤❤」
ついに咲希の腰がクンッと浮いた。荒い呼吸と汗は彼女が絶頂に達したことを示している。収縮を繰り返す肉ヒダにタイチは笑いをこぼし、わずかに緩めた手つきで追い手マンを続けた。初アクメを他者の手マンによって与えられた少女がそんな刺激に耐えられるわけもない。脱力と緊張によって震える腕も既に支える役目を果たせなくなっていた。
愛液をまとった指を抜き、タイチは汗にまみれた咲希の身体を抱える。まるで社交ダンスのようにスマートな動きが一瞬のライトに照らされ、初めて知ったアクメに追いつけない咲希は踊るようにタイチと入れ替わる。
「ほら、おいで」
「ん……ふぅ……う……❤」
愛液の垂れた座面に躊躇いなく座った彼が、咲希を背後から抱き寄せた。丸出しの下半身を除けばまるで恋愛ドラマの主演だが、まくれたワンピースを戻すことも許されないままヒロインは大人しく彼の膝へおさまる。
一人掛けのソファは二人で座るには小さい。膝をもじもじさせる咲希のいじらしさなど気にせず、タイチはその素肌に指を這わせる。空いた手で濡れたままの膣穴をなぞりながらコンドームの包装を開けた。自分の股間の下で何かが行われていることに気付くも、咲希が覗き込もうとすれば自分の濡れ濡れまんこを直視することになる。それは年頃の彼女にとって羞恥以外の何物でもなかった。
「じゃあ咲希ちゃん、挿れるよー」
「えっ? う、後ろ向いたままだと怖いから……せめて顔を見えるように……」
――にゅるんっ❤
自分の身体なのに何が起こっているか把握できない、というのが咲希の"初体験"だった。それはいつかできる彼氏と愛を囁きあうようなものでなく、下半身だけを丸出しにした背面座位。柔らかなベッドなどとは程遠い一人掛けのソファ。顔を上げればカウンター越しにバーテンダーが酒瓶を棚に戻す背中が見える。ショーツの存在を思い出して視線を下げれば、足首に絡んだままのウエスト部分が間抜けに伸びていた。
怖い。恥ずかしい。どうして……。そんな咲希の感情をあざ笑うようにタイチは腰を揺すり出す。
――とんっ……❤ とんっ……❤
決して激しい動きではないが、確実に膣の弱点を探してやるという意志を感じさせるものだった。初めてのアクメを味わったばかりの膣は侵入者を排除しようと蠢くものの、所詮ちんぽをもてなす気遣いにしかなりえない。その食いつきっぷりは初物を喰い慣れているタイチでも思わず吐息を漏らす程だった。熱く滾る竿が我が物顔で出入りする様はAVに負けない迫力だ。
咲希の脊髄を駆け上がっていた小さな違和感が快感だと気づいた頃にはもう遅い。緊張と恐怖で強張っていた顔は瞬く間に赤らみ、ただ呼吸をしていた唇は「ほ……ッ❤ ほ……ッ❤」と間抜けに尖っていく。いつも溌溂とした笑顔を彩る眉は深いシワを刻み、全身で快感を逃がそうと足掻いた。
タイチは一度息をつくとおもむろに手を伸ばす。その手は背後から咲希のへそをなぞり、綺麗に切りそろえられた爪で下腹部を撫でまわした。ちんぽが挿っていることを言外に語られる感覚に咲希は髪を振り乱す。
「あ゛っ!❤ そこだめッおちんちんでゴシゴシだめッ!❤❤ たいち、たいちさんん゛ッ……❤ なんかまた、おまた熱いぃ……ッ!!❤❤❤」
「咲希ちゃん、気持ちいい時はイクって言おうねー」
――どちゅどちゅどちゅどちゅ……❤❤❤
「うお゛ぉぉ……ッ!❤❤❤ イク……?❤❤❤ お゛っ❤❤❤ やだやだ怖いッイクの怖いッ!❤ イクのやだ……ッ!!❤❤」
「なんで怖いの? みんなこうやってちんぽをまんこに挿れたり、ひとりで股間擦ってイクイク~❤ってしてるんだよ。咲希ちゃんもまんこついてんだから、こうやってセックスできるの。オレにまんこ売ったの、咲希ちゃんなんだよ。はい、動きに合わせて、まんこイク♪ まんこイク♪」
「やだぁ~……ッ!!❤❤ 恥ずかしいから、もうやだ……ッ❤」
身をよじって逃げるような素振りは確かに純真な少女のものだ。しかしその動きはただちんぽを避ける為のものではない。甘く痺れるような衝撃を本能で察知し、そこを狙って擦りつけている。性経験の少なさ故に口で否定すればバレないと思っているのだろう。もちろんそんなことはとっくにタイチにバレているが、彼がわざわざ指摘することもない。
その証拠に、タイチは咲希の腹部を優しく撫でるだけだった。あくまで汗ばむ肌を愛でるのが目的であり、たぷたぷ❤揺れる尻肉を鷲づかむような真似はしない。若い女に夢を抱く必死な童貞ではないことを感じさせる余裕である。
「あ゛っ❤ ォう゛❤ お゛❤ お゛❤ っほ❤❤❤ ほ❤ なんで……っ?❤ やだよぉ❤ 恥ずかしいのに、やなのに、お腹の中がおちんちんギュッてしちゃう……ッ❤❤❤ お゛❤」
やがて咲希の腰の動きが一定になっていく。手は己の膝をつかみ、奥まで余すことなく挿入できるよう膝を開いた。誤魔化す気さえなくなった腰振りによって肌のぶつかる音が響き、周りはすっかり男たちに囲まれていた。
「タイチさん、今回も可愛い子連れてきてくれて助かるわ。しかもツインテじゃん、絶対イラマさせるわ」
「宮女の制服持ってきてるっぽいし写真撮ってそれでまた呼ぼうぜ」
「マジ? 宮女制服にぶっかけてー」
彼らはおぞましい話題で盛り上がっているが、咲希にその声は聞こえない。荒い呼吸を繰り返しながら壁の模様を睨みつける姿は普段の朗らかな彼女とは似ても似つかなかった。
やがて傍目にもわかる程がむしゃらな腰振りを繰り出していた咲希は、大声を張り上げた。
「そこッ❤ そこ好きッ❤ ッほ❤❤❤ タイチさん、無理❤ だめだめだめッ!!❤❤❤」
「あ、じゃあそろそろやめとく? セックス終わりにしよ。はい、オレもう動かないから」
そういうと、タイチは腰をぴたりと止める。想定していなかった反応に咲希が一瞬バランスを崩した。あわててソファのひじ掛けを掴み背後を振り返る。セックスを終わりにされたらこれ以上の刺激を享受することができないじゃないか。そう訴える視線に臆することなく彼は笑い、咲希を見つめ返した。
「ん?」
「あ、あの……タイチさん……なんで……」
「美少女JKの初体験3万円分、もう十分味合わせてもらったしさ。いやー良い思い出になったよ。帰る準備しよっか」
タイチの言葉に咲希が呆然とする。しかし彼女の腰を掴み、ちんぽを抜こうとする手に迷いはないようだ。まんことちんぽの隙間で弾けた気泡の音に咲希はようやく我に返った。
「ほ、本当に終わりなんですか……? だってタイチさん、まだおちんちん……その、射精……してないし……」
「あはは、咲希ちゃん優しいね。……まさか自分がこのままセックスで気持ちよくなりたいからそんなこと言ってるんじゃないよね?」
返答は、見透かすような冷たい声。ごくりと唾を飲む咲希はあきらかに動揺し、ひじ掛けを掴む手を何度か調整する。
そして、タイチの予想と反して咲希の丸く柔らかな尻は上昇し、ぬぽん❤と音を立てちんぽを吐き出した。血管の這う竿は持ち主の冷静さに反してぶるんッ❤ぶるんッ❤と荒ぶるように揺れている。セックス特有の熱気と匂いをその身に感じながら咲希が前を向き、身を屈めた。大きく開いた膝は限界を訴えるように震え、垂れた汗がゼブラ柄のサンダルへ滴る。タイチの足を跨げれば多少は楽になるだろうが、足首に絡んだままのショーツが邪魔をする。
彼の視線は咲希のまんこ……いや、その持ち主を捉えていた。咲希はかろうじて届いた壁に手をつき、股の間からタイチを見つめる。時折フロアを走る照明を浴びて光る尻を揺らし、熱い視線を送る。尻の動きは最初は見間違いかと思う程ゆっくりとした動きだったが、次第に激しさを増していった。ついにその揺れが尻肉を振動させるものに達した頃、彼女は口を開く。
「ま、また"借金"させてください……❤ セックスの続き、買います……っ❤ イクイクしたいです……❤❤❤」
「これ以上はピストン1回につき1万円だよ? 払える?」
「大丈夫ですっ❤ すぐいけるから、だからっ、お願いします……ッ!❤❤❤」
「仕方ないなぁ、いいよ」
――ぐにッ!!❤❤❤ ぐちッ!❤❤❤
タイチの了承を得た瞬間、咲希が尻を急いで下ろした。完全フリーのちん先を狙うも、今日初めてのセックスを知った彼女の膣穴はうまく咥えこめない。タイチが苦笑しながらちんぽを手で支えて、ようやく濡れてひくつく穴が迎え入れることができた。数分ぶりに肉ヒダを削がれ、咲希は尻を震わせながら低いうなり声をあげる。その反応は初めての挿入とは異なり、これから再開するセックスという行為への期待がおさえきれないという自己申告だった。
しばらく感覚を鳴らすように尻肉を震わせていたが、タイチが促すよりもはやく咲希の尻が上下しだす。
――ぬっ……ぽ❤ ぬっ……ぽ❤
「ぉお゛~……ッ❤ っほぉん……❤ 気持ちいとこ、当たる……❤❤❤」
顔が見えないのをいいことに、咲希は鼻の下を伸ばした間抜けな表情で快感を味わった。その間も緩やかな腰ヘコピストンで性感を高め、彼女自身は名称も知らないカリでひたすら弱いところを改めて探す。肉ヒダはもはや血管のデコボコにすらも戦慄き、愛おし気に吸い付いた。
「咲希ちゃん、ピストン10万円だよー。せっかくチャラにした借金、また戻っちゃったね」
「うそっ❤ はやくイかなきゃ……ッ❤ っほッ!❤❤ ほッ!❤❤」
――ばすんッ!❤ ばすんッ!❤ ばすんッ!❤
「あッイクイクイクイクイク……ッ!❤❤❤ イック❤ イクッ!❤❤❤」
「有料ピストン中はアクメ1回5万円でーす」
「えッ!?❤ うそやだやだあ゛ッ!!❤ あ゛っ!?❤ ダメッッダメなのにイグッッッ!!❤❤❤」
――ぴ~んッ……❤❤❤
唐突に告げられた後出し料金に困惑しながらも、咲希は見事な足ピンアクメを披露した。これまで必死に開いていたガニ股から一変、太ももから足首までの筋肉を震わせながら一直線に伸ばすシルエットが壁に落ちる。ふ~❤ふ~❤と荒い呼吸を繰り返しながら超高級アクメに浸る背中は汗まみれだ。
またも投げ出されたちんぽを揺らしながらタイチが目の前で震える尻を軽く叩く。
「ピストン35回とアクメ1回、咲希ちゃんの借金は40万円ね」
「……の……ですか?」
「ん?」
サウンドの隙間を塗って聞こえてきた声へ聞き返すと、咲希は弱々しい動きで身体を反転した。
汗ばむ肌にはりつく髪を払う動きは一見冷静になったようにも見えるが、次に指は迷うことなくワンピースが縁取るボディラインを辿る。まるでタイチの視線を己の指で誘導するようだった。そしてそれは鼠径部を辿り、剥くような手つきでまん肉を開いて丁寧に腰を突き出す。
「おちんちんの射精は、いくら払ったらしてくれますか……?❤❤❤」
タイチは、一瞬驚きながらもすぐに笑みを返した。未だ訪れない射精をしたいと訴えるちんぽを握り、先端を咲希へ向ける。まるで銃口のようなそれに彼女は更にまん肉を剥いて応えた。その距離は金額を教えられていないにも関わらず縮んでいき、ついには呼吸で身体を上下するだけで触れるほどに至っている。
ちんぽに釘付けな彼女の耳元に唇を寄せタイチは囁いた。その内容はあまりにも残酷だが、今の咲希には好都合だった。
「そんなの、いくらでも……
――連れてきまぁす❤」
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「最近の咲希……なんだか変わったよね」
昼休みににぎわう中庭で、一歌は呟く。その両サイドに座っていた志歩と穂波は気まずそうに目を合わせたあと食事の手を止めた。どちらが言葉を発するか躊躇う表情だったが、意を決したように志歩が声を潜めて喋り出す。
「私もそう思って咲希に聞いたんだけど、なんか……忙しいとしか言わなくてさ。怪しいけどそれ以上言わないし、仕方ないかなって思ってたんだよね。でも、その……」
志歩のアルバイト先の同僚から、咲希に似た少女がシブヤ駅近くのとあるビルに足繫く通っているのを見たと告げられたこと。そこでは夜な夜な法律違反ギリギリを責めるイベントが行われており、少なくない数の未成年が巻き込まれているらしい。
身を乗り出した一歌の表情がみるみる固まっていく。しかしここで自分まで悲観的なことを言うわけにはいかないと考えたのか、スカートの裾を握りしめながらぎこちない笑顔を浮かべた。
「きっと他人の空似じゃないかな」
「咲希ちゃんからね、連絡があったの……。そこの人にわたしたちも連れてくるよう頼まれて、い、一緒に……エッチして、お金返すのに協力してほしいって……」
志歩は今にも泣きそうな表情で唇を噛み締め、穂波に至っては完全に口元を覆い声を押し殺しながら泣き出す始末である。
現実味のない言葉。なぜ自分たちが関係するのか、お金を返すってどういうこと、聞きたいことは山ほどあるのに一歌は硬直してしまった。耳が詰まるような圧迫感に息があがり、頭がぼーっとする。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、中庭からは人が去っていく。正真正銘3人だけになったその空間に声が響いた。
「……私たちも、行こう」
一歌の言葉に二人が顔を上げる。驚愕したような表情に一歌は一瞬狼狽えるも、手汗まみれの震える手で二人の手を握った。
「大丈夫、その人たちも話せばきっとわかってくれるよ。ちゃんとお願いしてみよう!」
怯えながらもまっすぐな瞳で訴える一歌は二人の言葉を待つ。あまりに必死な表情は傍から見れば滑稽だが、本人は至って真面目だ。それが伝わったのか二人もついに頷いた。あからさまにほっとしたような顔をあわてて引き締めながら一歌は立ち上がる。校舎へ促す彼女の背中を二人が見つめていた。
「……一歌ちゃん、ごめん……ごめん、ね……」
震える穂波の肩を抱きよせる志歩の表情は苦々しく、足取りも重い。校舎に足を踏み入れた頃、穂波のスマートフォンがメッセージの受信を通知していた。
『宮女制服のケツ4個並べてパコりたいって人がいたんだけど、いっちゃんも呼べそう?』
『来れたらほなちゃんの好きなドリルバイブと志歩ちゃんの好きなくすぐりハメしてくれるって!』
『あとアタシもう学校に履いてけるスカート残ってないから、ほなちゃんの予備ちょうだい~』
終