雨宿り - ぽろり差分 (Pixiv Fanbox)
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錆びついた鉄製の波板にコンコンコンと粒の当たる音が響く。
かなりひどい雨だ、湿度を大量に含んだ空気がこの寂れたバス停の中に充満している。遠方への営業を終え帰路につこうとこのバス停へ向かう途中、突然の雨に打たれてしまった。天気予報をしっかり見ておくんだった、これからはカバンには常に折り畳み傘を入れておこうか、そんなことを考えながらなかなか来ないバスを待っていた。
バシャバシャと勢いよく水たまりを踏み込む音が聞こえてくる。
音の方向に目をやると、赤いカバンを背負った女の子がバス停の中へと駆け込んできた。はぁはぁと軽く肩で息をしながらその子はこちらをじっと見つめた。
「こんにちは!」
にっこりと笑顔で挨拶をする女の子
「あ…こんにち…は」
その女の子の身につけいるものや背丈、顔つきから想像される年齢と、息を整えようと深く呼吸する度に大きく膨らむ胸の差が、自分の思考を混乱させる。
「うわぁ~…びっちょびちょだぁ……」
女の子はそう呟きながらぎゅっと服を絞る。
服に染み込んだ雨水がびちゃびちゃと音を立てて地面に落ちる。
そんな様子から自分は目を離せないでいる。この女の子は気づいていないのだろうか、水で濡れて薄っすら透けてしまっている“それ”を。
徐々に自分の中に熱いものが込み上がってくる。
ぼくは鞄の中からハンカチを取り出し女の子に話しかける。
「そのままじゃ風邪引いちゃうよ、僕が拭いてあげる」
考える間もなく、言葉が出てしまっていた。
しまった…早まった……遅れていた思考がようやく状況に追いつき一気に冷静になる…自分は一体何を……。
「いいの!?じゃあ、お願いっ!!」
女の子はそう言いながらバッと両手を広げて自分に向かって笑いかける。
錆びついた鉄製の波板に雨粒の当たる音が響く、バスが来るまではまだ1時間以上ある。ハンカチを握りしめた手に血液が集まっていくのを感じた…。