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裏世界 (Pixiv Fanbox)

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──宇宙は無限に広がっているのだから、その中のどこかには、貴方に都合がいいだけの世界があっても、何ら不思議ではありませんよね。

そんな言葉を、貴方はどこかで見かけることがあるかもしれません。

例えば、インターネットで。

何かのサイトを開こうとしたら、何故かバグが発生して、真っ白い背景にその文章だけが表示されている、不思議なページに飛ばされることがあるかもしれません。

例えば、携帯で。

差出人不明の迷惑メールをふと開くと、何のリンクもなく、ただこの文章だけが書かれた、不思議なメールを受け取ることがあるかもしれません。

例えば、自宅で。

送り元の住所がどこにも書かれていない、開いたらこの文章だけが書かれている、不思議な手紙を受け取ることがあるかもしれません。

例えば、公園で。

誰も見ないような、ぼろの掲示板を眺めてみたら、地域の催しの知らせに紛れて、その文章だけが書かれた、不思議なチラシが貼ってあるかもしれません。

貴方は、それを見たとして、どう思うでしょうか。

気味が悪く、恐ろしいと思うと同時に──確かに、もしかすると、そうなのかもしれないと、ほんの少しだけでも、そう考えてしまうかもしれません。

それは、深層心理でも。

思考の表層にすら浮かばない心の底で、1+1はと書かれたものを見れば、例え意識的に答えを考えなくとも、それは2であるとどこかで思ってしまうように。

回避することができない、心の深い場所──本能的な部分で、納得してしまうでしょう。

この無限に広がる未知の宇宙の中には、どこまでも自分にとって都合のいいことしか起こらない、奇妙な世界がある。

どれだけ確率が低くても、可能性はゼロではない。

その文章を見て、そう思ってしまい──貴方は、そこで意識がぷつりと途切れてしまいます。

そうして、ふと目が覚めると。

──貴方は、今までいた場所ではない、裏世界に存在しています。

赤く、ふかふかのカーペット。

黒塗りの壁と、飾られた絵画と、シックな間接照明のライト。

巨大な一本の樹木から作られたであろう、どこかの部屋への扉。

それらが無作為に曲がりくねり、無限に果てなく続く迷宮が、貴方の目の前に存在しています。

目が覚めた貴方は、それを見て、きっと驚くことでしょう。

何故なら、ランダムに曲がった廊下や、ところどころに存在する、どこにも繋がっていないドアは、完全にあなたの元いた世界の常識に反したもの。

あり得るはずのない、シュールさすら感じる非現実的なものが、そこには広がっています。

──しかし。

それでも、貴方は恐怖を抱きません。

ほんの少しの緊張も、たった一欠片の焦りもありません。

──貴方は、ふかふかのベッドの上で、寝転がっています。

廊下の中央、邪魔になってしまうような場所に、そのベッドは存在しています。

貴方は、そのベッドの感触に、きっと病みつきになってしまうでしょう。

それは、この世のものではない、特殊な素材でできています。

綿でも羽毛でも、ましてや既存の化学繊維でもない、やたらと柔らかく、ふかふかで、もっちりと沈む、そんな布団。

例えるならば、巨大かつ豊満な、極上の女体に抱かれているかのような。

もっちりと艶やかな太ももを枕に、ふわふわで沈み込む肉感に溢れた乳肉の布団に沈み、優しく背を撫でる大きな手を上から掛けられる──そんな感覚が、近いかもしれません。

あるいは、もしかすると本当にそんな錯覚を、貴方は抱くこともあるでしょう。

ですから、貴方は何も怖くありません。

むしろ、愛してやまない恋人に抱かれているかのような、強いリラックスと安堵を覚えるでしょう。

そうした時、貴方は、そのベッドから出ることもできないかもしれません。

あまりに心地よく、そこに住み着いてしまいたいとすら思ってしまうことも、何ら不思議ではないでしょう。

自らの置かれている状況も忘れ、二度寝、三度寝、四度寝。

そうしていると、どんどん、沈んでしまいます。

ふわふわが酷くなり、ふかふかが深くなり。

むちむちが押し寄せて、まるで本物の女体が、体中をむっちり押しつけて、愛撫しているかのよう。

押しつぶすような布団の重みと、どこまでも深いむっちりとした感触に、貴方は考えることも、ましてや起き上がる事も、ひどく億劫になってしまいます。

そして、貴方はきっと、そのままどこまでも沈むことを選ぶでしょう。

深く深く、受け入れられるように、大きく開けられた怪物の口に消えるように。

そこに沈む度にふわふわは増して、どこまでも沈みます。

でも、不思議と苦しくなく、ただ柔らかいだけの布団にありがちな身体の反りもなく、貴方が最も落ち着く体勢になります。

蕩けるような、深いまどろみ。

そのうち瞼も落ちて、貴方は、眠ってしまうことでしょう。

その瞬間──とぷりと、貴方は落ちるような感触を抱くかもしれません。

何か粘性の高い液体の中に、包まれたまま落ちるような、そんな感触。

深い深いスライムの底なし沼に落ちていくような、不可思議な感覚すらも、貴方にとっては、安心感とまどろみを加速させるものでしかありません。

そうして、とうとう眠ってしまうと、貴方は夢を見るかもしれません。

全身にむっちりとした媚肉をつけた、むっちむちの熟れた孕ませ頃の女が、無数に。

地面をどこまでも埋め尽くし、落ちてくる貴方を迎え入れます。

貴方にとって最高に好みの、抱き心地のいい布団のような女が、数限りなく、貴方を悦ばせます。

眠たげな顔つきのまま、しっとり甘いミルクフェロモンを纏わせて、ぷんぷんと濃い雌の匂いを漂わせて、貴方にゆったりと覆い被さります。

あるいは、媚びに媚びた体つきを隠そうともせずさらけ出し、淫らそのものな乳や尻や太ももを見せつけ、逆に貴方の下に潜り込むかもしれません。

そうした、極上の精枯らしボディに囲まれ、挟まれ、押しつぶされ。

貴方はきっと、夢見心地のまま、とめどなく精を漏らすでしょう。

とぷとぷ、とぷとぷ、おねしょにも似た、勢いのないゆったりとした射精。

こっくりと濃い肉感が、そのまま快感としてなだれ込むような、深いまどろみにも似た快感は、貴方の脳裏に深く染みつきます。

病みつきになってしまう、その女たちのカラダ。

それから逃げだそうと、肉をむっちりかきわけてもかきわけても、世界いっぱいに、女がひしめいて、どうしても逃げられません。

ふわふわの、ふかふかの、むっちむちの、雌肉だけがある世界。

地面は、全て女の積み上がったものです。

貴方はそこに寝転び、更にその上に降り積もる雌肉に、どんどん潰されるのです。

しかし、苦しくはありません。

苦痛になる重みも、ありません。

ただただ、身体を満たすむちつきと快感が、どんどん濃くなって。

極濃の淫臭、極濃の艶めき、極濃の快楽。

人間には耐え難いそれらに対して──ほんの少し前に、貴方がそうしたように、また沈んで、溺れて、病みつきになり、どうしようもなくなるしかありません。

そうしてやがて、貴方はその快さから逃げ出すことを諦めるでしょう。

震えるほど美しい女の群れに、貴方は深く沈みます。

殺到する雌肉の隙間に潜り込まされ、貴方は何度も射精します。

喘いで、喘いで、脳みそをすり潰されるようなこってりとした快楽を、何時間も、何日も、何か月も、何年も、何千年も。

いつ目が覚めるかは分かりませんが──少なくとも、幸福感を嫌になるくらい感じさせられ、すっかり押しくらまんじゅう中毒になった頃。

──貴方は、目を覚まします。

体中に、まだ女の感触が抜けきらない、気怠い目覚めになっているでしょう。

腰がかくかく震えるような、じくじくとした快感を、布団にうずくまったまま、反芻します。

体中を押しつぶし、ふんわり受け入れる布団は、本当はあの女達なのではないだろうか。

そんな事を、精をぴゅるりと漏らしながらも思ってしまうほど、夢の中の女と、その布団の感触は酷似しています。

しかし、布団はまるで動かず、貴方は勃起を続けながらも、一安心することでしょう。

そうして、興奮が収まるまで、ひどく落ち着く布団の中で丸まっていると──貴方はふと気になって、外を覗いてみるかもしれません。

あるいは、そうではなく、そのまま貴方が大好きなその布団の中で、じっと呼吸を続けて、惰眠を貪るのかもしれませんが──もしもそうでなかった場合は。

貴方は布団をちょいと持ち上げて、周りの景色を覗きます。

そこは、既にあの不思議な廊下ではありません。

地平線の果てまで、無限に布団の海が続く、また別の不思議な空間です。

空はパステルカラーの優しい紫色で、まるでふわふわのフェルトを毛糸で編み繋いだかのよう。

そこから、度々ふわふわのクッションが降り注ぎ、世界をどこまでも満たしています。

それが、どこまでもどこまでも、果てなく続いています。

貴方は、呆然とするかもしれません。

しかし、その空間に迷い込んだ以上、貴方はこの世界に、間違いなく選ばれているのです。

お布団に沈むことを、自ら選んだ、貴方。

そんな貴方は、ふわふわとふかふかが大好き。

貴方は、布団でゆったり寝転がるのが大好き。

そう、この世界に覚えられた以上、貴方はここからは出られません。

そのことを、貴方はなんとなく察してしまうでしょう。

そのことに絶望したとしても、あるいは心から喜んだとしても。

どうしようもなく、貴方はそこで永遠の時を過ごすしかありません。

まどろみ、眠り、女の群れに射精するだけの時間を、無限に過ごします。

もしかすると貴方は、その空間から逃れようと、果てのない世界をどうにか歩き、出口を探そうとするかもしれません。

しかし、その世界は果てがなく、出口もどこにもありません。

例えそれでも歩いたとして、貴方はすぐに布団に足を取られ、ずるりと倒れ込み、そのまま沈み、気がつくと、最初に貴方が眠っていた場所に立っています。

空間は、貴方を逃がしてはくれません。

そうして貴方は、やがて眠気に負け、きっと眠ってしまうでしょう。

その度に、貴方は女の海に投げ出され、数えるのも億劫なほど、射精します。

それをただ繰り返し、やがて貴方は、夢と現の境目すらも分からなくなるでしょう。

そうなれば、女は貴方のすぐ側で、貴方をいつでも抱いています。

むっちりとした女体を──太ももと乳と腹と手と、ありとあらゆる部位を絡め、夢であろうと現実であろうと、貴方を女体に溺れさせ続けます。

貴方はそのうち、布団と女の区別もつかなくなり、いつまでもいつまでも、雌肉に潰されます。

貴方はきっと、そのことに、脳内麻薬で溺れきってしまうほどの幸せを、感じてしまうでしょう。

貴方は、この世界では、死にません。

お腹もすかず、喉も渇かず、病気にもならず、狂気にも駆られることはありません。

その世界は、少しだけ肌寒く、布団の中に入ると、とっても気持ちいい気温です。

貴方は、その世界で暮らすことに、いつしか疑問を覚えなくなります。

貴方は、永遠に幸せで、女体に甘えるだけの肉の人形になります。

そうして、貴方は、その世界に囚われるでしょう。

貴方は、永遠に幸せで気持ちいいまま、無限の時を過ごします。

──もしも、それが嫌ならば。

貴方は、あの廊下で、ベッドから起き上がることができます。

カーペットに足をつけ、ゆったりと立ち上がると──もう、ベッドは消えてしまっています。

それに対して、ああ、名残惜しいなぁ、とか。

もっと寝ておけばよかったなぁ、とか。

やっぱりまだ眠いなぁ、などと思ったならば。

貴方から見てすぐ側の曲がり角に、そのベッドは、貴方が布団をはね除けたその姿のまま置いてあることでしょう。

貴方は、ほんの少し望めば、そこでまた眠ることができます。

疲れたのなら、そこで眠れば、連れ去られることなく、上質な睡眠を得られます。

万が一、あの世界に焦がれてしまったのなら──身を委ね、沈むことだってできます。

貴方はきっと、そのことにすっかり安心して──好奇心のまま、この不思議な廊下を探索するでしょう。

当てもなく、うろうろと、迷宮のような廊下を彷徨います。

その空間は、まさに最上級の三つ星ホテルと呼ぶのが相応しいでしょう。

何もかもがラグジュアリーで、貴方を高揚に誘い、同時に安心させてくれます。

曲がりくねった廊下の絵画を見つつ、どこからか流れるヴァイオリンの音色を楽しみつつ。

そうして、ほどほどに五分ほど歩いたなら──貴方は、背中に何かの気配を感じるかもしれません。

それに対して気づかないふりをするのも、振り向いて何者かを確かめるのも、貴方の自由です。

しかし、この世界を探索するうちに、後ろを一度も振り向かないというのは、少々不自然ですから、貴方はそれを見たとしましょう。

いいえ、きっと、見るはずです。

──それは、黒づくめの女です。

大抵の場合、メイド服を着込んだ、無表情の女がそこには立っています。

手足のすらりと長い、とても背の高い、女。

あなた好みの、素晴らしく欲情を煽る、理想の雌。

三歩後ろに立つ、その女を見て、貴方は──ああ、なんだ、自分の召使いか、と。

全く道理には反していますが、初対面の異様な女に対して、そう納得を覚えるでしょう。

同時に、その女には、何を言いつけても、何をしてもいいんだった、と──そう、思い出します。

その女は、いかにも人間ではない、奇妙で超越的な雰囲気を纏っていますが──どうしてか、貴方が思い出した通り、貴方にとても従順で、絶対服従の、召使いです。

それと同時に、この世界でのガイドでもあるし、貴方の妻であり、恋人でもあります。

つまりは、貴方をとっても愛している、貴方にとって完璧に都合のいい存在なのです。

例えば、貴方が喉が渇いたと思えば、さっと美味しい飲み物を渡してくれたり。

ちょっと休憩したいとおもったなら、すぐ歩いた先にホテルのロビーのような空間を作り、そこでアフタヌーンティーの用意をしてくれたり。

退屈だと思ったり、人恋しいと思ったなら、話し相手や遊び相手になってくれたり。

あるいは、その召使いを見てむらむらとしてしまったなら、近くの扉を開き、ビル群の夜景に似たものが見える、特等のスイートルームを案内してくれて──そのまま、ベッドに誘ってくれたり。

貴方を喜ばせ、楽しませ、快適に過ごせるように手回しをしてくれる、そんな存在が、貴方の側について回ります。

その女は、度々この世界の何もかもを知っているような素振りを見せたり、この世界そのものを操っているような態度を見せることもあるでしょう。

例えば、貴方がレストランに行きたいと頼んだら、最寄りの扉を開いて、ぴったり望む場所に繋げてくれたり。

そういった不思議な能力を持っていますが、その力は貴方の快適のためだけに振るわれるため、不安に思うことはありません。

──その女は、言わばこの世界が具現化した、依り代や似姿のようなものなのです。

貴方が迷い込んだこの裏世界は、貴方のことが大好きという意思を持っています。

故に、貴方にとってとても都合が良く、どこまでも気持ちよく楽しい場所だけが広がっています。

それを効率よく案内するため、貴方と同じ人の姿を借りて、貴方のすぐ側で、こっそりハートマークをまき散らしながら、貴方をストーキングしているのです。

故に、貴方は、この捻れ狂った世界で、不安に思うことなど一つもありません。

なぜなら、世界の意思そのものが案内し、貴方を守ってくれますから、危険が貴方に及ぶことは絶対にないからです。

──貴方は、いつの間にか、それを知っているでしょう。

それを知った今、それでもこの世界を探索してもいいですし、あるいは召使いの女とのお遊びに耽ってもいいでしょう。

その女は、元は不定型な概念じみたものですから、自由に姿を変えられます。

貴方好みの、理想の女になってくれます。

貴方の好む性格の、貴方が好む容姿の、言うまでもなく貴方にベタ惚れで都合のいい女。

もし貴方がハーレム好きならば、分裂だってしてくれます。

そんな女は、この世界の創造主──とは、厳密には少し違いますが──のようなものですから、好きに世界を弄くり回せます。

ですから、貴方は何の不安もなく、その女と好きなだけ結ばれることができます。

貴方は、もしかすると、その女以外のことが全てどうでも良くなり、その女と暮らすことだけを考えてしまうかもしれません。

それは、女にとって、最も歓迎すべきことです。

すぐさま貴方を理想の家に連れ帰り、永遠の新婚生活を送らせようとすることでしょう。

または、貴方が望むシチュエーションがあるのなら、それを模倣した遊びにも、快く付き合ってくれるでしょう。

例えば、ファンタジーな世界で、サキュバスに犯される勇者ごっこだとか。

現実の会社で、部下の秘書にセクハラしまくる社長ごっこだとか。

そういった体験も与えてくれますから、貴方はますますその女にのめり込み、好きになってしまうかもしれません。

しかし、それはそれで、幸せな一つの結末です。

とてもとても、お勧め致します。

──それに、もし女とどこかの一室で交尾に耽ったとして。

それに飽いたら、またこの世界を探索すればよいのです。

貴方は、いつでもこの世界で遊びに出ることができますし、女との暮らしに戻ることも自由にできます。

女と出会ったならば、それが可能です。

しかし、そうでない場合も、時にはあります。

貴方が何かにのめりこみ、脱出不可能なまでに魅了されてしまった時。

特定の空間に囚われて、貴方はそこから永遠に出られなくなってしまいます。

例えば、先程のベッドに沈んでしまった時のように。

あらゆる場所で、貴方を永久にお迎えするための、幸せで気持ちいいトラップが待ち受けています。

それは、とてもとても幸せで、何よりもおぞましい事です。

そうなりたくない場合は、しっかりと気をつけて歩きましょう。

例えば──不用意に、どこにも繋がっていないドアを開けて、その中をくぐってしまったなら。

貴方は、もしかすると、今までとは雰囲気のがらりと変わった空間に、瞬時に飛ばされてしまうかもしれません。

扉は、この世界のどこにでも繋がっています。

しかし、どこに飛ばされたとしても、基本的には、貴方をもてなすための空間が、そこには存在します。

言わば、貴方が目覚めたホテルだって、貴方を迎え入れ、快適に過ごしてもらうための、この世界なりのおもてなしなのです。

そういった奉仕欲が、この世界そのものに深く根付いていますから、貴方はどこに行っても害される事は愚か、飢えることも渇くこともありません。

けれど──その奉仕欲や性欲、強すぎる母性が暴走した場所も、ところどころには存在します。

もしもそんな場所に飛んでしまったら──貴方は、その場所に降り立った瞬間、終わってしまうでしょう。

幸せ廃人化確定、射精奴隷として人生おしまい、永久腰とろ赤ちゃんになるしかありません。

雌の形をした怪物に囲まれ、犯され、抱かれてしまいます。

そういった世界も、あるのです。

──狭い狭い檻の中で、その怪物は、貴方への恋慕に耽っています。

にへらにへらと笑いながら、いつまでもいつまでも、貴方とのお嫁さん妄想に浸っているのです。

──その怪物には、骨などの固い部分が極めて少ないと言われています。

貴方が抱かれることに特化した、どこを触れても射精確定の、生態や存在意義そのものを貴方への愛にした、そんな怪物だからです。

貴方を抱くための、駄肉そのもの。

淫肉が形を持ち、歩いているような、そんな存在なのです。

──貴方は、運が悪ければ、その群れの中に、ぽとりと落とされてしまいます。

その瞬間、貴方はまず、射精してしまいます。

地面に着く間もなく、空気そのものがフェロモンのみで構成された、甘さだけのピンクの瘴気に、きっと腰も脳も蕩け落ちるでしょう。

それだけで、一生尾を引いて、幸せたっぷりのあっへあへな射精を、死ぬまで続ける廃人になってしまうでしょう。

しかし、貴方は雌肉の中に落ちるのです。

みっちり狭苦しく、隙間の極めて少ない、むっちむちのぎゅうぎゅう詰めな、独房の中。

世界そのものがそれだけで構成されていますから、絶対に脱出できない、空気穴すらもない、そんな地獄に落ちてしまいます。

貴方は、気が狂うほどの快楽に、身を焼かれます。

何せ、相手は貴方への恋慕のみが本能として備わった、貴方を快楽のどん底に突き落とすためだけの、そういう怪物です。

いいえ、むしろ、貴方を愛してやまない雌肉という、概念そのもの。

ある意味で不定型な、貴方を射精させるための肉に、全身を包まれるのです。

──それは、想像を絶する快楽です。

怪物に触れられた時点で、貴方は全身が、快楽を受け取るための器官になってしまいます。

怪物に抱かれたなら、貴方という存在は、ただ気持ちいい塊になります。

怪物に囲まれたなら、貴方は──怪物の対になる存在に。

つまるところ、彼女らの持つ、宇宙的な愛情を、ただ受け止めるための依り代にされてしまいます。

むっちむちな女体を、ひたすら掻き抱き、とことん射精して、愛を囁かれ、最大限の幸福と快楽を受け止めるために、最も都合のいい存在に。

貴方は、どうしようもなく、なってしまうのです。

尿道を抜ける、濃すぎる半固形精液。

肌に満ちる、おぞましく吸い付く堕落の駄肉。

呼吸器から入っては抜ける、狂気的に甘ったるく中毒性のある、ピンク色のフェロモン。

人間の脳なら、1%も受け止められないそれら全てを、100以上にして受け止めてしまう。

ハートマークが満ち満ちた、淫肉の怪物だけの空間では、地獄の底よりも淫惨たる刑罰になりうるでしょう。

──当然、この世界では、死ぬことも発狂することもできません。

ただ、頭が真っピンクになりながら、多幸感と快楽にじゃぶじゃぶと浸り、思考を全て塗りつぶされながらも、射精することだけが許されます。

貴方は、貴方という存在ごと、溶けるでしょう。

ひどく惨たらしい結末ですが──貴方は、それから逃れることもできます。

それから逃げたいと、心から思ったのなら、きっと世界は貴方を掬い出してくれるでしょう。

ですが──そうはなりません。

そこを体験したのなら、必ずや。

永久に、永遠に、休みなく、それを受け続けることを選ぶでしょう。

発狂するほどの快楽を、多幸感を、淫蕩を、いつまでも味わい続けるというのは──それほどまでに、甘美なことなのです。

ですから、逃れられず──故に、そこは秘匿されているのです。

──貴方は、その結末を知り、恐ろしく思ったかもしれません。

絶対に、それだけは嫌だと、そう考えたかもしれません。

それならば、宙ぶらりんなドアは開かないようにすれば、その結末は回避することができます。

ならば探索する時は、どこにも触らないようにすれば万事安全かと、貴方はそう思うかもしれませんが──実際は、そうではありません。

貴方には、常に様々な欲望が向けられています。

性欲、母性欲、甘やかし欲、甘いじめ欲、赤ちゃん帰りさせたい欲、とろとろにふやかしてあげたい欲、かわいいお耳をしゃぶってあげたい欲、乳首をくりくり嫐ってあんあん喘がせたい欲など。

数限りなく、そういった欲望が、この世界そのものに溢れていますから、貴方はそのあおりを受けることがあります。

例えば、ただ歩いていたら、貴方は何かの声を聞くことがあるかもしれません。

極めて耳障りの良い、甘い砂糖菓子のような蕩けた声。

本気で貴方に首ったけな、甘えるような誘惑するような、そのくせどこか澄まして格好をつけた、そんな声が聞こえます。

──それは、貴方が大好きな声です。

貴方の中に、その具体例があるかは分かりませんが、貴方が最も愛する声で、それは囁きます。

初めは、小さなノイズのような、そんな声で。

耳をすませても、音が聞こえるだけで、何を言っているかは聞こえません。

しかし、だんだんと、その声は貴方に近づきます。

──……すき♡だいすき♡ちゅうしたい♡こっちにきて♡だきしめたい♡

甘い甘い、発情の吐息混じりの声です。

どこか生ぬるさすら感じるような、淫らな熱を持った言葉。

それらを、ひたすら遠くから囁かれ、貴方は辺りを見回します。

けれど、どこにもそんなものの姿はありません。

ですから、その声の接近を止めることは、貴方には不可能です。

その声は、近づくにつれ、貴方好みの言葉を吐いてくれて、貴方好みの声のトーンを覚えてくれます。

──……ああ、逃げないで……♡怖くないよ……♡とても、とても幸せで、気持ちいいだけなんだ……♡本当さ、嘘はつかない……♡

だんだんと、だんだんと、その声は貴方に近づきます。

その度に、貴方の脳裏にはその女性のイメージが沸き、腰が砕けます。

ぞくぞくと、腰が震えて、力が抜ける。

ふらふらとしか歩けず、果ては座り込んでしまう。

何故なら──貴方も、声の主が好きになってしまうから。

相思相愛の女性の、愛情たっぷりの、レイプ宣言。

そんなものを聞かされて、まさか正気でいられるはずはありません。

──ハーレムが好き……?♡ああ、結構なことだ……♡ならきっと、きっと満足してくれるさ……♡囁きだけで崩れ落ちるような、マゾヒストには特にね……♡ん?♡文句があるなら否定してみたら……?♡ほら、マゾ……♡なさけなくてかわいい、僕だけのマゾ……♡ほら、マゾ、マゾ、まーぞ……♡あは、かっわいい……♡

その声は、貴方が可愛らしい姿を見せる度、ヒートアップしていきます。

それがどこから貴方を見ているのか、あるいはそれに目と呼べるものが存在するのかも、こちらには分かりません。

しかし、貴方が悶えたり恍惚としたりする度、声はゆっくりと近づいてくるのです。

──ね……♡乳首、好きなんだ……♡くりくり、かりかり……♡あ、これ好き……?♡かりかり……♡かりっ……♡かりかりかり……♡ふふ♡声を抑えられないの、かわいいなぁ……♡頭の中で声が反響するの、堪らないだろう……?♡気持ちいいのがつらくて、腰が抜けて、でも僕のことが好きになっちゃうんだ……♡ほら、どんどん好きになる……♡

その声は、貴方の精神だけでなく、身体にも影響を与えます。

囁かれた言葉や擬音は、貴方の肉体への感覚として与えられ、直接の快楽を与えるものとなり、貴方は思わず喘いでしまうでしょう。

そうすれば、声はだんだんと貴方に近づき、それにより与えられる感覚が濃くなって、ついには逃げられなくなってしまうのです。

その事にもしも気がつき、なんとか声から遠ざかろうとしても、無駄です。

その声は、貴方が移動するかしないかに関わらず、必ず一定の距離から聞こえます。

そして、その距離は近づくことはあっても、遠ざかることは基本的にありえないため、逃げることはほぼ不可能です。

もしも耳を塞いでも、その声は問題なく聞こえます。

むしろ、その声が聞こえ始めた時から、貴方は遮音室に居るかのように、外の音が少しずつ聞こえなくなってしまいます。

貴方の頭の中には、その魅力的で蠱惑的な、甘い囁きだけが反響します。

深くエコーがかかったその声は、反響の度に貴方に感覚を付与し、貴方を内側から愛撫するでしょう。

貴方は、十分もすれば、既に声の虜になっています。

その声には、聞く度に深い魅了を与える効果を持っています。

貴方は、その声が大好きで、何よりも焦がれるほどの、甘い恋心を抱きます。

そうなれば、声は、もう貴方のすぐ側に居るでしょう。

吐息を感じるほどの、数ミリも離れていない、間近。

思わずゾクゾクと背筋を震わす囁きに、貴方は感覚の全てを注ぎ、恍惚に浸ります。

貴方は既に、その声が次の言葉を紡ぐのを待ち望むだけの、奴隷のような存在になっているでしょう。

そうすれば、貴方にはもう、聴覚以外の感覚は残されていません。

ただ目を閉じて、その声と愛し合えば、貴方はそれで満足なのですから、それも自然なことでしょう。

ですから、貴方は気づかないでしょうが──貴方の身体は既に、どこでもない虚空を落ち続けています。

すとんと、世界の隙間に落ちて、どこでもない場所を落ちます。

音も光も物質も何もない、ただひたすらに底抜けの虚空を、落ちます。

しかし、貴方はそれに気づくことは、二度とありません。

貴方は、声に導かれるままの幻を見て、それに苛まれ続けるのです。

──もちっ……♡むちむちっ……♡ほら、巨大なおっぱいが君を食べちゃうよ♡全身を飲み込んで、包んで……♡むぎゅう♡むっち♡むっち……♡柔らかくて、あったかくて、頭がおかしくなるぐらい甘い、化け物おっぱい……♡ほら、君の全部が、おっぱいの甘さに蕩けちゃう……♡

例えば──もし、そうして囁かれたなら。

貴方の視界には、いっぱいに、生白いもち肌が広がっているでしょう。

貴方の身体には、蕩けた肉質の、しつこく吸い付く貪欲な乳肌と、ひたすら柔らかなトリモチのような、粘っこく熟れた乳脂肪がまとわりついているでしょう。

巨大なそれに、身体の全てを挟まれ、しつこく精をねだるように、ゆったりと練り上げられている、そんな幻に囚われているでしょう。

それは、現実では決してあり得ない光景です。

貴方の全身を包んで尚も余りある、巨大という言葉すらも適当ではない、極限まで淫らな乳肉に、全身をパイズリレイプされているのです。

それに加えて、頭の中では延々と終わりなく『すき♡すーきっ……♡だいすき♡あいしてる♡かわいい……♡』と、愛を囁く声が響いています。

だから、貴方は実際のところ、この状態では、柔肉に押しつぶされる以外のことを知覚することができません。

貴方は、何も知らず、幸せたっぷりに射精するでしょう。

無論、ここはどこでもない虚空ですから、出口も入り口もありません。

貴方がもしも幻から醒めたとしたら、発狂するほどに何もない場所で、ただ落ちる感覚だけを永遠に味わうという苦痛を、永久の退屈と共に受けることになるでしょう。

しかし、絶対に、そうはなりません。

貴方は、射精し続け、溺れ、声と愛し合い続けます。

ですから貴方は、幸せ。

多幸感に溺れ、声に溺れ、堕ちるだけなのです。

──そうした幸せな結末は、この世界では、無限に転がっています。

少し時を戻して、あの廊下に立っていたとして。

廊下の探索を続けていると、様々なものを発見することがあるでしょう。

例えば貴方は、エスカレーターを見つけることがあるかもしれません。

下に向かうそれに乗ると、どんどんどんどん降りていき、やがて周りの風景が、古いレンガと緑の光を放つ松明になるかもしれません。

そうして下までたどり着くと──その終着点では、数多の女が、エスカレーターのステップ部分で、両手を広げて待っているでしょう。

その奥にあるはずの部屋が見えないほど、豊満な巨躯を持った、全く同じ姿をした女が、数限りなく密集する光景に、貴方は怖じ気づいてしまうかもしれません。

見るからに、甘ったるく蒸し暑いフェロモンが漂ったあの肉体に、どこまでも密着されて、ハーレムという言葉すら生ぬるい逆輪姦で、ひたすら犯され続ける場所だ。

貴方の勘がどれだけ鈍くとも、そう確信を抱くその光景から、貴方は逆走して逃れようとする事もあるでしょう。

しかし、エスカレーターはどれだけ駆け上っても、全く前に進まないほどの速度で下っています。

貴方が逆走して上ろうとすれば、それと全く同じ速度で、そのエスカレーターは進むのです。

貴方は、立ち止まって下ることがあっても、上ることはありません。

やがていつかは、貴方の身体に、むちりとした感触が押し寄せます。

涙が出るほどの恍惚をもたらす、母性欲に濡れきった、淫肉まみれの肉体は、貴方をひたすら甘やかします。

駄肉に埋もれさせ、授乳し、ゆるやかなピストンで、膣肉により貴方のペニスをゆりかごのように揉みほぐします。

貴方は、お漏らしをするように射精します。

そのたびに、貴方は身体が若返り、筋肉や余計な記憶が抜けていってしまいます。

貴方は、強制的に年齢を奪われてしまうのです。

やがて貴方は、精通直後の小さな可愛らしい男の子になるでしょう。

最も性に疎く、性感を知らない、無防備なショタ。

貴方は、初めての射精を、どんなに幸運で、どんなに深い興奮に包まれ、どんなに優れた雌に導かれた男の子の精通よりも、ずっとずっと気持ちよく行います。

最も精通を導くことに適した、それだけのために存在する雌肉が、貴方を一生射精狂いにするような、人生破滅確定の最高の病みつき精通を与えます。

しかし、貴方はその瞬間、その精通の記憶を奪われるのです。

正確には、精通の気持ちよさだけを覚え、射精快楽への耐性だけを奪われます。

貴方は、永遠に慣れることのできない精通を、繰り返します。

貴方は、永久に無数のママに甘やかされる、精通中毒の男の子として、永遠の時を甘やかされるでしょう。

──逆に貴方がもし、上りのエスカレーターを見つけたなら。

それにふと乗ったなら、だんだんと速度を上げて、上へ上へと貴方を運ぶでしょう。

貴方は、その上昇速度に、少しばかりの恐怖を抱くかもしれません。

しかし、貴方がこの世界において、害されるはずもありません。

風は吹きすさぶこともなく、ただ優しく頬を撫でて。

後ろ向きに吹き飛ばされるような慣性も働かず、貴方はただ立ち尽くすことができます。

もしこのエスカレーターから飛び降りたとしても、何事もなかったかのように、貴方はまた同じようにエスカレーターに立っています。

しかし、エスカレーターは、凄まじい加速を続けます。

貴方は、最高速で飛び回る戦闘機のような速度で進む足下のそれに、少なくない疑問を抱くことでしょう。

一体どこに向かっているのだろうか、この上昇に果てはあるのだろうか。

そんな疑問に少しばかりの不安を抱き、そわそわしてしまうかもしれません。

しかし、少し経てば、そんな疑問は全て消え失せるでしょう。

体中が幸福感に包まれ、とても心地良い気分になるからです。

思わず頬が緩み、にやにやとにやけてしまうような、気分の良い感覚。

五分ほど経つと、その感覚はどんどん酷くなり、立ってもいられなくなり、やがては射精に至ります。

このエスカレーターは、本物の天国に繋がっています。

天国の最奥の、最も人間にとって快い場所に、直接繋がっています。

そこは、この世界とはまた違う場所ですから、どんな場所かの詳細は分かりません。

しかし、天国にたどり着くその直前、人間は悶え狂い、あまりの快楽に意識を落としてしまうそうです。

それとは別に、天国には多くの女神が存在します。

人間がたどり着ける最奥には、それはそれは美しく、人間を悦ばせる術に長けたものが居るのでしょう。

そこは、ともすれば地獄にも近い場所だそうです。

──では、その他には、どんな結末があるでしょうか。

貴方は、探索している時に、どこかのタイミングで、神に何かを祈ることがあるかもしれません。

その祈りは、必ず届きます。

この世界には、淫神と呼ばれるものと、それを祀り信仰する集団が居ます。

神に祈ったなら、遅かれ早かれ、それらの集団が拠点とする神殿にたどり着くでしょう。

それは、神殿というよりかは、ピラミッドのような中東の遺跡を、高級なホテルに改装したものに近いかもしれません。

そこにたどり着いたなら、巫女と呼ばれるものが、貴方を恭しく出迎えてくれるでしょう。

貴方は、招かれるままに、奥へと案内される以外の道は残されていません。

貴方は、奥にある祭壇の上に寝かされます。

その祭壇は、妖艶な薄紫を基調とした、天蓋付きのベッドに酷似したものです。

その部屋には、無数の巫女が、淫神の偶像に崇拝の祈りを捧げています。

堕落の使徒と呼ばれるその巫女は、口元をヴェールで隠しながら、その下まで伸びるずろりと長い肉厚の舌を常に垂らし、ねとねとと粘度の高い唾液を垂らしています。

誰も彼も、肉付きの良い肉体を隠そうともしない、マイクロビキニ姿で、貴方に恭しく礼をします。

長い乳が覗き、太ももがむっちりと潰れ、貴方は興奮してしまうかもしれません。

もしも、ここで貴方が勃起してしまったなら、その瞬間に、その原因となった巫女が貴方の側に侍り、奉仕をします。

貴方は、巫女が崇拝する淫神への、供物です。

巫女は、貴方を淫神の旦那様として、捧げているのです。

貴方はもしかすると、そこから抜け出そうとするかもしれません。

しかし、貴方はだんだん、身体から力が抜けて、立ち上がることができなくなります。

何もかもが億劫になり、巫女達に全てを任せて、自分はただ寝転んだまま快楽を貪っていたいような、そんな衝動を抱くでしょう。

それは、軽い筋弛緩の効果を持つ、巫女のアロマにより引き起こされています。

貴方のそんな欲を満たすように、巫女達は、貴方をベッドに寝かせたまま、ますますお香を焚き、貴方の衣食住から何から何まで世話をします。

貴方は、望む全てを巫女に与えられ、むっちりしたローションまみれの裸体に絶え間なく添い寝され、望むままの性奉仕を受けることができます。

貴方はぼんやりと口を開け、射精するだけの人形になります。

手を上げることも、言葉を発することもなく、口移しで食事を与えられます。

唾液が溢れそうになるのすら、巫女のベロキスで啜ってもらい、貴方は何も考えず、法悦のままに堕落します。

貴方は、全身に力を入れることなく、極限までリラックスして、快楽だけを受け止めます。

その姿を見る度、巫女は悦びに打ち震えます。

自らの身体をかき抱き、感動に涙する者すらもいます。

彼女らは、人間が堕落する姿が何よりも尊く、美しく、素晴らしいものだという価値観を持っているからです。

それが、淫神の教えなのです。

淫神は、貴方の頭上で、像となり貴方の寝姿を見つめています。

三メートルはあろうかという巨躯に、八本の腕を持ち、臍まで届く長くて幅広で厚い舌を垂らした、異様な姿。

しかし、顔は蛇目の幽艶な人外の美女そのもので、女神と呼ぶに相応しい魅力を持ち、貴方はそれに心を深く奪われることでしょう。

例え、腰から下が蛇になった、異形の姿だったとしても、貴方はその像に本気で恋をして、それの情夫となることを心から望むでしょう。

淫神は、その祈りに応えてくれます。

殻を破るように像の表皮を破り、祭壇に流れ込み、蛇腹に貴方を寝かせます。

これから貴方は、淫神とその巫女の、世界を滅ぼしてしまうほどの甘やかし癖を、一身に背負う生け贄となるのです。

貴方は、もちもちの蛇腹ベッドの上で、ひたすらに甘やかされる悠久を送ります。

──こういった終わりは、まさに言葉通り、数限りなく存在します。

この世界は、いわゆる平行宇宙にも似た、曖昧なパラレルの世界を行き来する構造になっています。

ですから、貴方は無限に、二度と同じ場所にたどり着かないその世界を、どこまででも彷徨うことができるのです。

──しかし、その末路は、いつでも決まっています。

貴方のことを、異常なまでに愛してやまない不思議な存在に、永久に愛でられます。

貴方は、その結末から逃れることはできません。

──唯一の、例外を除いて。

もしも、貴方が自由な思考と行動を望むのなら、貴方に付き従う召使いと過ごすことをお勧め致します。

貴方は、召使いと暮らすことにより、救われることができます。

この世界から貴方の世界に出て行くことは叶いませんが、それ以外の全ては保証することができます。

貴方は、これまでの情報に恐怖を覚えたなら、召使いに全てを委ねることができます。

召使いは、貴方を奪おうとするものを、悉く退けることができます。

貴方は、静かで心地よいスイートルームの中で、心地よく生活を送ることができます。

召使いは、貴方に従います。

貴方が望む場所で、貴方が望むものを与え続けます。

きっと、貴方が真名すら忘れてしまうまで、貴方の妻として、仕えましょう。

貴方に不安など、与えません。

貴方を満足させるための、無数のお部屋をご用意して、お待ちしております。

ご理解頂けましたか?

貴方は、召使いと永遠を共にすることにより、救われることができます。

貴方は、召使いと永遠を共にすることにより、救われることができます。

貴方は、召使いと永遠を共にすることにより、救われることができます。

逃げても無駄ですよ。

宇宙は無限に広がっているのだから、その中のどこかには、貴方に都合がいいだけの世界があっても、何ら不思議ではありませんよね。

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