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淫魔女王からの手紙 (Pixiv Fanbox)

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拝啓、小さな勇者様へ。 本来ならば私から貴方様のお側に出向き、直接お話するのが礼儀なのですが、姿も見せずにこうしてお手紙での一方的な連絡になってしまった事をお許し下さい。 まず、先日の勇者就任の儀式、大変お疲れ様でした。 まだ幼い貴方様にとって、大勢の大人に囲まれて退屈な式典を過ごすのは、多大なストレスだったかと思います。 本当は結界を蹴破って欠伸を堪えている貴方様を連れ去り、そのまま膝枕で癒して差し上げたかったのですが、あまり大々的に騒ぐと後が面倒ですから、泣く泣く外から貴方様の可愛らしい正装姿を眺めるに留める事に致しました。 そんな風に憎らしくもある式典でしたが、貴方様の体のサイズに合わず少しだぼついた袖の式典服姿はまさに垂涎ものでございましたので、個人的にはありがたく思う側面もあります。 なお、そのお姿は勝手ながら記録水晶に留めさせて頂いており、城に帰ってからも眺めて楽しんでおります。 そうして儀式も終わり、女神からの加護も正式に受け、聖なる武具も王から賜りましたね。 ぴかぴかの聖剣にはしゃいでいた貴方様のお姿も堪らなく愛らしく、ついつい護衛騎士を吹き飛ばしながら姿を現して頭を撫で回してあげたい衝動に駆られてしまいました。 本当に貴方様と対面して話せないのが残念でなりません。 さて、旅の準備も終わり、明日からはとうとう旅に出られるのでしょう。 勇者の血筋を引く貴方様は、勇敢かつ逞しく、不屈の心と優しき博愛の精神を持ち前に旅路を進まれる事と思います。 きっと、行く先々で貴方様はあらゆる困難を打ち破り、その先で出会った人々と絆を育むのでしょう。 若芽が生える平原を行き、小川の流れる森を抜け、乾いた砂漠を越えて、広い大河を渡り、極寒の雪原を駆け、数多の苦難辛苦を乗り越え城へと向かう姿は、目を閉じれば瞼に浮かぶようです。 そうして旅をしていれば、争いに巻き込まれる事も少なくはないでしょう。 その度に慣れない剣を振り、世のため人のため、時には自らを蔑ろにしてまでも魔物を打ち倒そうと、貴方様は思っているに違いありません。 貴方様が英雄譚に記された古の勇者の閃光の如き剣さばきに憧れ、幼き時分から森で木刀を振るっていた事も知っています。 時には朝から晩まで、夢中で剣の腕を鍛えていた事もありましたね。 恥ずかしながら、私はある日偶然目撃したその健気な姿に心打たれ、草葉の陰からこっそりと覗いておりました。 が、しかし。 それらの冒険譚は紡がれる事はありません。 貴方様の旅は、長くても日没までには終わるでしょう。 何故ならば、大変言い難いのですが、貴方様では魔物には勝つ事が不可能だからです。 貴方様が、もし不可視かつ光速の一撃を見切る事ができるなら。 亜空すら切り裂く魔法を防ぐ事ができるなら。 オリハルコンすら凌ぐ鱗を断ち切れるなら。 地中深くのマグマも、絶対零度の冷気すらものともしない表皮を攻略することができるなら。 それら全ての能力をお持ちになっているのならば、話は別です。 けれど、いくら勇者の力を継いでいるとはいえ、人の身に過ぎない貴方様では、どれだけ力をつけても我々の身に傷をつける事は不可能でしょう。 もしも貴方様が、魔力も膂力も精神力も、人の身における限界まで鍛えたとして、それでも。 貴方様は、戦いの才に関しては神童と言われていましたね。 齢十二にして鉄を断つほどの剣技を身につけ、更には稲妻が迸る神速の一振や、燃え盛る炎を巻き上げる豪放な一撃をも習得なさいました。その力は、最低級の魔物を追い返すくらいならば事足りるでしょう。 しかし、我々のような上位魔族には、例え人間界において英雄と謳われるような戦士を打ち倒すに過剰なまでの技だったとしても、柔らかな春風がそよいだほどにしか感じません。 更に、貴方様にとっては好ましくない事実にはなりますが、正式に勇者が誕生したという事実は今や魔界中を駆け巡っています。 その噂は魔王城にも届き、面倒な事になる前にすぐさま処理をしろと、魔王様から私にも直々に命令が下りました。 恐らく、この指令は私以外の最高位魔族にも下されているのでしょう。 勇者様は、先日から夜の闇が深くなっている事をご存知でしょうか。 人里でも、ランプ程度の光では一寸先も見えないと噂になっているそうです。 これは、不動要塞と謳われる龍王がその身を起こした事が原因なのです。 龍王のあまりに強大な力は、世界中の龍脈すらも乱させてしまいます。 その影響で魔素が闇を纏い、夜の暗闇を殊更に翳らせているのです。 ただ起き上がるだけで、その巨躯に秘めた魔力が世界中へと溢れ、天空を覆い尽くすような怪物に、貴方はどう対抗すると言うのでしょうか。 そんな暗い夜の中、月が爛々と紅く輝いている事はご存知だと思います。 重なった厚い雲すらも貫き、紅い光が差し込む雲居の空は、何方の目にも異様に写った事でしょう。 それは、ここから西の海を越えて更に西方の、半冥界と呼ばれるアンデッドの楽園に居を構える吸血姫が力を行使している証左に他なりません。 恐らく、幾らかの直系の配下を連れて、紅い月の下を蝙蝠に身を変えながら、羽ばたき進んでいるのでしょう。 尚、念の為に言っておきますが、彼女らに陽の光や聖水などは効きません。 聞いた話によると、それらをあまり長時間浴びると、荒い毛糸のセーターを地肌に着た時のように少し肌がちくちくとするそうですが、命に別状などは一切ありません。 そのくせ不死かつ超常の再生能力を持ち、一度人間を噛めばそれと同じだけの力を持つ尖兵を作り出す事ができるのです。 もしも彼女らが街へと向かえば、その街はどれだけの防衛力や軍事力があったとしても、十分と持てばいい方でしょう。 世界中の森の木々や動物が活性化して、次々と魔物化しているのを知っておられますか? 四本の脚で地を駆ける狼は野性的に靱やかな筋骨を持ち、かつ女性的な膨らみを蓄えた美女となり、大きな花を咲かせる白百合の草本は蜜と花粉を蓄えて男を誘う艶めかしいアルラウネとなりました。 普段は傍観主義で、人間への攻撃行為と言えば、迂闊にも里に入り込んだ者の貞操を食い荒らすくらいしかしないエルフですが、一度その牙を向けば森という森を魔界化させてしまうなど訳もないのです。 特に、エルフの女王にもかかれば、その任務を遂行するのに一日も時間を費やす事はありません。 魔族の中でも人間に対してかなり温厚と言われる彼女らですが、命令さえあれば勇者である貴方様を捕らえるためだけに、世界中の森そのものを魔物にしてしまうほどの強硬手段を取るとは私ですらも予想外でした。 たった一日で荒野にある街が幾つも消えたのはご存知でしょうか。 獅子が、大熊が、餓狼が、たった一つでも災害に近い脅威をもたらすそれらが、徒党を組んで暴れ回ったかのように、街は壊滅していたと聞きます。 城塞は打ち倒され、弩は引き裂かれ、防衛の為の柵などは跡形もなく壊されているほどの惨状は、日が落ちてから昇るまでの僅かな時間で行われました。 たまたま近くに居た私の配下の話によると、街があった場所からは、瞬きをする間に忽然と人間が消え去ったと言います。 その電撃が走るような侵略に、人間は全く対応できません。 何せ、その街には今でも干しかけの洗濯物や、湯気の上がった飲みかけのコーヒーが置いてあるのです。 それらを放り投げることも、ましてや零すこともなく、人々は巣へと連れていかれました。 彼女らが行った蹂躙劇の迅速さは、全く人智を超えたものなのです。 故に、人間達もその情報を共有できるはずもなく、今も街が急速に消えつつあることを、その隣の街の住人ですら気が付いていないのです。 そして、その地響きを鳴らすような行軍は、勇者である貴方様に出会うまで、人の居る街という街を虱潰しに蹂躙して回りながら続けられます。 まるで放たれた大砲の弾のような勢いで、獣人の群れが荒野を駆け巡り、その抜群の統率によって、勇者が居る街に当たるまで、人里という人里から人間を攫いつくし。 そして、攫った人間を婿にして、獣人の優れた繁殖力により兵士を増やす。 単純ながらも、これ以上なく有効な戦術です。 それに、貴方様というたった一人の人間が、どうして対抗できましょうか。 この他にも、数限りない種の魔族が、命令によりその力を行使しようとしています。 かく語る私も、淫魔の女王として、8ケタに届く数の配下に侵略命令を出したばかりです。 我々は戦闘能力はさほど高くないとは言え、人間の細腕から繰り出される剣戟や鉄砲に負けるほど貧弱ではありません。 その他にも、内容は後述しますが、とある淫魔の能力により人間は絶対に我々に抵抗することはできません。 人々は、むしろ向こうから我々にその身と心を捧げ、心酔しながら領地も何もかもを投げ出すでしょう。 そんな魔族達が数限りなく貴方の下へと押し寄せています。 貴方が今、この手紙を読めているのならば、それは砂漠の砂から狙った一粒を拾い上げるような奇跡に他なりません。 そして、この手紙を読み終わったならば、その数刻後には魔族の軍勢が貴方を攫いに来るでしょう。 その数は、おそらく数千、あるいは数万。 勇者様を抱える王都へ、直接殴り込みを掛けるのですから、その程度の数は下ることはないと考えるのが妥当でしょう。 もしも運が悪ければ、いくらかの種族の連合軍が合流し、更に軍勢の数は数万に膨れ上がる可能性も十分にあり得ます。 勇者様が住む王都には、戦闘訓練を十分に修め、一端の兵士として戦いに出ることができる人間は何人いらっしゃるでしょうか。 そうでなくとも、銃火器の撃ち方くらいは理解している見習い兵士や、あるいは家にある包丁を持って襲い掛かる程度はできる、健康で丈夫な成人している一般人は。 きっと、そこに住まわれている貴方様ですら、その正確な数は理解していないでしょう。 答えは、それぞれ前から34869人、42687人、263587人です。 ええ、そうです。 貴方様に関する全ての情報は、私が全て握っております。 淫魔とは、好いた殿方の情報を集める事──悪く言えばストーキングが、誰よりも得意なのです。 貴方様の昨日の食事メニューも、貴方様が湯浴みする時に体をどこから洗うのかも、貴方様がいつ何がきっかけで精通したのかも、私は全て存じております。 情報を握る事の戦術的な意味は、貴方様もきっとよくご存知でしょう。 話が逸れましたね。 そう、実際に戦えるであろう人数は、それだけなのです。 ここから、戦意喪失して逃げ出す者、夜襲だったなら準備も抵抗もできず戦線に入れない者を除けば、どれだけの数が残るでしょう。 そして、もしも戦闘員の数を最大値に見積もって、万全の状態で我々を迎え撃ったとしましょう。 その場合、我々の被害は、いかほどになるでしょうか。 答えは、0です。 ええ、きっかり、完璧に、0。 鎧や服の破れすらなく、死者や怪我人も出るはずがなく、どうしようもなく0なのです。 それほどに、人間と我々の間には、断崖絶壁のような、絶望的に巨大な戦力差があるのです。 勇者様が、自ら望んで行った事とは言え、今日まで厳しい鍛錬を積んできたことはよく知っているつもりです。 同年代や年下は愚か、熟練の兵士長や王家の近衛の騎士隊長にも勝る、天下無双のその剣には、並々ならぬ誇りと自信があるとお見受け致します。 しかし、無駄なのです。 この顔も知らない魔族からの忠告に、嘆いても、怒っても、せせら笑っても構いません。 けれど、事実として、どうしようもなく。 その刃は、我々の喉元に突き立てるには、あまりにも脆く儚いものなのです。 それは、例えるなら、豆鉄砲で人を撃ち殺すような。 あるいは、蚊の口針で人間を刺し殺そうとするような、そんな無謀な夢物語。 急所がどうだとか、弱点がどうだとか、そういう次元の話ではないのです。 ですから、人間の皆様は、きっと今から日が落ちてから昇るまでの間に、全て降伏することを余儀なくされるでしょう。 そう、この世界に住まう全人類が、一日で。 海の上の島国も、森の奥にひっそりと栄える集落も、熊の一匹も居ない極寒の地を開拓する人々の街も。 我々の手に堕ち、地上の支配種から一転し、魔族の愛玩奴隷種族としての生を歩むことになるのです。 それは、勇者である貴方様も、避けられない定めです。 いえ、一般人よりも魔力がずば抜けて豊富で、お身体も非常に頑丈で、一日中走り回ることができる体力も持ち合わせている貴方様は、きっと優先的に魔族から狙われるでしょう。 そうでなくとも、勇者という肩書を持つ人間の希望の象徴を手中に収めることは、軍略的にも重要な意味を持ちます。 ですから、貴方様がこの手紙を読んでいるこの瞬間は、きっと人間として生きられる最期の日なのでしょう。 今、貴方様は、どんなお顔をして、どんなお気持ちを抱いているのでしょうか。 青褪めて、震え、この手紙を取り落としてしまっているでしょうか。 あるいは、何も考えられずに茫然と、思考を放棄してしまっているでしょうか。 ですが、どうか希望を失わず、自棄にならず、この手紙を読み進めてはいただけないでしょうか。 私は、貴方様にとある提案を持ち掛けたいのです。 私は、貴方様を愛する者として、貴方様が最も望む選択肢を与えたいのです。 それを理由に、こうして私は、手紙をしたためているのです。 もしも、ここまで読んで頂いたなら、きっと僅かでも私の言葉を信じてくれているのでしょう。 まずは、その寛大なお心に最大限の感謝を申し上げます。 では、端的に結論を申し上げます。 明日の明朝、もしもまだ王都が陥落していなかったなら、私は貴方様の下へと真っ先に向かいます。 その時、抵抗せずに、ただ私に抵抗せず首輪を着けられて下さい。 それによって、貴方様を私の所有物である証を、他の皆に見せつけます。 ええ、馬鹿馬鹿しいことを求めているのは、私も存じております。 自ら進んで敵の奴隷になるだなんて、論ずるにも値しない愚かな行為でしょう。 ですが、貴方様にとっての最善の選択肢は、それしかないのです。 いくら知恵を絞っても、いくら自問を続けても、現時点で出せる答えはそれしかありません。 貴方様が魔族の手中に下り、愛玩奴隷として一切の権利を奪われることは、どうしても回避できないという事です。 ならば、魔族の中で最も貴方様に寄り添うことができる者に隷属するのが、最も良い選択なのではないでしょうか。 私の下においでくださるのならば、私は貴方様の尊厳を庇護し、ありとあらゆる権利を認めましょう。 牢の外に出ることも、食事をすることも、睡眠を取ることも、風呂に入ることも、貴方様が望むのであれば、全て叶えて差し上げます。 名目上は奴隷、あるいは捕虜ですが、貴方様は実質私の旦那様として、淫魔の中でも最も高い身分の人間として、丁重に扱われることでしょう。 ですが、他の物の手に貴方様の身柄が渡ったなら、その保証はできません。 貴方様は、永久に陽の光を見る事もできず、永遠の凌辱を味わうことになるでしょう。 その責め苦の内容がどうなるのかは、私には一切分かりません。 ただ、一つだけ断言できることがあります。 貴方様が、魔族の奴隷へと成り下がったが最期。 死ぬことも狂うことも許されず。 ただ、悠久の時を、無限の快楽と、安寧と、多幸に浸されて。 一切の苦痛を取り除かれた、理不尽に幸せなだけの気の遠くなるような生を、送ることになるでしょう。 さて、恐らく貴方様は、ここで大きな疑問を抱いたことでしょう。 魔族は人間を憎み、連れ去った者をいたぶり殺すのではないのかと。 ここで、人間が魔族に抱いている誤解についてお話しておきます。 そもそものお話になりますが、魔族は人間のことを敵対視していません。 我々が貴方がたを疎ましく思っていたり、憎んでいたのならば、何故今まで進攻もせずに生かしておいたのでしょうか。 強大な力を持っている我々が、人間という種を消し去るのには、庭の雑草をむしるほどの労力も使いません。 人間と言う種族がここまで繁栄したという事実は、そのまま魔族が人間を恨んでいないという事実の裏付けになるのです。 ならば、何故魔族は、時折人間を攫う事件を起こすのでしょうか。 その答えは、至極単純です。 我々が、人間を愛しく思っているからです。 人間を愛しすぎるがあまり、我慢できずに家まで連れ込んで、どろりとヘドロのように粘ついた情欲を叩きこんでしまうからです。 もっと端的に言いましょう。 粘着ストーカーの偏執レイプです。 相手に強烈な恋心を抱くがあまり、後をつけて家を特定したり、使用済みの下着を奪ったりした挙句、ついには拉致監禁して犯しまくり、結婚を承諾させてしまうという顛末です。 よくある人間さんの誤解のように、決して、住処で人間を頭からバリバリと食らい尽くしているわけではありません。 まあ、ある意味では男は食われているかも知れませんが。 そういった欲望は、全ての魔族が普遍的に持ち合わせているものであり、それは私も例外ではありません。 むしろ、淫魔という種族は、その傾向が特に強いと言われています。 そして、それはきっと、事実なのでしょう。 貴方様に対する感情が、今こうして貴方様を想いながら文を綴るだけで、胸から溢れ出して止まらなくなりそうになります。 気が付けば、私の持っている筆は貴方様を褒め称え、ありとあらゆる言葉を尽くして恋慕の情をありったけ紙面に落とそうとしてしまいます。 私を少しでも気に入ってもらおうと、娼婦のように卑しくも、私の持つ豊満な肉体や、自慢の伽の技巧について語ろうとしてしまいます。 貴方様に、そんな事をお伝えしている場合ではないのに。 ……けれど、貴方様も男の子です。 きっと、結婚して妻とする相手に、格別に美しくてとびっきりすけべである事を求めるのは、何ら不思議ではないですよね。 人間さんが密かに憧れ、表向きは嫌悪しながらもこっそりズリネタにしている淫魔の、下品なほど豊満な雌肉について、気にならないはずはないですよね。 貴方様は、おっぱいが大きい女性がが好きであると知っています。 お尻も同様に、肉厚でむっちりとしているのがお好みなのでしょう。 全て、存じ上げております。 私ならば、そこらの女には到底負けやしない、この世でもっとも心地よい堕落を詰め込んだような、ふくよかで艶やかな、性の極みをお見せすることができますよ。 なにせ淫魔の最上位種ですから、お夜伽で満足できないという事はあり得ません。 魂まで蕩け落ちる究極の快感を、ご覧に入れましょう。 それに、私と結婚すれば、魔界でも五本の指に入る権力の女王との玉の輿です。 毎日贅沢の限りを尽くし、極上の美酒や頬が落ちるようなご馳走を、目も眩むような従者の美女を侍らせながら、踊りやら音楽やらを興じつつ、浴びるように飲み食いするのはお嫌いでしょうか。 きっと、私の手元においでくだされば、これ以上なく幸せにしてみせるのですが。 ……ああ、申し訳ない、そんな余計な事を書いている場合ではありません。 そう、こういった人間をとことんまで堕落させ、甘やかし尽くしてしまいたい欲求は、全ての魔族が持っています。 それこそ、毎日その感情を持て余して、作れる予定もない旦那様との結婚生活を夢見ながら、人間さんに喜ばれるようなふかふかのベッドや金銀財宝をかき集めるのは日常茶飯事です。 お恥ずかしながら、私の居城にも、貴方様に捧げるための様々な魔道具が、二部屋分みっちり詰まるほどに積み上げられています。 貴方様に、この世の物とは思えない、想像もつかないほどの究極の幸福を与えられるような、珠玉の逸品を揃えておりますので、ご期待下さいね。 しかし、そうして人間さんを婿に迎え入れようと思っても、そうすることは滅多にできません。 何故ならば、人間界に住む人間さんを攫うことは、魔王様からきつく禁じられているからです。 許されていることは、魔界に迷い込んだ人間を襲うことだけ。 ですから、人間界から直接誘拐している多くの魔族は、あまりの人間さん愛おしさに我慢できず、ルールを破って愛を伝えに行っているのです。 魔王様は我々が束になっても敵わず、むしろ四天王ですら十把一絡げに薙ぎ払うことができるほど強大で、有無を言わせない恐ろしいまでの威厳のあるお方なのですが、それでも命を破って人間さんを抱きしめに行ってしまいます。 その意味が、お分かりでしょうか。 それを分かりやすく例えるなら、齢10になるほどの非力な少年が、護衛騎士が集まる中で王室に飛び込み、ナイフの切っ先を国王に向けるようなもの。 殺されてもおかしくないどころか、殺されて当然とすら言える状況でも、しかし、そうしてしまうのです。 顔は少々仏頂面で愛想が無く怖いですが、内面はとてもお優しい魔王様が同胞を殺すわけがありませんが、それを実行した魔族は、それこそ決死の想いだったのでしょう。 なにせ魔王様は、最も重視すべき法としてこのルールを定めているのですから。 ならばなぜ、魔王様は人間界に進出することを強く封じたのでしょうか。 それには、一つの大きな理由がありました。 それは、人間という種を繁栄させることです。 人間は、古代から人口を増やす一途を辿り、世界中にその生息圏を広めています。 今やその人口は数十億にも上り、まさに地球上の支配種と言える栄えぶりです。 しかし、今から数千年前は、そうではありませんでした。 たった数十ぽっちの極めて少人数の集落が、ぽつぽつと住みやすい平地にあるだけの、まだ数の少ない種族だったのです。 その時には、我々魔族はすでに人間という種に目をつけており、人間界にお邪魔する計画を立てていました。 しかし、それには一つ問題点がありました。 そこに居る人間さんを全て攫ってしまうと、例え魔族がたくさんの人間の子を産んでも、人間さんの数が圧倒的に不足し、魔族間で人間さんを争奪する争いが生まれかねないということです。 そこで、魔王様は一度人間を放置して、そのまま自然に任せて数を増やさせ、来るべき時に備えるという策を取りました。 人間の繁殖のシステムからして、我々の感覚で言えば瞬きするくらいの間、ちょっと放置しておけば指数関数的にその数は増えるはずです。 そして、その目論見は当たり、今日人間は魔族の数に匹敵するほども個体数を増やしたのです。 こちらに住む魔族は、いつも業を煮やしておりました。 早く人間を甘やかさせろ。 早く人間といちゃらぶ激甘新婚生活を送らせろ。 早く人間の周りを魔族ハーレムで囲みまくって一秒の隙間もなくどろっどろの快楽浸しにして脳みそ使い物にならなくさせろ。 そんな声が噴出し、人間さん甘やかしフラストレーションが溜まった頃。 つまり、今日。 その時は、訪れました。 勇者様が正式に勇者として認められたことによる、全軍出撃命令。 つまり、人間さんを全員魔界に連れ去り、快楽の限りを叩き込み、ぐっちゃぐちゃに甘やかす事への許可証です。 それはそれは、魔族たちは湧き上がりました。 生きている意味、悲願の成就。 そう言っても差し支えないほどの喜びに、彼女らは嬉々として人間界を飛び回り、見染めた旦那様を持ち帰るのです。 ですから、今日。 人間という種は、事実上の滅びを迎えます。 その後に残るのは、底なしの泥濘にいつまでも沈むような快楽と、幸福と、退廃だけです。 今後、人間は永久の時をかけて、魔族の愛撫に屈し続け、ただ精を吐くだけの存在となるでしょう。 そして、それは勇者様。 貴方様も、例外ではありません。 いえ、むしろ、貴方様がその身に受ける多幸と快楽は、そこいらの人間とは比べ物にならないほどのものになるでしょう。 貴方様は、これ以上なく不幸かつ幸運なことに、勇者という役割を与えられてしまいました。 勇者とは、つまり、我々魔族を滅ぼすための剣そのもの。 剣を向け、害をなす、危険な反乱分子なのです。 もちろん、実態はそうではありません。 貴方様の剣技がいくら優れていようとも、貴方様の魔術がいくら優れていようとも。 生まれたての幼い魔族の子供にすら敵わないという事は、誰もが知っています。 それは、例えるなら、小さいヒヨコが龍の群れにじゃれつきに来るようなもの。 貴方様を可愛らしく思う者は居れど、恐ろしがる者や、憎く思う者などどこに居ましょうか。 とは言え、貴方様が勇者であるという事は、覆しようのない事実です。 故に、我々は、貴方様を無力化、もしくは処刑しなくてはなりません。 貴方様が、勇者としての力の一切を行使できなくなったことを以て、この侵攻は幕を閉じるのです。 ですから、貴方様は、人間の中でも最も重い責め苦──もとい、極限の甘やかしを受けることになるでしょう。 絶対的な無力化とは、一切の反抗のリスクを無くすことを言います。 それがどういう意味か、お分かりでしょうか。 例えば、ここに一本の鉄砲があったとしましょう。 これから一切の殺傷能力を奪うには、どうすればいいでしょうか。 内部の火薬が発火しないよう、水につけて湿らせたり。 あるいは、砲身を叩き折ったり。 とにかく、銃弾が飛ばないようにすればいい。 ──違うのです。 それでは、まだまだ十分ではありません。 修復されたり、復元されたりするリスクがある限り、その鉄砲は無力化されたとは言えません。 ですから、パーツを一つ一つ分解し、叩き割り、腐食させ、磨り潰し、燃やし、その塵を方々に散らばるように捨てて。 これで初めて、最大限に危険性を失わせたと言えるでしょう。 それと、同じなのです。 貴方様を閉じ込めて、聖剣を奪い、魔術を使えなくさせただけでは足りません。 指の一本まで動かせず、ただ横たわり、惨めに体をびくつかせながら吐精するだけの存在に成り果てるまで。 多幸感だけに脳を支配され、一切の思考を封じ、肉欲と快楽と幸福以外のことを完全に貴方様の世界から消し去るまで。 甘やかし、甘やかし、甘やかしつくし。 そうして初めて、貴方様は存在を許されるのです。 恐ろしいでしょうか。 そんな末路は嫌だと、そうお考えでしょうか。 ええ、きっとそうだと思います。 ですから、私がこっそりお助けして差し上げます。 貴方様の処遇は、最も早く貴方様を捕縛した者が決めることができます。 私が貴方様を真っ先に捕らえられれば、貴方様をお救いする権利は、私にのみ与えられるのです。 もしも貴方様を私の城に招き入れることを許していただけるなら、その後はよしなに、今までよりもずっと何不自由ない、極楽のような生活をお約束致します。 ですが、先程も申し上げた通り、貴方様は最重要捕虜の一人です。 当然、処分を下した後には、魔王様の御前に貴方様を差し出し、無力化されていることを確認されなければなりません。 あの魔王様の眼を誤魔化すことはできませんから、その時だけは確実に、どうしても貴方様をとことん魅了し尽くして、意識が混濁するほど甘々な廃人にしてしまわなければいけないでしょう。 ですから、その時だけは、貴方様を極楽のどん底に叩き落すことをご容赦下さい。 頭が変になってしまうほど、有り体に言えば気が狂うほどの快楽を、淫魔の女王として貴方様に与えます。 先に言っておきますが、それから抗おうとしないで下さい。 あまり正気を保とうと腐心なさりますと、かえって正気のまま発狂するほどの多幸を受けてしまうことになるため、逆効果です。 どうか、身も心も蕩けるままに、その快感を素直に受け入れて下さい。 そうして貴方様を壊した後、貴方様の身柄を受け取ったら、それから治して差し上げます。 精神の修復を行い、心の中に溜まった魅了魔術の残穢を吐き出させた後──この時も、一週間ほどの時間を通して、毎日ベッドの上でむっちりと雌肉漬けにして蕩けるような搾精を、休みなく延々と行います。予めご了承下さい。なお、この時は配下の淫魔も加わってのハーレム肉海搾精となることが予想されますが、彼女らに「もっときもちいきもちいする?」「もっともっと、しあわせ~……♡♡♡ってなりたい?」などと唆されても反応を示さないでください──貴方様を来賓として、また、私の旦那様としてお迎え致します。 そうなれば、外に出ることは少々難しいかも知れませんが、貴方様は晴れて自由の身です。 城内にある全ての施設や物資、または無数の配下の侍女を使い放題に使っていただいて構いません。 しかし、もしも貴方様が、処置を施した後に、人生を捨てて退廃に染まり切った快楽地獄、多幸中毒の生活を送りたくなったのであれば、私はそれを尊重します。 私は、結局のところは魔族であり、淫魔です。 貴方様のような人間が、人間として尊厳を重視した生活を送りたいと思うことを理解しても、納得することは決してありません。 それに、貴方様に究極的に快楽だけを重視した、最も幸福で気持ちいい人生を捧げられたらと思うと、今も下腹部がきゅうっと締め付けられ、胸にじんわりと熱いものが込み上げます。 私は、貴方様の選択を、全て尊重致します。 しかし、これだけはお伝えさせて下さい。 快楽に全てを呑み込まれることは、決して怖いことではございません。 ですから、どうか、その選択を恐れないで下さい。 話を戻します。 貴方様を幼児退行させるための手段ですが、これには淫魔の特別な能力を使います。 淫魔という種族が、格別に情念深いということはお話しましたね。 その精神が擦り切れてしまいそうな恋慕を、淫魔は常に人間に対して抱えていますが、それと同じだけの感情を、そっくりそのまま目の前の人間に植え付けることができるのです。 私が貴方様に感じている愛を、貴方様も私に向けて感じます。 そしてそれは、別個体の淫魔からも重ねて掛けることができます。 つまり、抱えているだけで潰れてしまいそうな恋心を、貴方は数多の淫魔に向けて同時に感じさせられてしまうのです。 そして、それら無数の淫魔から、同時に同じだけ愛をぶつけられます。 貴方様が好きだと思っている全ての淫魔は、貴方様の事が同じだけ好きなのです。 狂愛を向けるにふさわしい、とびっきりの美貌と肉体、女としての魅力を詰め込んだ完璧な雌達は、全員がハーレム容認派。 貴方様を全員で愛情たっぷりに犯し、養い、生活の全てを甘やかしで満たしてくれる。 その幸福、快楽、興奮が理解できるでしょうか。 いえ、きっと、今は分からないでしょう。 貴方様が考えているその想像の何億倍も、この状況は天国なのです。 なにせ、その多幸は、比喩でも何でもなく、魂を蕩かしてしまうほどなのですから。 そう、貴方様の魂は、ここで一度どろどろに融解させられます。 貴方様は存じていないと思いますが、あまりにも幸福を感じてしまうと、人間の魂は炙られたチーズのように溶けてしまうのです。 その快感、多幸感たるや、まさに筆舌に尽くしがたく。 ただ、肉体そのものが崩壊して、体の芯から指の先まで溶け、自分という存在そのものが壮絶な快楽と共に消えて無くなっていくような。 そうして、魂が蕩け落ちてしまえば、貴方様の精神は全く無防備になってしまいます。 その魂を、私が吸精の技を使い、ちゅるりと取り込んでしまうのです。 そうなってしまえば、貴方様はもうおしまい。 魂を永久に私に囚われ、転生する権利すら失い、永遠に私に魅了され続け、搾精され続ける眷属未満の存在に成り下がってしまいます。 ですが、逆に言えば、私が預かった貴方様の魂は、また貴方様の器に返すことができます。 とは言え、一度は幸福に蕩け切った魂ですから、多少の後遺症は残ってしまいますが──具体的には、私への永久に治療不可能な最深魅了がかかってしまいます──考えうる限りこれが最善の形である故、何卒お許し下さい。 それと、これは余談になりますが、魂そのものを吸精される感覚は、それはそれは心地よく、気持ちいいそうです。 実際に私がその感覚を知っている訳ではありませんが、話に聞くには──極限の快楽と幸福が、おぼろげになる感覚と共に、途切れなく続いてゆくような、そんな感覚だ、と。 それを言葉にして例えるならば、地獄の底で体を引き裂かれ、炎に炙られ、刃に切り裂かれ、臼に磨り潰され、凍てついて砕け散り、一秒と耐えられないありとあらゆる苦痛を受け続ける──その、全く逆。 悶絶するような快感が、幸福が、絶え間なく襲い続け、苦痛とは真反対の感覚に満たされるそうです。 さて、貴方様をお救いする手筈は、以上となります。 少々貴方様への負担が大きいように感じますが、こればかりは我慢していただくしかありません。 それに、選択の権利があるというだけ、他の幹部に捕まるよりずっとずっと貴方様のことを憂慮していると、私が言うのも何ですが、そう思います。 他の幹部に捕まれば、これよりももっともっと容赦なく、非人道的に、ただ快楽と安楽だけを突き詰めた、聞くだけで射精してしまうほどのおぞましい甘やかし漬け生活が待っているでしょう。 もしも連合部隊に捕まれば、もう最悪です。 最上位魔族が、力を合わせてハーレム搾精を行うなど──それこと、本当に貴方様が肉体まで蕩けてしまうやもしれません。 そう、ですから、私に捕まることは、唯一残された救いなのです。 貴方様が、この世界で人間で居るための、最後の細い蜘蛛の糸なのです。 ──とは言え、正直に申し上げますと、きっと貴方様は人としての在り方を捨て、私に更なる快楽を求めて縋りつき、精液袋として一生を捧げるであろうと、そう予想します。 何故なら、魂が蕩けるほどの幸福を、拒めるはずがない。 手を伸ばせば、あの病みつきになるような麻薬じみた多幸快楽が手に入るのに、それを自ら捨てるなど、人の理性では到底不可能だからです。 ですが、それでも。 貴方様にとっての「希望」は、これしかないのです。 それがどんなに細い糸でも、掴むしかないのです。 剣を取り、最後の抵抗をするも自由です。 全てを諦め、道行く魔族に体を差し出すも自由です。 一縷の望みをかけ、そこから逃げ出すも自由です。 ですが、結末は全て同じです。 貴方様は、魔族のモノになり、永久の時を慰み者として生きるしかないのです。 ならば、その中でも楽な選択をするのは、決して愚かな判断とは言えないでしょう。 貴方様の聡明な判断を、期待しております。 そして、貴方様がご無事であることを、心よりお祈り申し上げます。 淫魔族女王より 敬具

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