極上むっちむち高身長人造ボディ宇宙人さんの楽園実験録・前 (Pixiv Fanbox)
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「……被検体が意識を戻した。バイタルに異常が無いかの確認を行う」
──朝、目が覚めると、まず瞳に映ったのは、見慣れた家の天井ではなく、見知らぬ女の顔だった。
気怠げに目を伏した、怜悧な吊り目の、美女。
奇妙に光るぴっちりとしたボディスーツに、上から羽織った白衣が特徴的な、豊満に肥えた雌々しい肉付きを隠そうともしない、見知らぬ極上の雌。
──その姿を見た途端、僕は心が折れるような、あるいは負け犬のように屈服するような心地を覚えた。
起きてすぐ、一瞬のことだった。
男にとっての理想とも言える、その謎の女の美貌は、そして体つきは、生物としての格の差を知覚せずには居られない。
例えば、もし彼女が、気まぐれに僕を蹴り上げたなら、僕はぐちゃぐちゃに弾けてしまうだろう。
もし彼女が、その手で僕の頭蓋を掴んだなら、少し力を入れるだけで、生卵を握り砕くかのように、いとも簡単に潰れるだろう。
彼女は、とても大柄だ。
僕が立ったとしても、並んでみれば、彼女の胸のあたりまで──下手をすれば、股のあたりまでしか届かないほどの、覆しがたい身長差がある。
だから、順当に、力では勝てないだろうし──それ以上に、体の大きさを考えてもおかしいくらいの、タワービルを打ち砕く重機のような、人智を超えたとてつもないパワーが、彼女にはある。
理屈は抜きにして、そう感じたのだ。
きっと、彼女は人間よりもずっと上位の、人間に似ているだけの生物なのだろう。
女神か、はたまた天使か淫魔か。
でないと──彼女がこれほどまでに、人智を超えて美しいことにも、威圧感すら感じるほどの、不可思議で強烈な、匂い立つように淫らな魅力に溢れることも、まるで説明がつかない。
「……脳波は安定状態、心拍数も平常値をキープ。見たところ、被検体はリラックス状態にあるものと思われる。この様子なら、鎮静薬の投与は必要なかったかもしれないな」
女は、側でかちゃかちゃと、宙に浮く機械を弄くりながら、誰かと会話しているかのように虚空に話しかけている。
まだ寝起きで、眠気が残る頭には、彼女が言っていることの意味は分からない。
きょろきょろと周りを見回しつつ、その声に口を挟むことなく、黙って女の言葉を聞き流した。
部屋を取り囲む白い壁には、幾何学模様に繋ぎ目のようなものが走っており、そこから時たま近未来的な青白い光が流れている。
そして、その光のエネルギーのようなものは、端の方に固めて配置してある、妙な機械に流れ込んでいた。
少しだけ地面と反発するように浮いている、正八面体のクリスタルのような、用途も何もかも、よく分からないもの。
多分、僕の知らないテクノロジーで作られている、SF的な謎の機械。
──ここは、少なくとも、僕の家ではない。
寝る前は、確かに自宅のベッドに居たはずなのだが。
ピッ、ピッ、と定期的に聞こえる機械音から、もしかすると病院なのかとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。
だとしたら──もう、思いつく場所は、何もない。
研究者らしい女が側にいることからも、ここは何らかの施設だと思われるものの、それ以上の情報が、何一つない。
──僕は、夢でも見ているのだろうか。
あまりに非現実的な光景に、思わず首を捻り、ベッドから身体を起こした状態のまま、ぼんやりと俯いた。
今まで気がつかなかったが、僕はどうやら、入院している患者が着るような、いわゆる病院着のようなものを着させられていたらしい。
肌触りもよく、着心地はとてもいい。
僕が着ていた服がどこに行ったかは知らないが、これ、寝間着に貰えないだろうか。
何もかも意味が分からない状況に遭遇すると、人は意外と暢気なことを考えるものだ。
他に、考えられる部分が一つもないから。
そんな気づきを得つつ、自分でも不思議なくらい、いやに落ち着き払って、僕は寝間着のボタンのかけ違えを直した。
「……ああ、ああ。分かっている。速やかに実験を始める予定だ」
謎の女は、こちらに目を向けることもなく、静かに何かの作業に没頭していた。
タブレットを叩くように、空中に浮かぶ光の板を使い、誰かと通話をしつつ、忙しなく手元のバインダーを確認。
そのまま、白衣のポケットからペンのようなものを取り出し、しゃっと大きく丸をつけた。
──忙しそうだ。
もし声をかけるにしても、後の方がいいのかもな、なんて見当違いなことを考える。
女は、いくつもの機械を平行して扱いながら、何をしているかは知らないが、間違いなく『何か』をしている。
その事だけが、この訳の分からない状況の中で、確かなことだ。
部屋を見回したが、得られた情報は、そのくらいだ。
「……ん、これが被検体の生態情報と、この惑星の文明の簡単なレポートか?見る限りでは、我々の文明に比べて、かなり技術も文化も未発達のようだが……」
いや、それと、もう一つだけ、理解できることがある。
それは──女の、耐え難い色香。
女の声が耳に届く度、腰骨がぞくりと震えるような、異様な興奮を覚える。
どうせ内容を理解できることはないだろうから、彼女の話し声に聞き耳を立てている訳ではないものの、この部屋では他に聞こえる音もないので、どうしても意識して聞いてしまうのだが──もう、会話している訳でもないのに、脳が蕩けるような心地を覚えている。
その、女性的な蠱惑を纏いながらも、低く落ち着いた声色。
その声は、こんな訳の分からない、危機感を覚えて然るべきな状況にありながら、心の底から安心して、ともすれば眠ってしまいそうになるほど、毒にも思えるくらいに耳心地が良い。
しかし、そんな安堵を抱かせる揺らぎがありつつ、どこか妖艶さを孕み、獣欲を奮わせて、がむしゃらに彼女の身体を求めたくなるような、粘りつく甘さも含まれている。
──脳に送られるはずの血が、どくどくとペニスに送られる。
きっと、僕が本来すべきことは、考えて、考えて、ここから脱出することなのだろう。
あるいは、女の目的や、僕がここに居る理由を聞き出すか、女の一挙手一頭足にまで警戒を張ることか。
しかし、抱いて当然の危機感を覚えることもなく、僕はただ、彼女に魅入っている。
僕よりずっと大きな体躯に、目眩のするような、化け物じみた美貌。
ぴっちりと張り付くボディスーツが、見るも下品な膨らみにより、ひどく猥褻なボディラインを描かせる、途方もない大きさの雌肉の塊。
ただただ、ひたすらに、見惚れるだけだ。
「……なるほど、被検体が拉致されているにも関わらず、妙にくつろいでいるのはそのためか。元々、知性には乏しい種族なのだな」
ちらり、流し目がこちらに向く。
明確に、僕に向けた、嘲りの言葉。
そして、侮蔑の込められた、視線。
それを聞いて、僕は──大きく、恍惚に震える。
その視線の、冷たく艶やかなこと。
長い睫毛に額縁のように彩られた、グラデーションのように色を変える瞳が、何とも言えず美しい。
ずっと、見ていたい。見られていたい。
その、静かな目を、侮蔑でも何でもいいから、こちらに向けていてほしい。
──もう、虜。
恐らく、彼女の肉体は、取り返しのつかない猛毒でできているのだろう。
それも、麻薬のようにひたすら甘い、媚毒。
──危険だ。
見ちゃいけない、聞いちゃいけない。
彼女の全てを、遮断しなければならない。
でなければ──全部、奪われる。彼女の操り人形になる。
なんて、今更そう気づいたって、どうしようもない。
惚れて、惚れて、惚れるしかない。
狂うほど、恋い焦がれるしかない。
彼女は、恐ろしい、人食いの化け物だ。
今なら、右手を挙げろと言われれば挙げるし、自分の首をへし折れと言われればへし折るだろう。
それくらい──魂そのものを、食われていた。
まだ何も、何もされてはいないのに。
「……ふむ、本当にリラックスしているようだ。この星の生き物は、皆これほど警戒心のないものなのか?」
呆れたような、声。
それに反応して、とろんと目尻が下がり、脊椎に恍惚が走る。
同時に、こつこつと、硬い床をヒールで叩き、女はこちらに近寄る。
脳の奥が痺れるほど、嬉しい。
彼女がこっちに来てくれるだけで、脳細胞がぷちぷち潰れるくらい、歓喜してしまう。
目が合うだけで、完膚なきまでに、惚れる。
声を聞くだけで、脳がびりびりと、恍惚に震える。
こちらに近づくだけで、泣き出してしまいそうなほど、嬉しい。
──恐ろしい。
淫魔に睨まれた獲物というのは、きっとこういう気分なのだろう。
他人事のように、そう思った。
「自分の置かれている状況すら理解できず、正しく恐怖することすらできない……」
……どっぶるんっ……♡♡♡
むちむちみちぃっ……♡♡♡
ただ、歩いただけ。
それだけで、重たげに、迫力たっぷりに、満ちた雌肉が揺れる。
豊かに実りすぎた、魅惑のもっちりふかふか乳脂肪。
視覚だけで、零れるような蕩めきを伝える、甘え甲斐のありすぎる大きな肉房。
授乳のためという役割を完全に逸脱した、鈍器のように重く肉付いたそれが、ゆっさゆっさと跳ねながら、近づいてくる。
さっき、横から視姦していた時よりも、ますます巨大に感じる。
そう、横からどばいんっ……♡♡♡と主張強めに突き出した、自己顕示しまくりのS字を眺めるのも凄いが──正面から対峙すると、尚のこと凄まじい。
頭より大きい、なんてレベルを軽々超えている。
肩幅のラインよりも膨らむほど、横幅たっぷりに肥え太り、それでいて、谷間に三十センチ定規がすっぽり収まるほどの、とんでもない長乳爆乳。
唸るほどの下劣さをひっさげた、交尾専用の抱き心地全振りやわとろもっちりボディ。
この一瞬で、生唾を何度飲んだか分からない、文字通り贅の限りを尽くした、魅惑の贅肉を晒しながら、女は近づいてきた。
「それどころか、勃起、してしまうとは……よほど、知能が劣っている証拠だ」
むっっっちぃぃぃ……♡♡♡♡♡
ぎっち♡♡♡ぎっち……♡♡♡
ボディスーツが悲鳴を上げる音が、聞こえる。
それは、伸縮性に乏しい、エナメルのような素材なのだろうか。
ぱっつんぱっつんに張り詰めて、それでも内側から、恥知らずなまでのデカ乳が、いじめ抜くのだ。
もし、その服に喉があったなら、大声で苦痛を叫んでいただろう。
それほどの、規格外のデカパイ女が、僕を嘲っている。
侮り、侮蔑して見下している。
どう考えても、色欲狂いのバカメスオナホはお前だろうと、オーディエンスが居たら総スカンを食らいそうな言葉を、僕に投げかけている。
それでも──苛立ちや反発は、無かった。
その通り、だからだ。
女は、確かにその体格は交尾をすることしか考えてないものだが、それでも人間よりずっと優れた生き物──の、はずだ。
本能的に、そう確信を抱くような、生物としての隔絶した格差が、そこには確かにあった。
──思えば、僕に手錠や拘束具が着けられていないのは、それが理由なのかもしれない。
どれだけ不意を突かれても、どれだけ打ち所が悪くても、僕のようなただの人間が暴れた程度では、傷一つ付けられないという確信があるのだろう。
「……まあ、余計な手間をかけさせ、私の機嫌を損ねないという点では、ある意味賢いのかもしれないがな」
ぎ、しっ……♡♡♡
僕の寝ているベッドの側の、小さく簡素なパイプ椅子。
それにまるで合っていない、特大サイズかつ最高級のとろふわ肉質な安産型デカケツが、窮屈そうに乗せられる。
もったりと重たい駄肉を、椅子の座面から四半分ほどはみ出させながら、ぶっっっ……とい太ももを組みつつ。
もっちもちの股肉を見せつけるように、淫乱娼婦のサービスじみた体勢で、こちらを睨みつけるような目線を送る。
しかし、そのくせ首から上はクールそのものの表情で、芸術品じみた美貌を損なうことなくキープしている。
下品なエロスを極めたような土偶体型と、対をなすように神秘的な、ため息を吐くような美しいかんばせ。
珠のようなすべすべのもち肌、高く通った鼻梁、むっちりぷるんぷるんの潤いに満ちたパールピンクのリップ。
何もかもが、心を惹きつけて、捕らえて、離さない。
瞬きすらも惜しいほど、目線を釘付けにして、離してくれない。
「……ふむ、やたらと呆けた顔をしているが、見惚れているのか?呆れるほど単純な生命体だな……」
──もう、殺されてもいいぐらい、一目惚れ。
彼女の言うことなら、何でも聞く。
奴隷にしてほしい。足を舐めさせていただきたい。
そんな危険な思いを植え付けられるくらい、僕は彼女の全てに、虜になっていた。
もちろん、それがどれだけ間違ったことか、危険なことか、理性で理解はしている。
見知らぬ施設で今しがた出会った、人間かどうかすらも定かでないほど得体の知れない女に、あまりの美しさから、一目で隷属を誓いそうになるだなんて、どう考えても異常そのものだ。
けれど、仕方が無い。
だって──それが自然に思えるくらいに、彼女は美しかったのだから。
「……まあ、いい。その方が、実験には適しているだろう」
ぱたん、と。
女は手元のバインダーを閉じ、僕に視線を集中させた。
ずくん、と心臓が高鳴る。
僕に、彼女の意識が向けられている。
そんな小さな事が、途轍もなく嬉しくて、思わず顔がほころんでしまいそう。
──けれど、口元が緩みそうになるのをぐっと堪えて、努めて平静を保つ。
目の前にある極上の女体に甘えたくなるのを、血が出そうなほどに歯を食いしばって、血涙を流すほど我慢して。
僕は、聞かなければならない疑問を、口にした。
──あの、実験って、なんですか……?
度々、女が口にしていた、その単語。
彼女の着ている白衣に似つかわしく、その格好や言動からして、言葉として不自然さはないが──それを向けられている対象が。
つまるところ、実験という言葉の対象が──僕であるような、そんな嫌な予感がしているのだ。
──あと、ここ、どこですか……?それに、貴方は誰……?
一度疑問が口をつくと、もののついでとばかりに、押さえ込んでいた他の疑問が、次々と後を追って飛び出す。
恐らく僕をこの部屋に押し込めたであろう、目の前の彼女の機嫌を損ねないように、なるべく刺激しないように、態度は下手に出るように、なんて魂胆も忘れて、詰問するような勢いで。
──う、あ、いえ……。もちろん答えられないなら、全然、いいんですけど……。
しかし、鋭くこちらを見つめる目線に、すぐ頭は冷えて、またベッドの上で縮こまるように、小さく布団の中に腕をしまい込んだ。
自分では落ち着いているように思っても、やはりこの異様な状況に、精神的には少し狼狽していたようだ。
「……ふむ」
女は、静かに目を閉じて、少し考え込む素振りを見せる。
そうしてから、ため息を一つ吐いて──僕の首を、静かに掴んだ。
「どうやら、自分の立場を理解できていないようだな。お前には、余計な事を喋る権利はない。当然、勝手に質問する権利も、私の許可無く呼吸をすることすらも。ここに居る限り、お前には、ありとあらゆる人権は、ないと思え」
──格別に、機嫌を損ねたわけではない。
ただ、彼女は事実を言っているだけ。
彼女にとって、何か苛立つことをしていなくても、気まぐれに殺し、捨てても許容される。
──お前はと私は、そういう関係だ。
そう、彼女は言って、試してみせているのだ。
ここで、これを捩り切ってもいい。
そうデモンストレーションされて、息が詰まり、冷や汗が背中を流れ落ちる。
手には力を込められている訳ではなく、呼吸も問題なく行えるが、しかし酸素が上手く吸えない。
ほんの少し、彼女がちょっと気が向いて、その手を思いっきり捻ったら。
彼女に、快楽殺人の趣味があったなら。
今まで想像もしたことのなかった、死という概念が、これほど身近に近づいている。
──それを知って、理解して、自分の中で噛み砕いて、なお。
僕は、彼女自ら、僕を命ごと手折ってくれるかもしれないという事実に──静かに、深く、噛みしめるような悦びを覚えた。
それほど、どうしようもなく、堕ちていた。
「……まあ、わざわざ現地で調達した生体サンプルを、殺して処分することは滅多にないがな。これは、言ってしまえば、ただの脅しだ。躾、と言ってもいい」
ぱっと、手が離される。
それと同時に、背中から張り詰めていたものがぷつりと切れ、どさりとベッドに尻もちをついた。
心臓がきゅっと竦み、縮む。
色濃い死の恐怖から解放され、冷え切った肝に血が通う。
ど、ど、ど、と心臓が異常なリズムを刻む。
いくら、心ごと囚われている相手にでも、殺されるのは、やはり怖い。
そう、怖い。
確かに、僕は、生まれてから最大の恐怖を、今しがた味わった。
死というものは、生物にとって、最も恐ろしいものだ。
全ての終わり、自らの存在の否定。
それは何よりも忌避すべきものであり、どんな手段をもってしても回避しなければならない。
それを象徴するように、人間の生命活動の全て──食事や睡眠や、仕事や勉学や、果ては娯楽──は、命を繋ぐために行っているのだ。
つまり、死を遠ざけ、生き長らえることそのものが、快楽。
それを、僕は知っている。
しかし、それでも──僕は、彼女に命の糸を握られることに、おかしな中毒感を覚えてしまった。
今、殺すかもしれない。
全部、彼女の手によって、僕の全てを奪ってくれるかもしれない。
そう思ってしまうことそのものが──人間の本能を超えて、彼女に惚れている、その証左に他ならない。
「殺されるかもしれない、という根源的な恐怖を教え込む……。実に原始的で、それ故に良く効く方法だ。自分よりも上位にあると認めた存在に、死という最大のペナルティをちらつかされたなら、知性ある者なら誰しもが、ある程度は卑屈に振舞うようになるものだ」
──余程のことがなければな、と、彼女は言葉を付け足す。
全て見透かしているような、深い眼差し。
指を、すっと首に近づける。
先程と同じ軌道を、なぞるような動き。
──次こそ、締める。
それは、人間として、そして生物として、欠陥品としか言いようのない欲望を抱く僕に対して、そんな脅しのメッセージを送っているようにも思える。
最終処分、つまり廃棄のメッセージ。
それに対して、僕は怯えることも、恐怖して取り乱すこともなく。
静かに、首を、差し出した。
「……逆に言えば、殺されてもいいと思えるほどに、心の底から屈服した相手には、この行為は何の意味も持たない。お前のような、色惚けの雌狂いには、な……」
──彼女は、小さく、にやりと笑う。
そうして、人差し指だけを突き出して、喉元を、すり撫でる。
従順に対しての、ご褒美。
その動きは、どう考えたって、そうとしか思えなくて。
脳みそが、かぁっと熱くなって。
「……生物としての本能すら失ったか。となると、頃合いかもしれんな」
──ずくん。
突然に湧き起こる、吐いた息を吸えないほどの、強い衝撃。
ばく、ばく、ばくん、と心臓が弾けそうなほど鳴り、全身の血が沸騰する。
急激な肉体の変化に、戸惑うことすらできない。
いや、正確には、それどころではない。
目を見開きながら、動かない身体に鞭を打ち、かろうじて首を前け、彼女の姿を見る。
──おっぱいでっか……♡♡♡えろっ……♡♡♡
尻肉すごすぎっ……♡♡♡絶対交尾気持ちいい……♡♡♡
抱きたい、抱きたい、おっぱい死ぬほど揉み散らかしたいっ……♡♡♡
お嫁さんになってほしい、子宮に種仕込みまくりたいっ……♡♡♡
おっぱいに乳内射精、おまんこに膣内射精……♡♡♡全部、全部孕ませて、僕のものにするっ……♡♡♡
ああ、もう、抱く……♡♡♡死んでも、殺されてもいいから、絶対抱くっ……♡♡♡
興奮、興奮、勃起、勃起。
一瞬で、喉がからからに干上がり、生殖本能以外の全てが消え失せる。
「……鎮静剤の効果が、ようやく切れたな。意外と長持ちしたが……この生物には薬剤が効きやすいのか?だとすると、都合が良いな……」
熱された鉄のように、勃起がひたすら硬く、熱い。
精嚢が、ぱんぱんに張りを持っているのが分かる。
金玉が、あまりの興奮に精液を作りすぎて、ずっしり重い。
今までは確かに保たれていた、脳の冷静な部分が、消えてゆく。
目の前の極上の雌にひたすら虜になり、全身に蓄えられた全ての栄養やエネルギーを、ただこの雌を孕ませるための繁殖準備を整えるという、原始的な欲求に変換されていく。
──う、あ、すごっ……♡♡♡肉、すごすぎ、あっ……♡♡♡でるでるでるっ……♡♡♡
ぴゅる、ぴゅるっ……♡
ズボンの中で、どくどくと、極上の美女にめいっぱい射精するため、過剰に生産された精液が漏れる。
勿体なくて、歯がゆくて、焦らされているようで、ぽろぽろと情けなく涙をこぼす。
目の前の雌に捧げるための精子が、溢れていく。
あのぶっとく肉付いた、丸太のような股肉で、コキ射精すはずだったのに。
あの楕円を描くほどに長い、まろやかなコクに溢れた、もっちりひしゃげるデカパイで狭射し尽くすはずだったのに。
あの広い骨盤に余すところなくまぶされた、至福の贅肉に腰を練りたくり、子宮にべっとりなすり付けるように、種付けするはずだったのに。
皮算用にも程がある、しかし有性生殖を行う生物として、絶対に願わずにはいられない欲望に振り回され、知性がごっそり抜け落ちる。
──抱く。抱く。両腕をいっぱいに広げて、あの雌肉全部抱き潰す。
まさか許されるはずのない、恥知らずで身の程知らずな、下劣すぎる願望。
思考に浮かべた瞬間に首を刎ねられても仕方の無い、あまりにあけすけな欲が、とめどなく湧き上がる。
「性的欲求を抑えてやる薬が切れたら、この有様か……。少なくとも知性という点においては、銀河系に存在する知的生命体の中でも、最低クラスと言えることが証明されたな」
──性的欲求を抑えるための、薬。
そんなものを投与された記憶はないが、きっと、ここに連れてきた時には既に、僕に打ってあったのだろう。
でなければ──まともに、会話もできない。
それどころか、呼吸も何もかもままならず、ただ彼女の肉体で、射精をすることしか考えられない。
彼女の肉体のあまりの魅力が、僕を白痴の射精狂いにすることを、彼女はとっくに知っていたのだ。
先程まで、殺されるかどうか、生かしてもらえるよう媚びるかどうか、ということを恐怖しながら考えていたくせに。
知らぬ間に与えられていた、恐らくは、性欲を極限まで抑えるような、そんな薬の効果が切れたら、これ。
対話をするために、彼女が与えてくれた慈悲を引きはがされて、素のままの自分で接したなら──もう、その色香に脳が屈服、繁殖以外の全てが抜け落ちる。
僕の、ありとあらゆる何もかもは、彼女の手のひらの上。
恐怖すら、あるいは平静すら、仕組まれたもの。
もう、僕は正しい意味での、操り人形そのものだった。
目の前の彼女は、やはり──魔性。
その一言に、尽きた。
「……まあ、当然、薬が切れたら、そうなるだろうとは予測済みだが」
好みの顔。
ただでさえ、美人。
それに付け加え、ど真ん中にタイプな目つき鼻立ち。
──それを、雲を突き抜けるくらい、数字じゃ足りないくらい、ひたすらに突き詰めた、最上級。
自分の中にある言葉を尽くして、一億倍過剰に表現しても、なお足りない、人外の美貌。
それが、そっと近づいて、僕の目をじっと見つめている。
僕に注視して、品定めをするように、目線を合わせて眺めている。
「私の身体は、お前を最も効率よく支配するために作られているものだ。一瞬たりとも視界に入れば必ず虜にし、ひとたび触れれば思考能力を奪い、絶対にお前を隷属させる……」
──鼻から一筋、血が流れるのを感じた。
性的なことと関係なしに、興奮しすぎている。
それこそ、虚弱な毛細血管が傷つくくらい。
ただ、彼女に見つめられているだけなのに。
しかし、それすらも、想定通り。
地球に住む人間として、例え麻薬や違法の興奮剤を使ってもなお、誰一人として味わったことがないであろう、異常な興奮すら。
彼女が望み通りの、紙面上で計算可能な、当然のことだった。
「そう……何せこの身体は、この宇宙で最も優れた知的生命体である我ら星団の中でも、特別に優れた能力を持つと認められた、銀河管理局員である私が、直々にデザインしてやったものだ。お前のような下等生物が、自ら私に肉体と思考の支配権を捧げるように、ヒトの雌では再現不可能なほど、自然発生する可能性のないほどの水準で、格別に魅力的に、な」
蛇に睨まれたカエルのように、指先の一本まで、動かない。
身体が石にでもなったのか、思考だけがぐるぐる回って、今すぐあの広い胸に飛び込みたいのに、できない。
もしかすると、僕なんかの浅ましい思考など全て読まれているから、何か見えない力のようなもので、知らず知らずのうちに縛られているのかもしれない。
だって、そうでなければ──絶対に今頃、殺されている。
この淫らな悪魔に、殺されるようなことを、絶対に、しでかす。
「我らは元々、実体を持たない生物だ。ただ知性だけがある、思念体のようなもの。それが、わざわざお前のような劣等種族と対話するため、肉体を用意してやったんだ」
ぺらぺらと、勃起に思考能力を奪われた僕に対して、独り言のように語りかける、女。
だが、その雌々しい肉体は、彼女が作った、言わば粘土細工のようなものだ、と。
彼女の宇宙的頭脳を駆使して、また銀河系を容易く往復する技術を尽くして──わざわざ僕を魅了して、勃起させ、興奮させ、交尾の欲求を高めるため、むっちり下品な雌のカラダを作った、と。
恥ずかしげもなく、そんな馬鹿馬鹿しくて、僕にばかり都合のいいことを言うものだから。
僕は──ますます、腰をぶるりと震わせて。生唾を飲んだ。
「何故ならば、それが最も効率的だからだ。なにせ今から行うのは、お前の人権全てを、私に捧げさせる行為なのだからな」
──目の前の女が、何かを言っている。
僕を誘惑して、腑抜けにするための、淫魔のささやきだろうか。
もう、言葉の意味を理解するほどの余裕は、残されていなかった。
ただ、その爆乳がたぷつき、その巨尻が椅子で潰れるのを、ひたすら網膜に焼き付けることばかりを、脳のリソースに割いている。
その豊満すぎる女体の感触を、本当に命がかかっていてもこれほどまではというほど、必死に妄想することに、脳が総力を挙げている。
当然とも言える、最深の魅了状態。
何故ならば、目の前の肉体は、宇宙規模の超兵器と同じ。
一発放てば、地球を星ごと破壊するような、そんな兵器と同列に──地球人の技術、そして素材ではありえない、むっちりふかふかで艶々もっちりな、究極の雌肉だから。
そんなもの──枯草しか食べたことのない、野生の野良犬に、超高級ドッグフードを食べさせるようなもの。
あまりにも、雌としての次元が、違いすぎる。
だから、仕方がない。
薄っぺらなボール紙一枚では、どうやっても銃弾は防げないように、人間の虚弱で単純な理性には、彼女のむんむんと匂い立つ豊満なラブドールボディは、あまりにも毒だ。媚毒だ。
つまり、僕がこうして──屈服して、懐くのも、自然なことだった。
──下等生物。扱いやすい奴隷種族。取るに足らないもの。
この姿を見れば、彼女の言うとおりだ。我が事ながら、何の異論もない。
むしろ、対話を試みてくれている時点で、聖母にも勝る慈悲深さだと言えるだろう。
最も──当の本人は、そんな慈悲も受け取れず、ただ勃起しているだけであるが。
「ああ、そうだ……私の目的、正体、そしてお前の処遇。それが聞きたいのだったな。実験動物に、そんなことを聞かせる理由もないが……まあ、それくらいは、教えてやってもいい」
そっと、耳元へ。
女は、顔を寄せ、囁く。
身を寄せ、乗り出したことにより、視界には──ぴっちりスーツ越しにも覗く、深すぎる谷間が、いっぱいに広がっている。
本当に底なしに思えるほど、深く深く、幅広な乳。
どこまでも雄を受け入れる、母性たっぷりの、ゆりかご。
スーツの締め付けに、ぐにゃりと歪む柔らかさが、ひたすらちんぽに悪い。
扱きたい。
あの谷間にちんぽ突っ込んで、めいっぱい腰を振りたい。
腹上死するほど射精したい。あのデカパイに絞り殺されたい。
──どくっ……♡♡♡どくっ……♡♡♡どぽっ……♡♡♡
半固形の糊のように濃く、尿道にひっかかるほどの精液が、どぱどぱと漏れる。
その声の艶めき、そして目の前に広がる淫猥すぎる光景に、ひり出すのを止められない。
──だめだ、聞かなきゃ。
きっと、この女性は、人間の身体を使って何か悪いことをするために、自分を攫ったのだ。
でなければ、こんな──こんな、身体をしている訳がない。
下半身で考えた、暴論とも言える理屈であったが、奇跡的に、それは正しい。
言葉も聞こえないほど、僕が興奮しているのは、この女の計略に他ならない。
それは、既に彼女が口にした、とっくに公開済みの情報であるが──ただ、僕の虚弱な理性が、その言葉を取りこぼしただけ。
だから、教えられたその情報すらも、自分で気づく必要がある。
情けない、知性の低い、下等な生命体。
彼女の言った、その通りであった。
「端的に言えば、私は……とある星からやってきた、侵略者だ。お前の星を、滅ぼしに来た」
──侵略。滅ぼす。
その言葉の意味くらいは、今の僕でも理解できる。
僕の生まれた星が、滅びる。
そうなれば、僕は、いや人類は──皆殺しか、奴隷となるか。
母星から出ることもままならない弱者は、至極当然に、そうなるに決まっていた。
「……察しての通り、我らの目的は二つ。お前の星に住む、人間とやらを全て捕虜にし、奴隷として売りさばくこと。それから、人類が滅んだ後のお前の母星を、我らの植民地として作り替えることだ」
あまりに突然な、終末。
しかし、それ知ってなお、僕は──ああ、なるほど、そうか、と。
いやに納得してしまい、性欲に茹だった頭を冷やすには、足りなかった。
──いや、きっと、僕は彼女の言葉を聞き、それを初めて理解したのではない。
ずっと前から、彼女の姿を見たその瞬間から、本能的に僕はそれを知っていた。
彼女の言葉は、ただ、僕の勘が出した結論を、裏付けただけだ。
──彼女は、人間ではない何か。
その正体は、エイリアン。宇宙人。インベーダー。
だから、何だと言うのか。
目の前の女性に、僕はどうしろと言うのか。
「それらは既に、決定事項だ。私にも、そして当然お前にも、覆す術はない」
ぎし、と。
女は脚を組みかえ、ただ冷酷に、述べる。
手短に、有無を言わさず。
目の前の惨めなオスが──もう、どうしようもないことを、告げる。
「ただ……人類の処遇を決めるのは、お前次第とも言えるだろう」
すっくと立ち上がり、こちらを見下ろす、冷たい瞳。
僕に対して、何の感慨も情も抱いていない、そんな目が、ただ僕を射貫く。
──女の右手には、いつの間にか、注射器のようなものが握られている。
それが、誰に打たれるのか。
そして、それが何を意味するのか。
当然、答えは一つしか無い。
「お前は、実験動物だ。弄くり回し、確かめるための、サンプルだ。先程も伝えた通り、この母船では、お前に人権など与えられない。心しておくように」
女は僕の隣に座り、躊躇なく、針が僕の腕を刺し、ピンクの薬液を注入する。
──痛くは、なかった。
もしかすると、僕が興奮しすぎていて、痛みに対して鈍くなっていただけかもしれない。
しかし、その手つきは──ある種の優しさというか、弱者に対する哀れみというか、僕を無闇矢鱈に痛めつけ、苦痛を与えるのが目的ではなさそうな、そんな予感を僕に抱かせた。
女は、さっと患部を拭き、慣れた手つきで処置をしながら──おっぱいを、たぷんたぷんと揺らしている。
隣に座られ、改めて感じる、彼女の大きさ。
『巨』という言葉がよく似合う、乳、尻、太もも、そして躯。
彼女はひたすら脚が長く、腰の高さもモデルのようであるのに、僕と座高を比べると、まるで母親と幼児のよう。
見上げるような、大きな女体は、健康的すぎるほど肉付いて、逆転不可能な力の差を感じさせる。
しかし彼女は、僕を武力で支配する気は、今のところはなさそうだ。
その証拠と言えるかは分からないが、明らかに不埒な目で、彼女の言葉を聞きもせず、身体ばかりをじろじろと視姦しているのを、その腕で咎めたり、殴ってきたり、押さえつけてきたりはしない。
ただ、どっしり大きな尻で、僕の倍ほどもベッドを占拠して、じっと。
じっと、猫か犬かを観察するように、眺めている。
「さて……実験動物であるお前には、地球人の習性について調べさせてもらおう。奴隷、もしくは家畜として飼育する場合の、効率的な飼い方を実験する」
──ほんの少し、身体を傾ければ、もたれかかってしまえるほど、近い。
まるで気を許した友人のように、あるいは長年連れ添った恋人のように、彼女は僕に寄り添って腰掛けている。
腕を伸ばし、立ち上がり、抱きつくことはできなかったけれど。
ほんの少し力を抜いて、ただ倒れ込むことが、できないはずはない。
視線を、ちょっと斜め下に向ければ、包容力たっぷりな、暖かそうにむっちり蒸れた太もも枕。
そして、もっちり肉土手がスーツ越しに浮き上がる、いかにも受け入れ準備の整った、至極当然に下着などつけていない着衣おまんこ。
そうなれば、当然。
極めて、当たり前に。
飢えたハイエナの前に、最高級のサーロインを置いたみたいに、言うまでも無く。
──僕は、身体を傾けて、彼女の方へと倒れ込んだ。
「実験に対して、抵抗もしくは脱走の意思を見せた場合、容赦なく処罰を与える。何度も続いた場合は、廃棄処分も考えられるということを覚えておけ」
──女は、抵抗しなかった。
拒絶も、口頭での注意も、一切しなかった。
こちらを一瞥もすることなく、ただ台本で決められた台詞を吐くかのように、冷たく事務的な言葉を吐くだけだった。
許可なく呼吸したら、殺す。
そう宣言した彼女が、今の僕を殺さないのであれば──これが、許可以外の、何だと言うのか。
むっちりと実った、実りすぎた丸太のようなもも肉に、めいっぱい頬ずりをする。
溜まりに溜まった欲望を、吐き出すかのように、ずぅりずぅり。
恋人にしたとしても、百年の恋も冷めて幻滅されることは必至の、性欲にまみれた甘え方。
匂いを嗅ぎ、肉のもちつきを堪能し、両腕で腰を必死に抱きしめて。
脳みそを、ひたすら溶かして、溶かして、溶かす。
腰をベッドにへこつかせ、精液を吐き捨てて、股ぐらに鼻を埋めたまま、ぐりぐり、ぐりぐり。
──女は、怒らなかった。
「……お前に教えることは、それだけだ。実験動物として、忠実に協力するよう、励め」
頭に、そっと、大きな手が被さる。
僕の頭くらいなら、トマトの如く簡単に潰せる、万力のような手。
それがこちらに向かうのを見ていなかったこともあり、不意打ちのように頭に感触が乗せられて、少しだけ、驚く。
びくりと身体が震えると、その手も少しだけ驚いたように、一瞬だけ離れて──また、優しく、触れる。
愛玩動物を落ち着かせるように、優しく。
──もちろん、その手が、僕に危害を加えることはなかった。
「……お前の星の人間は、皆これほど色仕掛けに弱いのか?捕まえやすく、支配しやすいが、種としては劣等も良いところだろう」
──彼女の言葉など、耳にも入っていない。
そういう風に、彼女の身体は出来ているから。
その肉感を極めたような身体に触れたが最後、人間は脳が糖蜜漬けにされ、思考の一切が幸福に流される。
彼女の肉体は、彼女が今しがた語ったように、そのためのものだから。
性に惑わし、かどわかし、捕まえ、支配するためのものだから。
女の身体にしがみついて、よじ登るようにして、引き寄せる。
もっと、もっと、密着したい。
もう、思考なんて、理性なんて、これっぽっちも残っていない。
ただ、興奮と、性欲だけ。
虫けらみたいに、空っぽの頭で、ただ繁殖だけを求めて、雌性を凝縮した身体に、甘える。
きっと、女は拒否しない。
何故なら、その氷のような顔立ちは、まだ一度も不愉快そうに歪んでいないから。
まだ──僕が甘えることを、一度たりとも嫌に思っていないから。
「……となると、その遺伝子は不要だな。その汚らしく臭い汚液も、一応成分検査した後、全て廃棄処分とするか」
パチンと、女は僕を片手間に甘やかしながら、指を鳴らす。
すると、僕が寝ていたベッドのサイズが、写真加工で縮尺を引き延ばしたかのように、広く大きく拡張され、キングサイズ以上のものになる。
宇宙的な、超常の技術。
発達を極めた科学は、魔法と変わらない。
きっと彼女は、それこそ神のように、人間が想像できる程度のことなど、全て叶えてしまえるのだろう。
だが、僕には、その事実を痛感する暇も無い。
ベッドのサイズが広がったことすらも、僕は気づきもしない。
ただ、ひたすらに、心から──全身に快感を塗りたくるように、体中を擦りつけて、甘えに甘える。
彼女は、それを受け入れるように、拡大したベッドに自ら寝転ぶ。
僕が甘えやすいように、体勢を変えるため。
そのためだけに、彼女はその未知の技術を使い、僕に見せてくれた。寝転んでくれた。
その事ばかりは、めざとく彼女の優しさを感じ取って、更に興奮。
どこまでも、都合良く接してくれる、オナホ以上、ラブドール以上の奉仕精神に、射精した。
「……もし、お前が遠慮も羞恥も恥ずかしげもなく、許可も取らずに捲き散らしているその子種に、有用性が認められれば。お前達人間は、それを搾取するための家畜になるだろうな。そうなる事を祈るがいい。どうもお前は、これを排泄する行為が、よほど好きらしいからな」
──すきっ♡♡♡すきぃっ……♡♡♡
文脈も無視して、好き、という言葉に、反射的な反応を返す。
僕もすき。あいしてる。子供を作らせてほしい。
動物じみた、求愛行動だった。
──理性を失った獣のように、みっとり肥えた太ももに、腰を振る。
ひたすら太く、ただ座っているだけで、ぴっちりと股肉同士がひっついた、コキ穴。
すべすべ艶々なスーツの感触と、もっちり粘りつく駄肉の感触が相まって、腰が抜ける。
腰に手を這わせ、なで回す。
すべっすべで、余計な肉が少ないくせに、むちっと柔らかい。
その上、ほっそりと締まったくびれは、緩やかな曲線を描き、手をそこに這わせるよう誘導する。
もう、この腰そのものが、セックスをせがんでいるように思えて仕方が無い。
「……誰が、そんな事をしていいと許可した。私は忙しい、とっとと離れろ……と、言っても聞かないか……」
はあ、とため息をつく、女。
しかし、手だけは依然、僕の頭をよしよしと撫で回したまま。
例え渋々だったとしても、今だけは許可してくれている。
立場としても、単純な力としても、圧倒的な強者である彼女の、仕方なしの、許容。
まさに、忙しいご主人様に、訳も分からず遊びをせがむ犬猫そのままの、ひどく知性のない姿だ。
しかし──繁殖欲だけは、ペニスがめちゃくちゃになるくらいにそそられて、勃起が限りなく促進される。
彼女の身体は、どこに擦りつけても、気持ちいい。
よく育った雌肉に、みっとり密着して、抱きつくというのは──それだけで、際限なく雄欲を満たしてくれるものだ。
腹のまわりにある肉を、腕を回して抱きついたまま、ぎゅっと掴んで、揉む。
掴んでばすばすと腰を打ち付けるための、ハンドルとして使える肉だけは残った、神がかっていやらしい雌腰。
腰のくびれが、何故男の目からして、魅力的に映るかを理解する。
抱きしめた時の、自然にフィットする満足感が、段違いなんだ。
これは──セックスアピールなんだ。
「そこは、射精しても孕まない場所ではないのか?理解しがたいな、この星の生物は……」
呆れている。
太ももをおまんこと勘違いして、本気で孕ませピストンしている僕に、呆れている。
──でも、だって、仕方ない。
豊かに実りすぎてぱちんと弾ける、完熟したトマトの果実のように、スーツが雌肉でぱつんぱつんになるまで、こんなにむっちり張り詰めた、ぷりっぷりの太ももなんて。
目の前に、そんな特盛ボリュームの、幅広で太くて長い、性的魅力そのものの、御御足を突き出されたなら。
もう、腰を振らざるを、得ない。
抱き枕みたいに、ぶっとももに抱きついて、その抱き心地に酔いしれるしかない。
そして、当然、へこへこと膣内射精の準備をするに決まっている。
だって、射精を、そのもっちもちな感触と、艶っ艶の照りで、煽ってるから。
勃起を、そのあふれ出るフェロモンと、少し身じろいだだけで『ふるりっ……♡♡♡』『むっち……♡♡♡』とたぷつく肉感で、促進してくるから。
そんなことをされたら──思いっきり、腰を振りたくって、愉しむしかない。
「……はぁ、遠慮の無い奴だ。もう、そこまで懐いたのか……?」
──頭を、静かに、撫でられる。
嬉しそうに尻尾を振りながら、こちらに突進してくる馬鹿犬を、あやすような動き。
少しだけ面倒くさそうで、でも──愛情たっぷりに、少し嬉しそうに。
表情は不変で、声は冷たいけれど、でも、確かに、愛犬に対するくらいの愛情はあって。
僕は、もう──すっかり懐いていた。
ご主人様すき。ご主人様あいしてる。
彼女の目的も忘れて、彼女を崇めるほど愛して、恋して、全身で劣情をぶつけてしまう。
これでは、彼女の目論見通り、飼い犬でしかない。
地球の支配種たる人間のプライドをすっかり捨てた、犬。
それを見て、彼女は──少しだけ、ほっぺたを撫でてくれた。
「ひどく愚かだな、この星の人類は……。こんなものなら、滅ぼして奴隷にしてやった方が、身のためだろう。計画を、少し早めてもいいかもしれないな……」
すり、すり。
お腹に頬を擦りつけ、マーキングするように匂いを嗅ぐ、僕。
それに、ちょいちょいと指をこまねいて、彼女は離れるよう指図する。
──いやいやと、首を振ってしがみついた。
離れたくないとぐずって、むしろ強くだきついて、離れないと抗議した。
協力しなければ、厳しい処罰を下す。
場合によっては、廃棄処分もあり得る。
──そんな警告など、とうに頭からは抜け落ちていた。
僕よりも、ずっと上位に位置する者に対して、全く不適切な対応。
腕力でも、権力でも、僕の何百倍も強く、僕を殺すこともできる相手に、僕はなんて愚かな選択をしているのだろうか。
「……ふむ。まあ、そうだろうな。そうなるに、決まっている」
──でも、それでも、なお。
彼女は、怒らず、僕の頭を撫でた。
主人の言う事も聞かず、駄々をこねるなど、例えそれが飼い犬が行っていたとしても、叱りつけて然るべきのことなのに。
ましてや、奴隷扱いしている、卑しい実験動物がそれをしていたなら──その場で蹴り上げて、殺してやるのが、自然だろうに。
彼女は、ただ静かに、身体を起こすこともせず、そっと──僕を抱きしめただけだった。
きっと、理解していたのだろう。
ちょっとした言葉で、僕をどかすことはできない。それだけの知能が、残っていない。
何故なら、自分の身体がその為の肉体であることは、彼女が最もよく知っているから。
人間を堕落させ、精神を掌握しつくす身体を、研究を重ねて造り出したのは、他でもない彼女だから。
そして、その上で、僕をそっと抱きしめるという、その行為が。
人類を滅ぼすほどの、噎せ返る官能を秘めた、兵器とすら扱える女体に、全身をうずめられるという行為が。
どんな結果を招くなど、まさか、彼女に分からないなんて、そんなはずがなかった。
「ふむ、第一試験は、想定以上の結果だな……。まさか、命令に違反して私に殺されることと天秤にかけても、私に甘えることを選ぶとは……。愚かと言うほかは無いが、しかし、扱いやすく、都合がいい……」
ぎゅぅぅぅぅぅ……っ♡♡♡♡♡
深く、深く、抱きこまれる。
その、贅の限りを尽くすような、至福の肉布団へ。
──む、ぷ……♡♡♡♡♡
それと同時に、脳が沸騰するように熱く、甘く、溶ける。
ひたすらに乳臭く、フェロモンに満ちた汗に濡れた、しっとりもちもちの極上雌肉。
それが、まるで噛み締めるように、閉じて。
ぴっちりと閉じて、磨り潰して、もみくちゃに蕩かす。
その、至福の悶えを抑えられない、ひどく甘ったるい心地。
全身を使って、ぎゅっと女体を抱き締めて、けれど分厚すぎる女体とおっぱいに阻まれ、背中まで手が回ることもなく。
どたぷんと巨大に実ったおっぱいを、腕の隙間から贅沢に溢れさせ、上半身全てに至高の柔肉が満ちて──その全てを味わいきれないほど、強烈に、堪能。
みちみち、みっちり、沈むように埋まって──肺に溜まった空気を、全て捨てるように。
叫ぶほど深い、恍惚の極みのため息を、吐いた。
身もだえと連動する、ペニスの脈動。
安心感たっぷりな、全身を使って抱いてなお、勿体ないほど溢れる、艶々もっちりな女体。
そこに──とめどなく、どぼりどぼりと、濁った粘液を撒き散らす、優越。
普段の倍ほども濃い、孕ませるための精子がうじゃうじゃと詰まった、膣内射精すれば妊娠確定の精液を、ひたすら無駄にする快感に、大口を開けて浸り尽くした。
「あとは、どれだけ拘束に対してストレスを感じるかだが……どうにも、飽きる様子はないな。それともこの生物は、雌に寄生する習性でもあるのか?放っておけば、一生でもこのままへばり付いて、干からびて死ぬまで射精を続けそうなものだが……」
彼女は、身体をくの字に折り畳み、更に密着を深める。
声帯と身体が連動していないのかというほど、冷たい観察者の傍観を言葉にしつつ、ひたすらに体は甘やかす。
まるで──それが、必要なことであるかのように。
その理性と、優れた知能から繰り出された、研究に最適な行為であるかのように。
つまりは──それは彼女にとっても必要であり、例え僕がいくら無礼に、身体にしがみついて射精を繰り返しても、決して捨てないと宣言しているかのように。
乳肉の重み、もっちりとした肉々しい弾力、テープのような粘着感のある肌の吸い付き。
ひたすら快く、抱き心地を極めた、雄欲の全てを充足させる、雌。
だからこそ、五感の全てを快感に染めて、腰を腹肉に練りつけて、スーツと腹肉越しに、子宮めがけて孕ませ射精をするのが、やめられない。
もう、彼女の全てが、病みつき。
脳が溶ける匂い、柔らかさと弾力と吸い付きの黄金比を成立させたもち肌の触感、どたぷっ……♡とみっちり隙間なく肥えた雌肉同士がぶつかり合う重い音、肌に舌を這わせて堪能する桃とカスタードを足して割らなかったような味、そして全身どこを見ても雄を昂らせる肉付きの彼女のフォルム。
それら彼女の全てを、湯舟にでも浸かるかのようにリラックスしつつ、精通の瞬間のように興奮しながら、じっくり味わい、そうして彼女の至上の霜降り肉でペニスをこってりズリ扱くことができる幸福を、射精快楽と共に、直に脳に刻み付ける。
「……まだ、交尾もどきの射精を続けるか。睾丸に精液が溜まっていたら、排泄しないと気が済まないのか?何とも哀れな構造の種だ……」
──へーっ……♡♡♡へっへっへぇ゛っ……♡♡♡
大きく天を仰ぎ、蕩けるほど強い快感を表現するように、だらしなく開いた口から、舌をぴんと放り出して快感を貪る。
犬の鳴き声のような喘ぎを上げて、まさに夢心地。
背中までみっちりと、覆うように僕を抱く彼女の身体が、僕をしっかり包んで、まるで極楽の繭の中に居るようで──しかし、快感が苛烈すぎて、脳が溶けるほど幸せで、これでは地獄そのもの。
じゃぶじゃぶと、僕の心の器が決壊してもなお、バケツをひっくり返したような勢いで注がれる多幸感、快感、射精感。
それらに狂い、狂い果てて、それでもなお、気持ちいいのと幸せなのが終わらない、地獄の底だった。
ぎゅううぅぅぅぅぅっ……♡♡♡
きつく、プレス機のように締まる、抱擁。
最早、身じろぎ一つも許されない、苦しいくらいのハグに、心から悶絶する。
触れるだけで廃人待ったなしの身体に、思いっきり沈んで、囚われて、快感から逃げるための一切の術を奪われる。
きっと、彼女にとっては、子供をあやすような、ごく自然な力加減で抱きしめているのだろう。
ただ、生物としての格の差がありすぎるだけ。
根本的な膂力、そして身体の造りが違うから、優しく抱いても──下等生物にとっては、一切抵抗することができない、息苦しいほどの拘束になってしまうだけ。
──う゛♡♡♡♡♡あ゛♡♡♡♡♡漏れっ♡♡♡♡♡漏れるっ……♡♡♡♡♡
最早、ペニスを擦りつけることも、腰をへこつかせることすらも叶わない。
しかし、射精に至るには、あまりにも十分すぎるほどの、肉感の溢れ。
津波が押し寄せるかのように、途方もない質量を伴って、僕の身体の凹凸に従い、むっちり歪んで一切の隙間なく張り付く、こってり濃い雌肉の数々。
僕を悦ばせるためだけにある、究極にちんぽを煽る肉々しいコクを秘めた、無限に広がる宇宙の中でも有数の、オーバーテクノロジーによって造られた、僕にとって最もちんぽにキく感触、ボリュームの贅肉、駄肉に押しつぶされて──まさか、射精が止められるわけがない。
「抱けば抱いた分だけ懐いて、きりがないな。適当なところで切り上げて貰わねば、私の業務に支障が出るのだが……」
──そんな、無茶な。
そう文句を言おうとして──いくいくいくっ……♡♡♡お゛ぅっ……♡♡♡と、蕩けた喘ぎが先行して邪魔をする。
スライムに匹敵するほどべっとり濃く、しかも尿道を内側からむりゅりと押し広げるほどの量を伴って、精液が引っこ抜かれるように鈴口からぼとりと落ちる。
心も体も、すっかり求愛しまくって、懐き倒して、彼女の言葉に無茶だと抗議しているかのようだった。
どぽどぽ、お漏らしが止められずに、彼女の腹を汚し続ける。
最早、彼女の幅広な身体の器でも、精液を受け止めきれずに、ベッドまでぐちゃりと溢れるほど。
意識が何度も飛びかけるほどの、莫大な快感と多幸感に、脳みそを延々と溶かされながら、射精を続けさせられている。
心臓が、異常な早さで鳴っている。
腰が、ペニスが、脳みそが、全身が、何度溶け尽くしたか分からない。
もう無理というほど溶けきって、蕩けきって、それでもまだそれ以上に、溶けさせられる。
幸福感の上限が、無理矢理引き上げられているようで、堪ったものではない。
顔中が涙でぐちゃぐちゃになりながら、泣きじゃくりながら、駄々をこねるように、ひたすら彼女の身体に頬ずりをして、腰を練り付けて、甘えまくって、吐精快楽に浸りっぱなしになる。
──百年でも、千年でも、一万年でも、一億年でも、そうしていられる。
その感覚に飽きさせてくれないどころか、味わえば味わうほど、癖になって止まらない。
心の底まで中毒。魂が堕ちるほど幸せ。
屈服に屈服を重ねて、敗北と恭順の証を、どぴゅどぴゅと捧げ続ける。
延々と、延々と、そうしていた。
「……流石に、付き合いきれんな」
どぷ、どぷ。
腰が抜け、べちゃりと倒れ込んだまま、へこへこと尿道に残った精液をひり出そうと、へっぴり腰を使う。
それに合わせ、彼女は──ずぅり、ずぅり、ずぅり。
脈動のリズムに合わせて、精子をすり潰すように、太ももを互い違いに、三つだけ。
肉厚たっぷりに、しっぽりと、コいた。
──う゛♡♡♡♡♡う゛♡♡♡♡♡う゛♡♡♡♡♡
それに合わせて、重い喘ぎも、ちょうど三つ。
締めた喉から、漏れ出た声が、いかにも気持ちよさそうに震えた。
どっぷ、どっぽ、どびゅるり。
金玉の奥、精巣の底から、前立腺を甘くひっかき、根こそぎズリ抜かれる射精に、意識が朦朧とする。
いくら、無尽蔵に射精できるよう改造されたとはいえ、これほどの連続射精には、身体と脳へ大きな負担がかかっているようだ。
「……ふう、ようやく一区切りだな。繁殖欲だけ一丁前なのは、文明水準の劣っている証拠だ」
──億劫そうな、ため息。
ここに来てから、彼女のその面倒そうな仕草を、何度見ただろうか。
ぱっと、抱擁が解かれて、彼女との至福の密着がなくなる。
その瞬間、天国から地獄の谷底に落とされたかのような、深い絶望に堕ちて、あれほど興奮に跳ねていた心臓が、次は不安にけたたましく鳴り始めた。
あっ、と声を漏らしながら、離れていく肉体に手を伸ばすも、すっと立ち上がる彼女に追いつけず、ベッドにべしゃりと倒れ込む。
腰が抜けて、立つどころか、ほんの少し力を込めることすらできない。
彼女の身体に触れていないことに、極めて強い不快感を感じる。
あの、ふわふわもっちもちな、羽二重餅のような駄肉に、ぎゅっと抱きついていないと。
青ざめて、呼吸も浅くなり、必死に彼女に縋るように、腕だけを必死に伸ばす。
赤ん坊未満の身体で、赤ん坊未満の思考回路。
──たった一時間も経っていないはずなのに、これだ。
侵略者たる彼女に、侵略は非常に簡単で、支配は少しの時間があれば完了します、と、そう告げているようなものだ。
「馬鹿め……。私は最初から、お前の軽い初期観察実験のために来たと、そう言っているだろう」
見下ろして、一喝。
本来なら、実験動物に対して言う義理もない言葉を、わざわざ吐きつけてくれて──しかし、犬にはそれが、分からない。
ぐずぐずと、理屈も何もなく追い縋り、無様な姿を晒すだけ。
その姿を見て、彼女は──は、と鼻で笑う。
視界に収めるのも馬鹿馬鹿しい、価値のない愚かな屑。
そう思っているかは分からないが、彼女はその、煌めく宝石ような芸術性と、艶めきに満ちた色香の同居する、美しい顔をこちらに近づけて。
「私は忙しい。お前にばかり付き合っていられるか」
今度ばかりははっきりと、拒絶。
面と向かって、断ち切られる。
「それにな……」
言いつつ、彼女は空中に浮かんだキーボードを叩く。
──今度こそ、処分だろうか。
それに、の次に続くのは、お前はどうせここで死ぬ──とか、そんな事ではないだろうか。
──たん、と。
打ち付けるような、キーボードの子気味よい音が、僕の思考を断ち切る。
「……誰が、お前を捨て置いて行くと言った?」
そっと、僕の隣を、彼女が指さした。
そこに居たのは──彼女だった。
目の前に居るそれと、寸分の狂いなく、同じ。
その目つき、体つき、顔立ち、匂い。
じっと、二人の侵略者が、僕を見つめている。
──どく、どく、と、またペニスが硬度を持ち始める。
「言っただろう、私の身体は、私が『造った』ものだと。ならば、そっくりそのまま増やすのも、簡単なことだ」
まるで、当たり前のことを言うように。
いや──彼女にとっては、まさに当然のことを言っているだけだから、当然に。
あり得ない、信じられないことを、さらりと言ってのけて。
「それと、遊んでいろ。それが、お前に課す、第二の実験だ。詳しい内容については……面倒だ、そいつに聞け」
バインダーを持った彼女は、白衣を翻し、つかつかと去って行く。
ぷしゅりと、炭酸の缶の蓋を開けるような音がして、壁が開いた。
──そこは、きっと彼女以外には、開けられないのだろう。
脱出は、望めない。
いや──そんなことは、最初から、望んでいない。
目線を、隣に居るコピーの彼女に向ける。
じっと、無言で、目を合わせる。
──少し、雰囲気が違う、気がする。
睨むような目は変わらないが、どちらかと言えば、無表情に近いというか。
無機質な、例えるなら──人形のような。
「……ああ、そう、伝え忘れた。お前は、この部屋に居る間、自由に設備を使えるようになっている。食事や水、家具等の必要なものも、そこから自由に出せる。制限はないから、好きに使って良いぞ」
──では、度々、様子を見に来る。
そう言って、彼女は、壁の向こうへ消えていく。
部屋には、二人だけが、取り残された。
自分の呼吸の音が、はっきりと聞こえるほどの、静寂。
──そこには、静かすぎるほど静かに。
微動だにせず、ぴしっと背筋を伸ばして座る、極上の雌が、一人。
じっと、じっとそれを見つめていると。
彼女は、静かに腕を広げる。
いかにも無感情な、嫌悪も歓喜もない、静かすぎるほど静かな瞳。
表情筋がごっそり抜け落ちたような、無機質な真顔で。
「……どうぞ」
──彼女は、ただ、僕を迎え入れた。
その瞬間、僕は、ここが楽園であることを、深く悟った。
楽園実験は、まだまだ、続く。