連載小説「女装強要妄想ノート」(11) (Pixiv Fanbox)
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3月第3週「勝負で負けた罰ゲームで女装させられる」
(1)
「ね、久しぶりに、対戦ゲームしよ。兄ちゃんが負けたら罰ゲームね」
妹に言われた瞬間から、実のところ真弓は今後の展開をほぼ完全に理解していた。
しかし兄としては受けて立たざるを得ず――こう答えるよりほかにない。
「いいぜ。ま、オレが負けるわけなんてないんだけどな」
そうして、ゲーム機のある亜弓の部屋で始まった勝負は、ほぼ五分五分のまま最終ラウンドまでもつれ込んだ。
実際のところ、実力では真弓の方が上回っている。何しろ年季が違うのだ。しかし「妹と対戦ゲーム」「負けたほうが罰ゲーム」というシチュエーションが、彼の心を大きく惑わせていた。
「妹とゲームの勝負で負けて、罰ゲームとして女装させられる――」
真弓がこそこそと書き溜め、現在はリビングに置かれている「女装妄想ノート」の中でも最初の方に書かれている一文。とうぜん妹の亜弓も、それを読んだうえで兄をゲームに誘い、「罰ゲーム」を口にしたに違いない。
(負けたら、妹に命令されて女装させられる――)
(いったいどんな服を着せられて、どんなことを命令されるんだろう――)
想像は毒花の茨のごとく彼の心と頭を縛り、ゲームプレイへの集中を阻害する。不安と期待はないまぜになり、勝負に負けたくない気持ちと、負けて女装させられたい気持ちが入り乱れて、いっそうプレイがおろそかになる。
それでも、大技で勝敗を決しようとした、その瞬間。
「今日はブラを用意してあるからね」
「ブ、ブラジャー!?」
妹の一言に動揺して技を失敗し――逆にカウンターで、KOされてしまう。
「やったー! あたしの勝ちぃ!」
「ひ、卑怯だぞ、亜弓……!」
「精神攻撃は基本じゃん。っていうか兄ちゃん、ブラジャーで動揺しすぎ」
ニマニマと癇に障る表情を浮かべる妹を、真弓はしばらく睨みつけていたが、
「はぁーっ……わかったよ、オレの負け」
「素直でよろしい。それじゃあ罰ゲームとして――」
「ごくっ……」
何を着せられるのかと、ドキドキしながら待ち構える真弓。
そんな兄に、妹はちょんと指を突き付けると、視点を誘導するように動かして――壁にかかっていた服を指さした。
紺地に赤いラインが入っているのが特徴的な、前開きのセーラージャケットに、紺のプリーツスカートというセットアップは、
「あ、あれ……お前の学校の、制服じゃないか!」
「うん。現役女子小学生の制服を着せてもらえて嬉しい?」
「う、嬉しいわけが……」
「嘘ばっかり。兄ちゃんがあたしの制服をじっと見てるときあったの、わかってるんだからね。あの時はよくわからなかったけど、ノートにもあたしの制服を着せられる妄想がけっこうたくさん書いてあったし、そういうことだったんでしょ?」
「うっ……で、でも、まだ学校があるんじゃ……」
「どうせあと一週間くらいだし、構わないわよ。この前みたいに汚さなければ、ね」
「うぐっ……」
二度にわたって痛いところを突かれて、真弓は言葉に詰まる。前回のメイド服で射精させられたとき、穿いていたパンツはもちろん、あとで確認したらスカートにまで精液が付着してしまっていたのだ。
「それと予告通り――これも、つけてもらうからね」
立ち上がった亜弓はクローゼットの引き出しから、白の上下セットを取り出す。ただし今回は、今までのようなキャミソールとインゴムショーツではなく、高学年向けのジュニアブラとノーマルショーツの組み合わせだ。
「はい、どうぞ。ちゃんとつけてちょうだいね」
「っ……!」
手渡されたブラジャーの触り心地に、真弓は背筋をくすぐられているかのようなむずがゆさを覚えた。
いかにも少女下着らしい、表面のコットンの柔らかさと、意外なほどしっかりとした厚手のつくり――なにより2つのカップが並んだその構造は、本来であれば男子である真弓が絶対身に着けることがないはずのものである。
(今からオレ、ブラジャーを、つけるんだ……!)
女装の中でもスカートと並んで「一線を越える」感の強いブラジャーに、真弓はゴクリと大きく喉を鳴らした。
(続く)