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妹の服で親戚の集まりに… (Pixiv Fanbox)

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「あけましておめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いいたします」  親戚一同が大広間に会し、挨拶を交わす新年の集まり。  その末席で、高校生の少年は正座した膝の上で手を握りしめ、頬を赤く染めてうつむく。  その理由は、少年の服装を見れば一目瞭然だった。  彼が着ているのは、白いブラウスに紺のジャンパースートとボレロ、紅いリボンという、少女用のアンサンブルスーツ。それも一回りサイズが小さく、短い袖には不自然なしわが寄り、スカートの丈も足りずに、太腿が半ばほど剥き出しになっている。頭にはリボンのついたカチューシャをつけているが、髪型は少年そのもので、こちらもちぐはぐだ。  なぜならば、そのスーツは彼の服ではない。この新年会に着てくるはずだった高校の男子制服を、うっかり数日前にクリーニングに出してしまったせいで、やむなく妹に借りたものだった。  田舎のそれなりに古い一族のため、きちんと顔を見せなければならないという建前と、親戚が集まるこの日にお年玉をもらえなかったら大損だという本音。二つの理由から、恥を忍んで妹のスーツを着て出席した少年だったが、 (うう、思ってた以上に恥ずかしい……こんなことなら、やっぱり理由をつけてサボればよかった……!)  ただでさえ、生まれて初めてのスカート。それも女児用でワンサイズ小さいため、ブラウスもジャンパースカートも体にぴったりとして、余計に落ち着かない。  いまからこの格好で、広間にいるたくさんの親戚たちに挨拶しなければならないことを考えると、恥ずかしさに身がすくむ。  さらに、 「いいじゃない、似合ってるわよ、お兄ちゃん♪」  隣に座る小学生の妹が、意地悪く笑って言う。  妹の服装は、スクールブラウスに紺のスカート、グレイのベストとチェックリボン。まるで女子高生のようで、彼女のほうがずっと大人びて見えることに、いっそう顔を赤くしていると―― 「あら、古田さんのところのお子さん?」  ふいに話しかけてきた30代の女性――佐伯の叔母に、少年ははっと顔をあげる。 「あっ、あの、あけましておめでとうございます!」 「ふふっ、あけましておめでとうございます、佐伯の叔母様」  声を裏返す兄と、落ち着き払った妹。  対照的な二人の挨拶に、佐伯の叔母はくすくす笑う――が、 「あけましておめでとう、二人とも。あら? でも古田さんのところのお子さんって、確かお兄ちゃんじゃ……?」 「え、えっと、その……」  いきなり言い当てられて、ごまかすべきか、正直に言うべきか――少年は周章狼狽の極みに達する。  そんな兄の様子を見て、妹はひとしきりくすくす笑った後、 「ええ、その通りですよ、叔母さま。ね、お兄ちゃん♪」 「ちょ、ちょっと、バラさないで――」 「あら、あら」  叔母は口元に手を当て、おかしそうに笑う。しかしその目は、女児用スーツを着た少年の体を嘗め回すように見つめていて、 「う……」  彼はますます赤くなってうつむく。 「ふふ、大丈夫よ、とても似合っていて、可愛いわ。さ、二人にお年玉、あげましょうね」 「わぁ、ありがとうございます、叔母さま!」 「あ、ありがとうございます……」  お礼を言ってポチ袋を受けとりながらも、少年は羞恥に胸を焦がす。しかしほんの少し、女の子のように「可愛い」と言われる喜びが芽生え、彼はまたいっそう恥じらいをおぼえるのであった……。

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