短編「妹の花嫁になった日」(10) (Pixiv Fanbox)
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(10)
バラの匂いがするボディーソープで全身を清めたあと、三田村真佑は浴室から出た。
男子高校生とは思えない優雅な入浴だったが、表情は硬い。バスタオルで体を拭き、化粧水と乳液でフェイスケアをした後、ドライヤーで髪を乾かしながら、真佑は小さく身震いした。
その耳に、入浴前に妹が告げた言葉が残響する。
「今夜、マユちゃんの処女をもらうから。いつも以上に念入りに、綺麗にしてらっしゃい」
言葉にすると冗談のようにしか聞こえないが、真里は本気だった。
――真佑が初めてアナルを弄られた翌日のこと。カナミにもらったアナルグッズを手に、妹はこう宣告した。
「これから毎日、アナルストッパーを付けて生活しなさい。サイズは少しずつ大きくするからそのつもりでね。夜になったら抜いてあげるから、トイレでお尻を綺麗に洗ってから、お風呂に入ること。そしたらまたつけてあげるから」
「は、はい……」
とんでもない命令だったが、真佑に逆らえるはずもない。
毎日少しずつ大きくなるアナルストッパーを装着して、学校に通う。アナルに異物を感じながらの生活は、最初の数日は椅子に座るだけでもつらく、まして体育の時間ともなれば動くたびに痛みに襲われ、友達に不審がられる始末だ。
帰宅後は、妹のおさがりの女児服に着替え。しかも誰も見られずに自室にひきこもることは許されず、公園に遊びに行くよう言われたり、近所のスーパーにお使いに行かされたり、遊びに来た妹の友達に見られてペニスを弄られたりと、気の休まる瞬間はない。
夜にはいったんプラグを抜いてもらえるのだが、待っているのは腸内洗浄。エネマシリンジと呼ばれる器具で、腸内に浣腸液を入れてから排泄することになる。その後はお風呂で身を清めた後で、再びアナルストッパーを挿入される。
そんな生活の合間に、「妹」としてのレッスンも受けさせられていた。女の子らしい口調やしぐさ、お化粧の練習。娯楽さえも、少女漫画や少女向けのアニメ・ゲームに限られていた。
最初のころはぎこちなかった妹口調も、今ではすっかり板についてしまっている。
(むしろ、学校で出ないようにするのが大変なくらいになっちゃった……)
情けない気持ちで髪を乾かし終えた真佑は、脱衣所に置かれていた下着と服に目を見開いた。
スリーインワンと呼ばれる、ブラジャーとビュスチェ、ガーターベルトが一体になったような下着。口の部分がレースになった、グローブとストッキング。いずれも色は白だ。
さらにこれまた純白のガールズドレス。レースになった胸元にはたくさんの花飾りがあしらわれ、袖は肩のところでフリルになっている。ただでさえ短いミニ丈の裾は、大きく波打って広がるデザインだ。
さらにティアラ――もちろん宝石と貴金属を用いた高価なものではなく、ガラス細工が入った少女向けの安物だったが――と、真っ白なヴェール。
それはまるで、ウエディングドレスのような――
(今から、オレ――真里に、抱かれるんだ……)
改めて自覚した瞬間、背筋がわなないた。
しかし逃げることもできず、真佑は用意された「花嫁衣裳」を身に着けてゆく。
ストッキングを履いて、グローブを付けて。
スリーインワンを着て、ストッキングを留めて。
ガールズドレスを纏い、頭にティアラと、ヴェールを付ければ――
「き、着ちゃった……真っ白な下着と、ドレスを……」
脱衣所の鏡を見ながら、真佑は改めてつぶやく。
純白のドレスを纏い、ヴェールをかぶった自分の姿。まだすっぴんだが、一週間ヘアケアとスキンケアを頑張ったこともあって、似合ってしまっている。
ドレス姿で脱衣所を出た真佑は、ちょくせつ真里の部屋にはいかず、隣の自室で化粧を済ませる。いつもより念入りに、濃いめのメイクを施して――
「いらっしゃい、マユちゃん」
(続く)