「思い出のワンピース」(8) (Pixiv Fanbox)
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「思い出のワンピース」
2.幼馴染は見た(3)
「う、うん……」
思った以上にあっさりと、しかも肯定的に受け入れられて、博希は逆に背中がむずむずする。椅子から降りて立ち上がると、
「うんうん、いいじゃんいいじゃん。ね、写真とっていい?」
愛那はそう言って、制服スカートのポケットからデジタルカメラを取り出した。写真好きの彼女が、いつも持ち歩いているものだ。
「しゃ、写真!? さすがにそれは、ちょっと――」
「いいでしょ? せっかくこんなに可愛いんだもの、記録に残しておかなかったらもったいないわ」
(今の自分の姿を、写真に残す――)
(男子高校生なのに、女の子みたいな可愛いワンピースや、ジャンパースカートを着た姿を写真に撮ってもらったら――そしてそれを、後で見返したら――)
(いったいどれだけ、ドキドキすることだろう――)
「う……うん」
幼馴染の勢いと、自分の内なる感情にすら負けて、博希は小さくうなずいた。
「やった! それじゃ、まずはベッドに座って、笑ってごらん。膝はくっつけて、つま先は内側に向けるのよ」
嬉しそうに言って、さっそくカメラを向ける愛那。
博希はベッドに腰掛けて、引きつったような笑顔を向ける。
ブラウスにジャンパースカートという、男子高校生にあるまじき女児服を着て、少女のようなポーズを取って――閉じた膝の上に両手を乗せ、足は軽く開いてつま先を内側に向けるという、いかにも少女らしいポーズで撮影される。
カメラに映る自分の姿は、いったいどんなことになっているのか――想像するだけで、お尻の穴が疼くほどの緊張に襲われる。
「もっと自然に――うーん、さっきまではいい笑顔だったのに、急に恥ずかしくなっちゃったのかな? まぁ、これもこれで今しか撮れない表情だからいっか。はい、チーズ」
愛那は物足りなさそうな表情をしながらも、かまわず撮影を始めた。距離を変え、角度を変え、様々なアングルから、女装した幼馴染の姿をカメラに収めてゆく。
「くすっ、次は胸の間で指を組んでみよっか。そうそう、そんな感じで、首をかしげて――」
リクエストされるがままに、歩実はポーズをとってゆく。
下ろした手を重ねて、にっこりと笑ったり。
スカートの裾をつまんで、片足を下げる優雅なお辞儀――いわゆるカーテシーをしたり。
手をお尻の後ろで組み、横を向いてすまし顔を作ったり。
次から次へと、一挙手一投足を撮影される。フラッシュが浴びせられるたびに全身を包む昂奮に、いつしかショーツの中でおとなしくしていた雄の器官まで、ドキドキと疼き始めていた。
そして、とどめに――
「ふっふっふ、それじゃあヒロ、ちょっとエッチな写真も撮ってみよっか。自分でスカートをめくって、パンツを見せてちょうだい」
愛那は下品な笑みを浮かべながら言う。彼女にとってはお約束のジョークに過ぎなかったのだが、
「え……? う、うん……」
人に頼まれたら、いやとは言えない性格――撮影会という独特の雰囲気も相まって、博希はついつい従ってしまう。
内股気味に立って、左手でギンガムチェックのジャンパースカートをめくる。その下から現れたショーツと、そこに浮かび上がったふくらみに、
「えっ、えぇっ……!? ひ、ヒロ、もしかして……昂奮、してるの?」
「え……あっ!? そ、その、これは……!」
慌てて隠す博希だったが、時すでに遅し。すでにはっきりと、愛那に見られている。
(女装して昂奮してたなんて知られたら、ぜったいに軽蔑されちゃう――)
身構える博希に対し、しかし愛那はくすくすと笑って、
「隠さないで、見せてったら。べつに怒ったり、馬鹿にしたりしてないから」
「ほ、ほんとに? でも……」
「ほんとだって。むしろヒロの意外な一面が見られて、嬉しいくらい」
「う……嬉しい?」
「うん。だってヒロ、可愛いワンピースにはしゃいで、しかもエッチな気分にまでなっちゃってるんでしょ?」
「それは……うん……」
「だったら、あたしには見せてほしいな。ヒロの恥ずかしいところも、ぜんぶ」
やや上気した顔で言う幼馴染に――
「わ、わかった……」
博希は小さくうなずいて、再びスカートをめくりあげた。
(続く)