連載小説「女装強要妄想ノート」(12) (Pixiv Fanbox)
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3月第3週「勝負で負けた罰ゲームで女装させられる」
(2)
ブラジャーとショーツを手にして、声を震わせながら答える。
「わ、わかった、着替えてくるから……」
「ん? 何を言ってるのかな、真弓ちゃん」
「兄ちゃん」から「真弓ちゃん」へ。
関係性や立場の上下を明確に切り替えるような呼び方に、逆らえないものを感じて身を硬くする真弓。
そんな「妹」に、亜弓はにっこり笑って言い渡した。
「ここで着替えるのよ、真弓ちゃん。お姉ちゃんが着替えを手伝ってあげるから、ね」
「そ、そんな! ここで……!?」
さしもの真弓も、愕然と目を見開いて訊き返すが、
「うん。妹が初めてのブラジャーをつけるんだもの、お姉ちゃんとしては、ちゃーんと手伝ってあげないとね」
「亜弓は単にオレが恥ずかしがるところが見たいだけだろ……」
「あははっ、ま、その通りなんだけどね。いいでしょ、姉妹なんだから」
「し、姉妹って、オレと亜弓が……!?」
「うん。あたしがお姉ちゃんで、真弓ちゃんが妹。それにしても――そろそろ口調の方も、何とかしたほうがよさそうね」
亜弓はニヤニヤ笑いながら、
「ま、それは後で考えるとして、まずは着替えね。ほら、恥ずかしがらないで脱いでちょうだい」
「無茶言うなよ! 裸を見られるなんて恥ずかしいに決まって――」
「ええい、四の五のいわずに脱ぎなさい!」
「姉」特有の横暴さをいきなり丸出しにして、亜弓は「妹」のシャツに手をかけて強引に脱がしてしまう。
「ひゃあっ!? や、やめろよ、亜弓っ……!」
「あははっ、叫び声もかわいいんだから!」
高校1年の兄と、小学6年の妹――本来であれば勝負にもならない体格と腕力の差があるはずだったが、この兄妹の場合は逆に妹のほうが腕力で勝る。あっさりとシャツを脱がせてしまうと、そのままズボンにまで手をかけてトランクスごとずり下し、ついに下半身を丸出しにしてしまった。
真弓は露出した少年の証を慌てて両手で隠す。その拍子に、手に持っていた下着の上下が足元に散らばったが、そちらには構っていられない。
「やっ、やだっ、見るなぁっ!」
「くすくすっ、これじゃあ、まるっきりあべこべね。ほら、観念して脱ぎなさい!」
そのままベッドに押し倒され、ついにズボンも引き抜かれ――ついでに靴下も脱がされて、真弓は一糸まとわぬ裸に剥かれる。
「ううっ、ひどいよ、亜弓……」
花柄のベッドにあおむけに倒され、股間を両手で押さえたまま涙目で訴える真弓。
その姿を、「姉」は嗜虐に頬を染めながら見下ろして、
「真弓ちゃんったら、そんな格好でお姉ちゃんを見つめるだなんて――くすくすっ、まるでベッドに誘ってるみたいにも見えるわよ?」
「そ、そんなことっ……!」
「なら、改めてお着換えしてちょうだいね。それともお姉ちゃんに穿かせてほしい?」
「うう……じ、自分で、着替えます……」
こうなっては手も足も出ない。せめて自分の手で着替えるのが、最後に残された尊厳だ。真弓はベッドの上で上体を起こすと、片手で股間を押さえながら、もう片方の手で下着を拾い上げると、前後ろを確認して足を通した。
最後に立ち上がって
「うっ……」
「くすくすっ、どう? 普通のショーツの穿き心地は?」
「ぴ、ぴったりして、恥ずかしい……!」
今まで穿いた深ばきのインゴムショーツと肌触りそのものは似ているが、ラインはかなりすっきりしている。つまり――陰部のシルエットが、そのまま出てしまう。男子用のブリーフに近いが、しかしフロントには女の子用であることを示すピンクのリボンがついていて、二重の意味で恥ずかしい。
「大丈夫よ、真弓ちゃん。真弓ちゃんのはちっちゃいから、ショーツの上からでも目立たないわ」
「うっ……! ち、ちっちゃいっていうな……!」
訂正。三重の意味で、恥ずかしい。
ショーツを穿いた後も股間を手で押さえ、そのまま動けずにいる真弓を横目に、亜弓は床に落ちたもう一着の下着――シンプルなジュニアブラを拾い上げて、
「さ、いよいよ本命よ、真弓ちゃん。お姉ちゃんが手伝ってあげるから――初めてのブラジャー、つけましょうね」
「う、うん……」
もはや逃げることもできず、真弓は本当に姉の手でブラジャーを付けてもらう妹になってしまったかのように、小さくうなずいた。
(続く)