「思い出のワンピース」(5) (Pixiv Fanbox)
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「思い出のワンピース」
1.10年目のワンピース(4)
知識としてだけは持っている、男性としての生理現象。今までまったく起きなかったそれが、よりにもよって、女児服を着ている時に起きるなんて――
(とにかく、母さんに見つかったらまずい――!)
博希は深呼吸して、血が上りそうになっている局部を落ち着けようとしながら、ゆっくりと立ち上がる。
すでに化粧品の整理を終えて、ダイニングテーブルで洋裁雑誌を読んでいた母親に、なるべく腰の前を見られないような角度で振り返りつつ、
「ぼく、ちょっと2階に行ってくるね。着替えるわけじゃなくて、参考書を持ってきたら、すぐに戻ってくるから」
「ふふっ、わかったわ。いってらっしゃい」
リビングを出た博希は、急いで2階の自室へ。窓とカーテンを閉め切り、おそるおそるワンピースの裾ををめくってみると――
「ひっ……!」
豹変したおのれのイチモツに、博希は情けない悲鳴を上げた。
日頃は慎ましやかな彼の息子は、今や荒ぶる本性をあらわにしていた。その長尺は女児用ショーツの中に納まりきらず、前方に激しくテントを張って、ウエストゴムが下腹部から浮いてしまっている。
「ど、どうして、勃起なんか……!」
もちろん高校生だから、博希も知識としては理解している。男性器は、女性の裸を見た時など性的興奮を覚えた時に勃起するものだと。しかし、女性の裸どころか写真の一枚もない状態で、いったい何に昂奮するというのか。
「ま、まさか――ぼく、女児服を着て、昂奮してるの……?」
彼の言葉を肯定するように、ショーツの中の怪物がビクンと震えた。
「う、あ……!」
勃起の苦しさになりふり構っていられず、博希はショーツを裏返すようにしてずりおろした。
とたんに、ガールズショーツの中に閉じ込められていたモノが、歓喜の雄たけびを上げるがごとく上下に揺れ、早くも先走りのしずくを鈴口に浮かび上がらせた。
水色の女児服ワンピースの下から屹立する、禍々しい雄。
変態的で冒瀆的なその光景に、博希は目を奪われ、ますますいきり勃ってしまう。
「と、とにかく、これをどうにかしないと……!」
立ったまま左手でワンピースの裾を押さえ、右手で荒々しく竿をつかむと、誰に教えられたわけでもないのに竿をこすり始めた。
何も考えられない。まるで全身の血が集まった結果、ペニスそのものが第二の脳になったかのように、本能と欲望のままに彼の体を突き動かしていた。
「はァッ、はァッ――」
室内に、獣のような喘ぎ声と、濡れた竿をしごく淫らな音が満ちる。
(ダメなのに――母さんに作ってもらった女児服を着て、昂奮して、チンコいじってるなんて、ぜったいにダメなのに――)
(なのに、手が止まらない……止められないっ……!)
背徳感は昂揚感を生み、罪悪感は快感をもたらす。
「あ、も、もう、だめ――」
生まれて初めての恐怖にわななきながら、博希は手を動かし続け――ついに、弾けた。
ビュクンッ、と荒々しい擬音が似合う勢いの良さで、欲望の濃さを反映するかのようにねばつく白濁液が室内を舞い、放物線を描いて床を濡らしていった。
「お、おおっ――」
2度、3度、4度――立て続けの絶頂に、博希の口からよがり声が漏れる。性的な耐性のない少年の脳を快楽物質で蹂躙し、理性も、判断力も、思考も、何もかもを奪っていった。
その中で――なぜか全身を包む女児服ワンピースの着心地だけは、はっきりと感じられたのだった。
*
「お帰り、遅かったわね」
出迎えた母親は怪しむ様子もなく、コーヒーを淹れてくれていた。
博希は心を落ち着ける香りにホッとしつつ、
「う、うん。ちょっと部屋の掃除と換気もしてたから」
そう答えて、ダイニングテーブルの上に参考書を置いた。
「そうだ、ヒロちゃん。せっかくだから、これからも可愛いお洋服を作ったら、着てくれる?」
思いがけない言葉に、しかし博希は断ることができず、
「……うん」
ドキドキしながら肯くと、母親はにっこり笑った。
「ふふっ、ありがとう」
(また、こんな女児服を着せられちゃうのか……でも、悪くないかも)
逃げようのない状況で女装を迫られることに、内心で安堵を感じ――またそんな自分に、驚く博希であった。
(続く)